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サステナビリティイノベーション事業・製品分野の取り組み
東レグループは、サステナビリティイノベーション(SI)事業を通じて、持続可能な社会の実現に貢献しています。SI事業を構成するSI製品の定義は、「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」に示す4領域に貢献する製品・技術の総称であり、独自の基準に基づいて選定しています。

SI製品の認定手順
SI製品を認定するために「サステナビリティイノベーション製品認定委員会」を設置し、下図に示す手順に従って認定しています。各本部委員会、主管部署、SI製品認定委員会による3段階の審査を経て、サステナビリティへの貢献が客観的な裏付けに基づいて立証された製品が、SI製品として認定されます。

- ※1 ライフサイクルアセスメント(製品に関係する資源の採掘から、素材や部品の製造、流通、使用、廃棄に至るまでのライフサイクル全体での環境負荷を定量的に評価する手法)やライフサイクルインベントリ(製品やサービスのライフサイクルにおける環境負荷項目の入出力一覧)をもとにした分析データ、CO2削減貢献度、用途・使用部材の詳細など。
- ※2 主管部署(担当領域)
・サステナブル経営推進室
サステナブル事業戦略グループ(サーキュラーエコノミー、ライフイノベーション)
・サステナブル経営推進室
環境対応戦略グループ(カーボンニュートラル、ネイチャーポジティブ) - ※3 サステナビリティイノベーション製品認定委員会:SI事業拡大リーダー(委員長:サステナブル経営推進室長)、マーケティング企画室長、技術センター企画管理室長、必要に応じて有識者を招聘する。
2024年度に発表したSI関連の製品事例・研究開発事例
下廃水再生水※4からの超純水製造を可能とする逆浸透(RO)膜「TBW-XHRシリーズ」の販売を開始
中性分子高除去・低圧逆浸透(RO)膜エレメント「TBW-XHRシリーズ」
東レ(株)は、半導体分野などでの超純水製造に向けて、下廃水再生水を原水とした場合に求められる尿素の除去性を従来比2倍に高めた中性分子高除去・低圧逆浸透(RO)膜エレメント「TBW-XHRシリーズ」を開発し、国内水処理エンジニアリング会社向けに先行販売を開始しました。
世界的な水不足の中、半導体製造工程では水の再利用が重要課題となっており、下廃水再生水や海水など多様な水源から高水質な超純水を製造する技術が求められています。
特に尿素は、半導体製造の露光工程に悪影響を及ぼすため、高い効率で除去する必要があります。
当社は、RO膜の構造制御技術を革新し、水を選択的に透過させながら尿素やホウ素、アルコールなどの除去性能を向上させる新技術を開発しました。これにより、従来困難だった尿素除去性を2倍に高め、低圧でも高い透水性を実現しました。
本開発には、(株)東レリサーチセンターが保有する高度分析技術が活用されています。
本製品は社内評価では、90%近い除去率を達成しており、下廃水再生水からの超純水製造において尿素濃度を半減するなど、最先端の半導体工場に求められる水質基準に対応しています。
本製品は、既存の超純水製造システムの水質向上に加え、下廃水再生水利用など新システム構築にも貢献します。今後は、海水淡水化や工場廃水処理に加え、河川水などのかん水淡水化用途への展開も予定しています。
- ※4 下廃水再生水:近年、水不足が深刻な地域では、下廃水を生物処理した二次処理水を水源に、限外ろ過膜および逆浸透膜でろ過した処理水を「再生水」として飲料水などの水源に利用している。
ナノ構造制御による高分離精度中空糸膜モジュールを開発―食品製造の効率化とCO2排出量・コスト削減に貢献―
東レ(株)は、食品やバイオ用途向けに、ナノ細孔構造制御技術を活用した高分離精度中空糸膜モジュールを開発しました。このモジュールは、従来品と比べて孔径(分画分子量※5)を約4分の1に小さくしながらも、高い耐熱性と透過性を維持しています。これにより、タンパク質や多糖類の回収率や濃縮倍率を高めることができ、製造プロセスの効率化を実現します。また、CO2排出量や製造コストの削減にもつながります。
本開発品は、外圧式モジュールを採用しており、高濁度・高粘度の液体にも対応可能です。東レ独自の複合中空糸膜構造により、透過性が高く、ファウリング※6が起こりにくい特性を備えています。さらに、125℃までの蒸気や熱水に耐えることができるため、従来の熱濃縮工程を膜濃縮に置き換えることで、環境負荷の低減にも貢献します。
近年は、機能性表示食品などにおいて、低分子量のタンパク質や多糖類の濃縮ニーズが高まっています。東レは、独自の分離膜技術と新たに開発した耐熱化製法を組み合わせることで、小孔径と高透過性を両立させたモジュールを実現しました。分画分子量は1万~2万ダルトンで、従来品よりも幅広い分子量の物質に対応できます。
本開発品は、お客様向けにサンプル提供を開始しており、一部のお客様では評価が進んでいます。今後は、濃縮・精製の対象となる分子量に応じて、本開発品と従来品を使い分けていただくことで、より最適な製造プロセスの構築が可能になります。
- ※5 分画分子量:膜が特定の分子量の物質をどの程度捕捉できるかを示すもの。
- ※6 ファウリング:分離膜の表面や内部に汚れ成分が蓄積・閉塞することで、その分離性能が損なわれる現象。低ファウリングは、分離膜自体が汚れ成分の蓄積・閉塞がしにくい状態を示す。
本開発品の適用用途
本開発品の孔径と実液透過性の関係(高濃縮時の例)
遮熱性と透明性を両立したナノ積層ウインドウフィルムの本格展開
東レ(株)は、高い遮熱性と透明性を兼ね備えたナノ積層フィルム「PICASUS™(ピカサス)1)IR」のウインドウフィルム向け本格展開を開始しました。
近年、気温上昇や省エネルギー化の要請を背景に、遮熱性に優れたウインドウフィルムの需要が高まっており、特に建築物や自動車において、視認性や景観を損なわない高透明性の製品が求められています。
こうしたニーズに応えるため、当社は、ナノ積層技術により、透明性と遮熱性を兼ね備えたフィルムである「PICASUS™ IR」を開発し、自動車のフロントガラスなどに展開してきました。この技術を応用し、建築物や自動車の窓に貼付可能な厚さ50μmのスタンダードタイプを新たに発売しました。高い透明性と遮熱性に加え、施工時のリワーク性にも優れています。
さらに、遮熱性能を約40%向上させた高遮熱タイプの評価も進めており、製品ラインナップの拡充を図っています。
「PICASUS™ IR」は、5G通信への影響を抑える優れた電波透過性も備えており、安全性と快適性の両立に貢献します。

猫慢性腎臓病治療薬「ラプロス™」の欧州での国際共同治験を開始
東レ(株)は、猫の慢性腎臓病治療薬「ラプロス™」の欧州での国際共同治験を開始しました。
猫の慢性腎臓病は、腎機能の低下により食欲不振や体重減少などの症状が現れ、最終的には命に関わる疾患です。「ラプロス™」は、腎機能低下の抑制が効能又は効果として認められた初の動物用医薬品です。
本治験では、欧州での製造販売承認取得を目的に、慢性腎臓病の猫300頭を対象に182日間の安全性と有効性を検証します。
欧州医薬品庁の科学的助言を踏まえ、欧州各国において必要な治験許可を取得した上で実施しています。
さらに、米国や中国をはじめとする他地域での展開に向けた取り組みも並行して進めています。
2024年度の出展事例
JEC World 2025への出展
東レグループ出展ブース
Photo by Frederic JOLY / Design by TRIANGLE EXPOSITIONS
東レグループは、2025年3月4~6日にフランス・パリで開催された世界最大級の複合材料展示会「JEC World 2025」において、グループ5社による初の共同出展を実現しました。
「技術と協業により新しい価値と持続可能な未来社会を創出します」というテーマのもと、東レグループのブースでは、グループの垂直統合体制とグローバルに展開する多様な製品群、ならびに技術開発事例を紹介しました。展示内容には、トレカ™炭素繊維、トウプレグ、高性能熱硬化性複合材料、熱可塑性複合材料、研究開発技術などが含まれ、当社の複合材料分野における総合力を広く発信しました。
展示は「サステナビリティ」「モビリティ」「エネルギー」「クオリティ・オブ・ライフ」「新製品紹介」の5つのカテゴリに分類され、それぞれの分野における東レの製品および技術の貢献を紹介しました。
今回の出展には、東レ(株)に加え、欧州関係会社であるToray Carbon Fibers Europe S.A.(フランス/炭素繊維・中間材料の製造・販売)、Toray Advanced Composites Netherlands B.V.(オランダ/中間材料)、Composite Materials (Italy) s.r.l.(織物・プリプレグ)、およびDelta Preg S.p.A.(イタリア/プリプレグ)の各社が参加しました。
各社の連携を通じて、東レグループのグローバルな事業連携の強みを示す貴重な機会となりました。
2024年度の受賞事例
東レの水処理膜技術が「地球環境大賞」で環境大臣賞を受賞
受賞式での記念撮影(中央は東レ(株)大矢社長)
東レ(株)は、水処理膜技術による世界の水不足問題の解決への貢献が評価され、「第32回地球環境大賞」において環境大臣賞を受賞しました。東レの水処理膜の歴史は1968年のRO膜の研究開始にまで遡り、現在では世界35カ所に販売拠点、6カ所に製造工場、そして4カ所に研究・技術開発拠点を持ち、当社の水処理膜が使用されている水処理プラントは100カ国以上に広がっています。また、2024年1月に発生した能登半島地震の被災地においても池などの水から生活用水や飲料水を製造するなど活躍しました。
「nano tech 2025」でPFAS(有機フッ素化合物)フリー技術の開発「GX賞」を受賞
GX賞の受賞式にて。左は「nano tech」実行委員長の川合教授
東レ(株)のPFASフリー技術の開発が「nano tech 2025」(第24回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議)で「GX(グリーントランスフォーメーション)賞」を受賞しました。「GX賞」の受賞は2023年に続いて2回目です。「イノベーション創出に向けた東レの取り組み」をメインテーマに、「環境」「半導体」「モビリティ」分野に貢献するナノテクノロジーを活用した先端材料・技術をPRした結果が評価されての受賞となりました。
「CSRロードマップ 2025」におけるCSRガイドライン7「事業を通じた社会的課題解決への貢献」の主な取り組みはこちらをご覧ください。