CSR活動報告(各CSRガイドラインの活動報告)

事業を通じた社会的課題解決への貢献

イノベーションを通じて、気候変動、資源・エネルギー問題、水資源・自然環境の保全、医療の充実・公衆衛生の普及促進などの様々な社会的課題へのソリューションを提供し、社会の持続的発展に貢献します。

基本的な考え方

地球温暖化、水不足、海洋汚染、資源枯渇、生物多様性の減少など、私たちを取り巻く地球環境問題はますます深刻化しています。また、現在約80億人の世界人口は、2050年には約100億人に達すると見込まれており、先進国のみならず多くの新興国でも平均寿命の延びと出生率の低下による急速な高齢化に直面することが予想されます。
21世紀の世界においては、地球規模の環境問題の解決、および健康で自立した生活を維持するためのヘルスケア・質の高い医療・負担の少ない医療の提供が、最重要の共通課題となっています。

東レグループは、2018年に「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」、2020年に長期経営ビジョン“TORAY VISION 2030”を策定・発表し、2050年の目指すべき世界を明確にし、マイルストーンとしての2030年の長期目標(KPI)を定めました。そして、2023年3月に発表した中期経営課題“プロジェクト AP-G 2025”では、多様化するサステナビリティへの要請に対応すべく、これまで推進してきたグリーンイノベーション(GR)・ライフイノベーション(LI)事業をサステナビリティイノベーション(SI)事業※1に統合し、「SI事業拡大プロジェクト」として推進しています。

SI事業は、「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」で示した、「地球規模での温室効果ガスの排出と吸収のバランスが達成された世界(GHG排出実質ゼロの世界)」、「資源が持続可能な形で管理される世界」、「誰もが安全な水・空気を利用し自然環境が回復した世界」、「すべての人が健康で衛生的な生活を送る世界」の実現に貢献する事業です。具体例としては、気候変動対策を加速させるために、先端材料の用途を航空機、自動車などに拡大、軽量化による燃費向上でCO2排出の抑制に貢献するほか、風力、水素など再生可能エネルギー社会を素材供給により支える取り組みを推進しています。持続可能な循環型資源利用のために、バイオ関連技術やリサイクルなど資源循環に対する取り組みを進めています。また、安全な水・空気を届けるために、水処理膜やエアフィルターなどの拡大を進めています。さらには、健康・長寿、医療の質向上や、人の安全、および高齢者や要介護者の自立した生活へ貢献する製品の拡大を図っています。

  1. ※1 サステナビリティイノベーション(SI)事業:「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」の実現に貢献する事業・製品群。

体制

「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」の実現に向けた活動に取り組むため、SI事業拡大プロジェクトと気候変動対策プロジェクトにおいて、気候変動や資源循環などに対する中長期的なロードマップや実行計画を策定、推進し、2030年の数値目標達成に向けた進捗管理を行っています。
プロジェクトを通じて、社会のGHG排出量の削減に貢献するほか、東レグループのGHG排出量削減を進め、カーボンニュートラルの実現を目指しています。また、持続可能な循環型の資源利用のための全社的戦略を策定・推進し、当社基幹ポリマーのバイオ化、リサイクルなど資源循環への取り組みを加速しているほか、生物多様性・自然資本への負荷低減の全体戦略を検討、推進しています。
取締役会を補佐し、全社重要事項の協議機関である経営会議においては、同プロジェクトの内容およびサステナビリティに関する重要な方針、議題を協議しています。また、CSR、リスクマネジメント、安全・衛生・環境、研究・技術開発を担う各機能と連携して、東レグループ全体のサステナビリティに関する課題に取り組んでいます。
取締役会は、各機能での議論について年1回以上報告を受け、監督と意思決定を行っています。また、事業戦略の策定・経営判断に際して、サステナビリティに関する問題を重要な要素のひとつとして考慮し、総合的に審議・決定しています。
なお、気候変動問題に関するガバナンス体制は、「東レグループ TCFDレポート Ver.2.1 」をご参照ください。

「CSRロードマップ 2025」の目標

CSRロードマップ目標

サステナビリティイノベーション事業に重点を置き、革新技術・先端材料の提供および新技術の創出による事業拡大を通じて、社会的課題の解決に貢献します。

主な取り組みとKPI実績

KPI
(1)サステナビリティイノベーション事業の売上収益拡大を目指します。
7-❶
(2)バリューチェーンへのCO2削減貢献量※2を拡大します。
7-❷
(3)水処理貢献量※3を拡大します。
7-❸
(4)低炭素・循環型社会の実現を目指し、様々な製品の研究・技術開発を推進していきます。
-
(5)プラスチック製品のバイオマス活用・リサイクル活動推進、再生可能エネルギー・水素の普及、水資源の再利用などに貢献していきます。
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(6)PPE※4用部材・製品の供給とその高度化、空気や水などの衛生環境を守るための素材供給を通じて、感染症を含む公衆衛生上のリスク対策に貢献します。
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KPI(重要目標達成指標) 目標値 2023年度 実績
2023年度 2024年度 2025年度
1兆6,000億円(2025年度) 1兆3,115億円
2013年度比15倍(2025年度) 2013年度比10.3倍
2013年度比2.9倍(2025年度) 2013年度比2.7倍
  1. 報告対象範囲:東レグループ
  1. ※2 CO2削減貢献量:製品のバリューチェーンを通じたライフサイクル全体でCO2排出量削減効果を、日本化学工業協会およびICCA(国際化学工業協会協議会)のガイドラインに従い、東レが独自に算出。
  2. ※3 水処理貢献量:水処理膜により新たに創出される年間水処理量。各種水処理膜(RO/UF/MBR)ごとの1日当たりの造水可能量に売上本数を乗じて算出。
  3. ※4 PPE : personal protective equipment(個人用防護服)

■関連マテリアリティ

  • 気候変動対策の加速
  • 循環型社会実現への貢献
  • 自然環境の回復への貢献
  • 健康で衛生的な生活への貢献
  • ステークホルダーとの共創と対話による発展
  1. マテリアリティから見た「CSRロードマップ 2025」はこちら(PDF:1.17MB)PDFをご覧ください。

今後に向けて

SI事業の2022年度の売上収益(連結ベース)の実績は1兆2,828億円。2023年度は1兆3,115億円と前年比+2.2%の伸びとなりました。炭素繊維複合材料事業において、風力発電翼用途が在庫調整の影響を受けたものの、航空機用途の回復が大きく影響しました。2025年度の売上収益目標は1兆6,000億円と2022年度比で年平均+7.6%の成長を目指しています。また、バリューチェーンへのCO2削減貢献量や水処理貢献量も事業拡大に伴って着実に増加しました。

世界は、人口増加や広範な国々で進展する高齢化、そうした中で日々厳しさを増していく気候変動、水不足、資源の枯渇といったさまざまな地球規模の課題が相互に関連しながら深刻化しており、これからは環境に配慮した消費・生産様式にシフトしていくことが考えられます。
また、「製品の製造→使用→再生して再び製品の原材料として使う」循環型社会に移行する取り組みが本格化することで、大量生産・売り切りのビジネスモデルから、製品のサービス化(product as a service)、シェアリング、製品の長寿命化、資源の回収・リサイクル、循環型サプライチェーンなどのビジネスモデルへの転換が進むことが想定されます。

東レグループは、多様化するサステナビリティの課題に対応するため、「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」で示した、「地球規模での温室効果ガスの排出と吸収のバランスが達成された世界(GHG排出実質ゼロの世界)、CN領域※5」、「資源が持続可能な形で管理される世界、CE領域※6」、「誰もが安全な水・空気を利用し自然環境が回復した世界、NP領域※7」、「すべての人が健康で衛生的な生活を送る世界、LI領域※8」の実現に貢献する製品の拡大をより強力に推進していきます。

  1. ※5 CN領域:モビリティの軽量化や電力負荷低減に貢献する製品を中心とした「省エネルギー」、再生可能エネルギーやモビリティ電動化・水素関連製品を中心とした「新エネルギー」、「CO2の吸収・資源化」に寄与する製品と定義しています。この領域では、主に軽量化や遮熱・断熱材料による省エネ、電動化、水素関連材料に取り組んでいます。
  2. ※6 CE領域:「リサイクル」「バイオマス」「有価物分離回収」と定義しています。この領域では、主にPETやナイロンといった当社製品の基幹ポリマーのリサイクル、バイオマス由来原料化を推進しています。
  3. ※7 NP領域:「水処理」「空気浄化」「環境負荷低減」を対象とし、主に水処理膜や、汚染物質削減・代替技術に取り組んでいます。
  4. ※8 LI領域:「医療の質の向上」「健康・長寿」「人の安全」を対象と定義し、医薬医療・衛材・安全・健康に関する事業拡大に取り組んでいます。

「CSRロードマップ 2025」(対象期間:2023-2025年度)におけるCSRガイドライン7「事業を通じた社会的課題解決への貢献」の主な取り組みやKPIはこちらをご覧ください。

2023年度の活動報告

2023年度の活動報告をご紹介します。