有識者からのコメント

2021年9月公表時点の情報に基づきいただいたコメントです

岸本 幸子氏

公益財団法人パブリックリソース財団
代表理事・専務理事

岸本 幸子

「東レグループCSRレポート2021」における「事業を通じた社会的課題解決への貢献」「良き企業市民としての社会貢献活動」「人権推進と人材育成」「サプライチェーンにおけるCSRの推進」の4領域に関し、コメントを述べさせていただきます。

東レグループは「事業を通じた社会的課題解決への貢献」について、地球環境問題や資源・エネルギー問題の解決に貢献する「グリーンイノベーション(GR)事業」と、医療の質向上、医療現場の負担軽減、健康・長寿、人の安全に貢献する「ライフイノベーション(LI)事業」を全社横断プロジェクトと位置付け、推進しています。特にGR事業においては、バリューチェーン全体でのCO2排出削減効果などの具体的な成果指標(KPI)を設定していることが特筆されます。電動自動車向け車載コンデンサ用フィルム、環境配慮型ポリエステルフィルム、多孔質炭素繊維を用いた革新CO₂分離膜など革新的な製品の研究開発を着実に進めている点は高く評価されます。また、各種のリサイクルシステムを開発し取り組みを推進している点も優れており、今後はお客様企業とともに、循環型社会への移行をさらに強力に推し進めることが期待されます。LI事業においても、新型コロナウイルス感染拡大に機敏に対応し、医療物資の増産に取り組んだ点は高く評価されます。

「良き企業市民としての社会貢献活動」については、重点分野を「科学技術振興」「環境、地域」「健康、福祉」に定め、企業財団への寄付なども通じて、継続的な取り組みを行っている点に好感がもてます。特に環境教育や理科教育に社員が講師として参画しつつ取り組んでいることや、国内外の拠点で地域社会との共生に取り組んでいることは、今後も地道に取り組んでいただきたい点です。

「人権推進と人材育成」については、「倫理・コンプライアンス行動規範」において職場における各種のハラスメントを決して容認しないことを明記していることや、LGBTに関する「にじいろ相談窓口」を設置していることが評価できます。

「サプライチェーンにおけるCSRの推進」については、総購買額の9割にあたる主要調達先などに対しCSR調達アンケートを実施、同社が求める取り組み水準の企業が99%に達しているなど、着実な取り組みがみられます。さらに、二次サプライヤーにおいても人権尊重やCO2削減の取り組みが一層進むよう、引き続き取引先サポートを進めることが期待されます。

岸本 幸子 略歴

東京大学教養学部卒。商社、シンクタンク勤務、留学を経て、2000年パブリックリソースセンター(現財団の前身)、2013年現財団を設立。同年より現職。日本の寄付文化の推進を目指し、個人や企業等からの寄付を優れたNPOや社会起業家につなぐマッチングに取り組んでいる。企業のCSR活動の支援、インパクト評価にも携わる。近著に「寄付白書2021」他。

馬奈木 俊介 氏

九州大学
主幹教授

馬奈木 俊介

「東レグループCSRレポート2021」を拝読し、「企業統治」から「良き企業市民としての社会貢献」に至るまで幅広く目標設定をして、事後評価を実施し、サプライチェーンにおけるCSRの推進も着実に実施している東レグループのCSRの中身が良くわかりました。
東レグループがESGにおいて同業他社比較で優れているのは、特にE(環境)です。環境においては、気候変動(CO2排出)、そして資源利用(水)において特色があります。

東レグループの環境への取り組みについては、2018年に公表した「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」の中で、2050年に向け、「地球規模での温室効果ガスの排出と吸収のバランスが達成された世界」すなわち温室効果ガスの排出が実質ゼロの世界を目指すと宣言しており、カーボンニュートラルに向けた取り組みを推進していることが分かります。2030年度までにGHG排出量、用水使用量の売上収益原単位を30%削減することなどを同ビジョンにて目標として明確にしていることも評価できます。SDGsの項目の中では、低炭素に次いで水も東レグループは大きく関係しています。

環境経営の推進をライフサイクルマネジメント(LCM)にて考えた場合、低炭素も水の効率化も地球及び人の健康をそれぞれ守るものです。前者はグローバルに、後者はローカルに影響します。同じSDGsの項目でも対象エリアが異なります。そして、更にESGの観点からすると、ともにEである一方、上記の通り対象エリアが変わるため、エネルギーシフトの促進や住みよいまちづくりなどという様にそれぞれ社会への影響、貢献が異なることになります。

良い水は健康につながります。未だに世界中で飲み水に困る地域、農業用水に困る地域は多々あります。日本国内でも更に効果的な水の利用形態も考えられます。そういった地域に直接行う社会課題の解決に向けたビジネスこそがSDGsです。今後、東レグループが水処理技術をはじめとした事業を通じた社会貢献をグローバルに展開する中で、その様々な取り組みを、地域ごとにオーダーメイドで課題を解決する方向にも更に発展させていって頂きたいと思います。

その結果として、水を通した健康、そして同時に東レグループが展開している医療関連の事業、更には気候変動問題の解決に貢献する各種取り組みなど様々な事業が幅広くリンクすることで、実業を通じて地域ごとの諸課題を解決するシステムになり、地域への貢献が益々期待できます。本レポートを拝読し、このような将来を実現できる希望を持てました。更なる持続可能な社会の発展への貢献を期待しています。

馬奈木 俊介 略歴

2015年より、九州大学主幹教授・都市研究センター長・工学研究院教授・総長補佐。日本学術振興会賞受賞。日本学術会議会員&サステナブル投資小委員会委員長。国連「新国富報告書」代表、IPCC代表執筆者、IPBES統括代表執筆者、OECD(経済協力開発機構 貿易・環境部会)副議長、世界環境資源経済学会共同議長などを歴任。世界、各国の新国富指標を代表し、持続可能性評価のための開発を代表して行っている。主な著書に「ESG経営の実践」、「持続可能なまちづくり」、「新国富論」などがある。