化成品研究所
化成品研究所は、1999年に樹脂研究所とケミカル研究所が統合され、ケミカル製品からポリマー製品まで幅広い化成品を創出する研究所として発足しました。ポリマーサイエンス、合成化学技術、触媒技術、およびナノテクノロジーを駆使し、モビリティ分野や情報通信分野での先進材料の研究を行っています。
化成品研究所は、東レのケミカル製品や基幹ポリマー製品の研究・技術開発基盤の役割を担っており、高分子化学・重合技術をベースとした新ポリマー開発、ポリマーアロイ制御による高機能化、革新プロセス技術によるポリマー高次構造制御などに取り組んでいます。また、リアルとバーチャルの有機的結合による高速・高効率の研究・技術開発として、デジタル技術の活用にも積極的に取り組んでいます。
次世代モビリティ素材
大変革期にある次世代モビリティ分野では、自動車、航空機に加え、空飛ぶクルマなど新モビリティの台頭が予想されます。これらモビリティでは、従来の軽量化による燃費向上に加え、電動化や水素利用によるCO2削減が追究され、使用される素材も従来に無い機能が求められます。化成品研究所では、このような次世代モビリティを見据え、炭素繊維複合材料に用いられる熱硬化性ポリマーや、エンジニアリングプラスチック(PA、PBT、PPS、LCP)の高機能化など、革新素材研究に取り組んでいます。直近では、国家プロジェクトに参画し、全く新しい発想での環動構造をナノスケールでポリマー中に導入して耐衝撃性や耐疲労性を格段に向上させた「しなやかでタフなポリマー材料」を創出し、次世代モビリティでの革新素材として展開を図っています。また、xEVでニーズの高いポリフェニレンサルファイドをベースに、当社独自のナノ構造制御技術「ナノアロイ®」を深化させて高耐熱化や超柔軟化などの新機能付与にも成功しています。さらには、xEV向けLiB革新素材、FCV向け水素タンク素材、3D部材向けの造形用微粒子など、次世代モビリティで基幹となる用途・工法をターゲットに研究を進めています。
サステナブル素材
プラスチックは廃棄後の環境負荷が社会的に注目され、その課題解決に向けた動きも活発化しています。化成品研究所では分解性ポリマーの研究やリサイクル技術の開発に取り組んでおり、製品使用時のCO2削減のみならず、使用後の環境負荷低減まで考えた、総合的な環境配慮視点で社会課題の解決に挑戦しています。
自動車用革新材料と適用例
ナノアロイ®
独自のアロイ技術でポリマーをナノオーダーで精密制御
しなやかタフポリマー
衝撃を加えたときに応力を吸収するしなやかでタフなポリマー材料
3Dプリンター用ポリアミド粒子
研究・開発の歩み(抜粋)
1951 | 合成繊維研究室(後のケミカル研究所)設立 |
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1959 | プラスチック研究所(後の樹脂研究所)設立 |
1962 | カプロラクタム(PNC法)の生産開始 |
1975 | PBT樹脂の生産開始 |
1997 | 液晶ポリエステル シベラス®の生産開始 |
1999 | 化成品研究所設立 |
2001 | ナノアロイ®の創出 |
2007 | 衝撃吸収ポリマーの開発 |
2016 | しなやかでタフなポリマー材料の開発 |
2019 | 世界最高レベルの柔軟性を有するPPS樹脂の開発 |
2020 | ポリアミド真球粒子化技術の開発 |