気候変動への対応

東レグループは、1926年の創業以来、一貫して「社会への奉仕」を存立の基礎とし、1955年にはこれを社是として制定し、現在の企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」へと志を受け継いできました。
この企業理念のもと、東レグループは、長年にわたり、地球規模の環境問題など様々な社会的課題へのソリューションを提供する革新技術・先端材料の創出に取り組み、持続可能な社会の発展に貢献してきました。
そして、2019年5月、東レは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD;Task Force on Climate-related Financial Disclosures)提言への賛同を表明しました。下記の各項目において、TCFD提言を踏まえた、気候変動に関連する東レグループの重要情報を開示します。
東レグループは、引き続き、グループ全体で、気候変動問題の解決に貢献する取り組みを進めるとともに、TCFD提言に沿った気候変動関連の情報開示を積極的に進めていきます。

TCFD

これまでの東レグループの取り組み

東レグループは、「企業は社会の公器である」との考え方のもと、事業を通じた社会貢献により企業として持続的に成長することを経営の中心に据えています。
1991年にスタートした長期経営ビジョン“AP-G2000”では、東レグループが目指す企業イメージの一つを“地球環境保護に積極的な役割を果たす企業集団”とし、同年に地球環境研究室を設立するとともに、翌年(1992年)には、全社委員会として地球環境委員会を設置するなど、経営陣が地球環境問題に積極的に取り組んでいくという姿勢を明らかにしました。
2000年には、東レグループの環境保全の中期的目標として、GHG排出量削減目標を含む「環境3ヵ年計画」を策定し、現在の「第5次環境中期計画」(達成年度:2020年度)までこれを引き継いでいます。
2009年には、東レグループの地球環境事業戦略の全社的な企画・立案と事業化の推進・支援を目的とする社長直轄組織として地球環境事業戦略推進室(以下「地球環境戦略室」)を設立し、2011年から、長期経営ビジョン“AP-Growth TORAY 2020”のもと、地球環境戦略室を中心としてグリーンイノベーション事業の拡大に取り組み、地球環境問題や資源・エネルギー問題に対するソリューションとなる製品・サービスの普及を図ってきました。
そして、近年、ますます気候変動などの地球環境問題が深刻化するなか、東レグループは、2018年7月、「2050年に向け東レグループが目指す世界」と、その実現のための「東レグループの取り組み」および「2030年度に向けた数値目標」を盛り込んだ「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」 を策定し、その達成に向けた取り組みを推進しています。
東レグループは、これまで長年にわたり、事業を通じて、あらゆる地球環境問題の解決への貢献に積極的に取り組んできた強みを活かしながら、今後も、気候変動を含む地球環境問題に対して本質的なソリューションを提供する革新技術・先端材料の創出に全力を尽くしていきます。

ガバナンス体制

2018年7月、東レは、取締役会の決議を経て、「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」を策定し、革新技術と先端材料の提供により、気候変動などの世界的課題の解決に貢献するという、東レグループの長期的な姿勢を示しました。
また、2011年2月策定の長期経営ビジョン“AP-Growth TORAY 2020”および、同年以降3年単位で推進している中期経営課題では、資源・エネルギー問題および地球環境問題の解決に貢献する「グリーンイノベーション事業拡大(GR)プロジェクト」に全社横断的に取り組むことを掲げ、研究・技術開発投資においては、その50%をGR関連(エネルギー費用の高効率化、クリーンエネルギーの活用促進、水処理技術の深化・展開、非化石原料素材の創出など)に投じてきました。
さらに、東レグループは、気候変動を含む社会的課題とそのリスクに関し、3つの全社委員会(CSR委員会、リスクマネジメント委員会、安全・衛生・環境委員会)にて監視・評価・管理を行い、取締役会が、各委員会の議論について報告を受け、監督と意思決定を行う体制を取っています(下図参照)。これに加えて、地球環境戦略室は、年2回、取締役会メンバーの出席する会議において、地球環境問題の取り組みや、グリーンイノベーション事業の拡大にかかる提言・報告を行っています。

CSR委員会 CSR全般統括役員(取締役)を議長として、ESGを中心とするCSR関連の課題にかかる議論を行い、東レグループのCSRに関する活動を推進している(年1回開催)。
リスクマネジメント委員会経営企画室長(代表取締役副社長)を議長として、気候変動を含む、東レグループの経営に影響を及ぼし得る重要なリスクにかかる議論を行い、東レグループのリスクマネジメントを推進している(年1回開催)。
安全・衛生・環境委員会生産本部長(常務取締役)を議長として、安全・衛生・防災・環境に関する東レグループの方針・施策にかかる議論を行い、GHG排出量削減など、東レグループの安全・衛生・防災・環境保全活動を推進している(年1回開催)
東レグループのガバナンス体制図

気候変動対策に貢献する東レグループの事業活動

1.東レグループ サステナビリティ・ビジョン

東レグループは、前記の「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」において、「地球規模での温室効果ガスの排出と吸収のバランスが達成された世界」など、2050年に向け東レグループが目指す4つの世界を掲げるとともに、その実現のために取り組む課題と2030年度に向けた数値目標(基準年度:2013年度)を設定しています。

2030年度に向けた数値目標では、日本政府の目標である「2030年までに2013年比GHG排出量26%削減(産業セクター目標7%削減)」に沿って、生産活動によるGHG排出量の売上高原単位(Carbon Intensity)を東レグループ全体で30%削減することを掲げています。
また、東レグループは、事業を通じた気候変動問題の解決への貢献のためには、製品・サービスのライフサイクル全体でのCO2収支の把握が必要であるとの考えのもと、グループ内でのGHG排出削減のみならず、バリューチェーン全体を通じたGHG排出削減への貢献にもいち早く取り組んできました。2030年度の数値目標では、グリーンイノベーション製品の供給拡大を通じて、バリューチェーンへのCO2削減貢献量(Avoided Emissions)を8倍に拡大することを掲げています。
現在、東レグループでは、上記の数値目標の達成を念頭に置いて、2030年までの次期長期経営ビジョンを検討しているところであり、同ビジョンの策定後は、その着実な実行を推進していきます。

2.グリーンイノベーション事業

東レグループは、地球環境問題や資源・エネルギー問題の解決に貢献する事業を「グリーンイノベーション事業」と定義し、東レグループの先端材料やコア技術を活かしたグリーンイノベーション製品の供給により持続可能な低炭素社会を実現することを目指して、継続的に「グリーンイノベーション事業拡大(GR)プロジェクト」を推進しています。地球規模の環境問題が急速に深刻化している昨今の状況に照らせば、その解決に貢献するグリーンイノベーション事業は、東レグループの持続的成長を支える重要な事業分野の一つであるといえます。また、グリーンイノベーション事業の拡大は、「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」が掲げる「2050年に向け東レグループが目指す世界」を実現するための最も重要な取り組みの一つでもあります。
前記のとおり、東レグループは、2011年から「グリーンイノベーション事業拡大(GR)プロジェクト」に取り組んでおり、2010年度には3,780億円であったグリーンイノベーション製品の売上高は、2018年度には7,869億円まで拡大しています。
グリーンイノベーション事業における活動内容の詳細については、以下のリンクより東レウェブサイトの該当ページをご覧ください。

以下では、気候変動対策にかかる東レグループのグリーンイノベーション事業として、いくつか具体例を示します。

炭素繊維複合材料
1992年に航空機一次構造材用の炭素繊維の供給を開始し、2005年には、米国のThe Boeing Company(ボーイング社)との間で、炭素繊維複合材料(炭素繊維トレカ®プリプレグ)の包括供給契約を締結し、2015年には、同社と、契約期間を10年以上延長する包括的長期供給契約を締結しました。同契約期間(2015年~2025年)における東レグループの供給総額は、1.3兆円を超える見込みです。
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を機体構造重量の50%に使用した航空機は、従来航空機(CFRPを機体構造重量の3%に使用)と比較すると、機体軽量化による燃費の改善によって、一機当たり10年間で累計27,000tのCO2削減効果があると試算されています(炭素繊維協会試算)。
バッテリーセパレータフィルム
リチウムイオンバッテリー(LiB)に用いられるセパレーターフィルム(BSF)は、携帯型電子機器・定置用蓄電池などの民生用途が拡大するほか、電気自動車(EV)の普及拡大に伴う車載用途が急激に拡大すると見込まれています。
特に欧州では、環境問題への意識の高まりからEVなどの環境対応車の普及が急速に進むと見られており、これに対応して、東レグループは、日本、韓国に次ぐ3番目の生産拠点としてハンガリーにBSF生産設備を新設することを決定しました。同設備は2021年7月に稼働を開始することを予定しています。
軟包装用水なしオフセット印刷システム
印刷工程での揮発性有機化合物(VOC)フリー化と、CO2排出量の大幅削減を可能にする「軟包装用水なしオフセット印刷システム」を、インキメーカー、印刷機メーカーおよび印刷会社と共同で開発しています。
軟包装用水なしオフセット印刷システムは、アジアを中心に軟包装印刷に広く用いられているグラビア印刷と比べて、VOC排出量を50分の1以下に抑えることができます。また、省電力LED-UV技術によるインキ乾燥方式を用いることで、グラビア印刷に必要な溶剤乾燥や排気処理が不要となり、電力消費量が6分の1以下まで削減されるため、電力消費に伴うCO2排出量も大幅に削減できます。軟包装用水なしオフセット印刷システムの普及・稼働により、2030年近傍に日本国内で約50万t/年のCO2を削減すること(当社推定・試算値)を目指しています。

3.製造段階でのCO2排出量削減にかかる取り組み

東レグループは、製造段階でのCO2排出量削減を図るため、プロセス改善による省エネルギー推進および再生可能エネルギーの活用、石炭利用の削減などの取り組みを進めています。
製造段階でのCO2排出量削減にかかる2018年度の実績などについては、以下のリンクより東レウェブサイトの該当ページをご覧ください。

4.物流におけるCO2排出量削減にかかる取り組み

東レグループは、物流におけるCO2排出量削減を図るため、輸送距離の短縮、(環境負荷の少ない)船舶や鉄道による輸送への切り替え(モーダルシフト)、輸送効率の向上などの取り組みを進めています。
物流におけるCO2排出量削減にかかる2018年度の実績などについては、以下のリンクより東レウェブサイトの該当ページをご覧ください。

5.今後の対応について

東レグループは、引き続き、生産活動によるGHG排出量削減に取り組むとともに、「グリーンイノベーション事業拡大(GR)プロジェクト」の一環として、革新技術と先端材料の創出により、気候変動の緩和と適応に貢献する製品・サービスの更なる供給に取り組んでいきます。
一方、東レグループは、気候変動による自社事業にかかるリスクとして、①気候変動に起因する気象災害(洪水、干ばつなど)が操業に及ぼす影響や、②カーボンプライシング(炭素税など)や各種規制拡大による操業・設備コストの上昇などを想定しています。
今後、2℃以下シナリオに沿ってさらに分析を進め、気候関連のリスクおよび機会が東レグループの事業・戦略にどのような影響を及ぼすか検討していきます。

リスク管理

東レグループは、気候変動にかかるリスクを含む全社的なリスクに関し、定期的なリスクマネジメント(優先対応リスク低減活動)および定常的なリスクマネジメント(国内外の動向を注視、リスクを検出・評価・モニタリング)に取り組んでいます。
東レグループの全社的なリスクマネジメント活動の詳細については、以下のリンクより東レウェブサイトの該当ページをご覧ください。

指標と目標

前記のとおり、東レグループは、「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」において、以下のとおり、2030年度に向けた数値目標を設定しています。また、同数値目標にかかる2018年度の実績は下表のとおりです。

  2013年度実績 2018年度実績 2030年度目標
(2013年度比)
  2013年度比
グリーンイノベーション製品売上高 4,631億円 7,869億円 約1.7倍 4倍
バリューチェーンへのCO2削減貢献量 3,845万トン 16,200万トン 約4.2倍 8倍
ライフイノベーション製品売上高 1,196億円 2,230億円 約1.9倍 6倍
水処理貢献量(水量換算) 2,723万トン 4,680万トン 約1.7倍 3倍
GHG排出量売上高原単位 0.337千トン/億円 0.286千トン/億円 約15%削減 30%削減
用水量売上高原単位 15.2千トン/億円 11.7千トン/億円 約23%削減 30%削減