中期経営課題

“プロジェクト AP-G 2025”
「革新と強靱化の経営」-価値創造による新たな飛躍-

 2023年度から2025年度までの3年間を対象期間とする中期経営課題“プロジェクト AP-G 2025”(以下、AP-G 2025)は、「東レ理念」を起点として、「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」に示す「「発展」と「持続可能性」の両立をめぐる地球規模の課題の解決への貢献」を通じた「持続的かつ健全な成長」の実現を目指し、その成長戦略を可能にするための価値創造、それを支える人材基盤の強化に注力して、投下資本効率、財務体質、人材の面から成長投資を可能にする経営基盤強化を進めます。
 AP-G 2025では、「持続的な成長の実現」「価値創出力強化」「競争力強化」「『人を基本とする経営』の深化」「リスクマネジメントとグループガバナンスの強化」を基本戦略として掲げ、成長領域であるサステナビリティイノベーション(SI)事業とデジタルイノベーション(DI)事業の拡大、事業の高度化・高付加価値化および品質力・コスト競争力強化に取り組みます。同時に、財務健全性を確保するために、利益、キャッシュフロー、資産効率性のバランスに配慮した事業運営を行います。また、新たな成長軌道を描くために、高成長・高収益事業の拡大、低成長・低収益事業の構造改革を推進します。

長期経営ビジョン TORAY VISION 2030

基本戦略1持続的な成長の実現

AP-G 2025では、「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」を基軸としつつ、当社の強みを発揮して収益拡大が見込める領域として、これまで成長分野として位置付けてきたグリーンイノベーション(GR)事業とライフイノベーション(LI)事業を合わせて再定義したサステナビリティ
イノベーション(SI)事業と、4つの世界の実現を支えるデジタルイノベーション(DI)事業とを、改めて東レグループの成長領域と位置づけました。
これらの成長領域には、設備投資と研究開発費を合わせて4,500億円のリソースを投入し、組織横断の体制構築を行い、お客様に対する総合的なソリューションの提案、社外連携等を加速させて、連結売上収益のほぼ6割を占めるまでに拡大させる計画です。

AP-G 2025の成長領域
成長領域売上収益目標

サステナビリティイノベーション(SI)事業の拡大

SI事業の主な事業領域

1気候変動対策を加速させる製品
  • 航空機向け炭素繊維複合材料
  • 水素・燃料電池関連材料
  • 風力発電翼用炭素繊維
  • 圧力容器用炭素繊維
2持続可能な循環型の資源利用と
生産に貢献する製品
  • PETボトルリサイクル繊維
  • リサイクルPETフィルム
3安全な水・空気を届け、
環境負荷低減に貢献する製品
  • 水処理膜
  • エアフィルター
4医療の充実と公衆衛生の
普及促進に貢献する製品
  • 衛材用不織布
  • 人工腎臓

SI事業の売上収益内訳

2022年度 12,828億円 気候変動対策を加速させる製品:51%、持続可能な循環型の資源利用と生産に貢献する製品:7%、安全な水・空気を届け、環境負荷低減に貢献する製品:15%、医療の充実と公衆衛生の普及促進に貢献する製品:26%

SI事業の主な事業領域

2022実績 12,828億円 2025目標 16,000億円 年率7.6%で拡大

デジタルイノベーション(DI)事業の拡大

DI事業の主な事業領域

  • エレクトロコーティング剤・実装材料
  • フレキシブル回路基板
  • 半導体・検査装置
  • ディスプレイ用材料

DI事業の売上収益目標

2022実績 1,664億円 2025目標 2,500億円 年率15%で拡大

基本戦略2価値創出力強化

基本戦略3競争力強化

収益機会を確実に捉えるために、東レグループの5つの強みを基盤として、「現場密着型」のデジタル活用を推進することにより、価値創出力強化と競争力強化に取り組みます。

東レグループの強みと「現場密着型」デジタル活用の推進

価値創出力強化

基本戦略4「人を基本とする経営」の深化

「人を基本とする経営」は、東レが創業以来受け継ぐ経営の考え方です。個の自主性を尊重し、専門性を高め、キャリア形成を図ることにより、東レグループの人材基盤を強化します。

「人を基本とする経営」の深化

多様な人材の確保・登用

  • 若手基幹人材の積極的登用
  • 海外ナショナルスタッフの
    各社マネジメント層への計画的な
    登用
  • 高度専門人材のさらなる活躍推進
  • 女性活躍推進とネットワークづくり
    支援
  • シニア人材の活躍機会の提供

人材の育成

  • キャリアシートを活用した本人と
    上司による自律的なキャリア形成の
    支援
  • プロフェッショナル人材の育成強化
    に向けた能力・スキルの習得と
    自己啓発支援
  • 社内公募などチャレンジ機会の拡大
  • 強い現場力を支えるリーダーの育成

働きがいと働きやすさの実現

  • 東レグループで働くことへの誇りに
    つながる環境・機会の提供
  • ライフイベントに合わせた働き方と
    キャリア形成の両立支援
  • 現場の声を尊重する組織風土の醸成

基本戦略5リスクマネジメントとグループガバナンスの強化

内部統制の強化とマネジメント力向上により健全な組織運営を実現します。

リスクマネジメントとグループガバナンスの強化

リスクマネジメント
  • 全社リスクマネジメント体制によるリスク管理の徹底
  • 経済安全保障・地政学リスクへの対応強化
内部統制
  • 業務監査、品質監査の体制増強による内部統制の有効性の向上
  • 業務フローのデジタル化推進による内部統制強化
東レグループのマネジメント力向上
  • 各国・地域単位での関係会社のマネジメント力向上
  • 法務・コンプライアンス
  • マネジメント人材の育成
  • 財務経理のリスク管理
  • 内部統制
  • 情報セキュリティ
  • DX推進

財務健全性の維持・強化

事業拡大と収益性の改善を両立を図り、「高成長・高収益事業」を拡大することに取り組みます。

「収益機会を捉える成長戦略」と「成長を支える財務基盤強化」

成長戦略の実行を通じて、事業拡大を図るとともに、従来のキャッシュ・フロー管理に加えて、
ROIC管理により資産効率性を向上させ、事業拡大と収益性の両立を図ります。

収益機会を捉える成長戦略事業利益の増加

  • 成長領域(SI事業・DI事業)での事業拡大
  • 価値創出による利益率の向上
    投資に対するリターンの確実性向上
  • 計画実現のための機動的なリソース投入
  • シナジーを期待できる分野でのM&Aの実行

成長を支える財務基盤強化投下資本の効率運用

  • D/Eレシオのガイドライン「0.7以下」
  • フリー・キャッシュ・フロー管理の強化
  • 3C-i※1活動で運転資本削減を継続
  • 「成長性と収益性の4分類」に基づく事業構造改革

※1. Cash Conversion Cycle Improvement

成長性と収益性の4分類

低成長・低収益事業の構造改革推進に加え、高成長・高収益事業をさらに拡大することを全社課題として取り組み、必要な経営リソースを機動的に投入して収益性改善を図ります。

キャピタル・アロケーション

D/Eレシオのガイドラインを従来の「0.8程度」から「0.7以下」に引き下げ、強固な財務基盤で「持続的かつ健全な成長」を支えていきます。3年間累計のフリー・キャッシュ・フローはプラスを目指します。

AP-G 2025 目標

設備投資、研究開発費

設備投資額 目的別内訳
研究開発費 内訳

2025年度の数値目標

1. 財務目標

2022年度実績 2025年度目標
売上収益 24,893億円 28,000億円
事業利益 960億円 1,800億円
事業利益率 3.9% 6%
ROIC*1 2.7% 約5%
ROE*2 5.0% 約8%
フリー・キャッシュ・フロー 2,373億円
(3年間累計)
プラス
(3年間累計)
D/Eレシオ 0.62 0.7以下
(ガイドライン)

AP-G 2025 為替レート前提:125円/US$

*1. ROIC=税引後事業利益÷投下資本(期首・期末平均)
*2. ROE=親会社の所有者に帰属する当期利益÷親会社の所有者に帰属する持分

2. サステナビリティ目標

2013年度実績
(基準年度)
(日本基準)
2022年度実績
(2013年度比)
(IFRS)
2025年度目標
(2013年度比)
(IFRS)
SI事業売上収益 5,624億円 12,828億円
(2.3倍)
16,000億円
(2.8倍)
バリューチェーンへのCO2削減貢献量 0.4億トン 9.5倍 15.0倍
水処理貢献量 2,723万トン/日 2.5倍 2.9倍
生産活動によるGHG排出量の
売上高・売上収益原単位
337トン/億円 35%削減*1 40%削減
日本国内のGHG排出量 245万トン 21%削減*1 20%削減
生産活動による用水使用量の
売上高・売上収益原単位
15,200トン/億円 32%削減*1 40%削減

*1. 基準年度である2013年度の値は、2014年度以降に東レグループに加わった会社分を含めて算出しています。