東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、このたび、独自に開発した半導体ポリマーと単層カーボンナノチューブ(Carbon Nano-Tube :以下「CNT」)を複合化することにより、移動度1)2.5cm2/Vs、オンオフ比2)106と、世界最高レベルの性能を示す塗布型CNT薄膜トランジスタ(CNT-Thin Film Transistor :以下「CNT-TFT」)の開発に成功しました。現在、ディスプレイ用トランジスタとしての実証研究を進めており、材料開発と併せて実用化に向けた取り組みを加速してまいります。
優れた電気的・機械的特性を持つCNTは、すでにタッチパネルの透明電極などで実用化が始まりつつあり、TFTとしてもフレキシブルデバイス等への応用が期待され、開発が進められています。単層CNTをTFTに応用するためには、電極間に単層CNTの均一な分散薄膜を形成する必要がありますが、単層CNTは互いに集まりやすい性質をもっているため、均一に分散したCNT薄膜を作製するのが難しく、またCNT間に残存する電気絶縁性の分散剤が電気の流れを遮ってしまい、十分なTFT特性が得られないという課題がありました。
この課題に対して東レは今回、新しい分子設計で開発した半導体ポリマーと単層CNTとを複合化することで、導電性を阻害することなく単層CNTの分散性を高めることに成功しました。本材料を用いて塗布法で作製したTFTは、高い移動度を維持したまま、従来比1桁(10倍)以上高いオンオフ比106を示しました。さらに、独自のゲート絶縁膜を適用することにより、CNT-TFTのもう一つの課題であるしきい値電圧3)を0V近傍まで低減しました。
さらに東レは、韓国慶煕大学(所在:大韓民国ソウル特別市、学長:趙仁源、以下KHU)のJin Jang教授、東レ・韓国研究拠点(Advanced Materials Research Center、以下AMRC)と共同で、東レが開発した材料を用いたデバイス構造・プロセスの最適化、ディスプレイの製作を行っています。今回、単層CNTの製膜プロセスを最適化することにより、移動度2.5cm2/Vs、オンオフ比106と、塗布型CNT-TFTでは世界最高レベルを達成しました。今後は、東レの強みである材料開発と共同研究による実用化向けた開発を一層強化し、電子ペーパー等ディスプレイ用途での採用を目指してまいります。
東レは、今後もコアテクノロジーである高分子化学とナノテクノロジーの融合によって、コーポレートスローガンである”Innovation by Chemistry”を具現化する先端材料の開発を推進していく所存です。
今回開発に成功した塗布型CNT-TFTの技術詳細は以下の通りです。