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世界最高分解能のデジタルX線検査用シンチレータパネルを開発
~原子力発電所・航空機部品などの品質・安全性向上に貢献~

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2023.03.09

東レ株式会社


 東レ株式会社(所在地:東京都中央区、代表取締役社長:日覺 昭廣、以下「東レ」)は、このたび、デジタル検出器システム(DDA)において、世界最高分解能1)を実現するシンチレータパネル2)を開発しました。本開発品を適用したデジタルX線検査技術により、従来困難であったJIS規格(JIS Z3110:2017)3)の最も厳しい基準を満たすことが可能となり、原子力発電所の配管検査や航空機部品検査など、高品質が要求される分野における非破壊検査機器に適用できます。2024年の実用化を目指し、研究・技術開発を推進してまいります。

 近年、医療検査をはじめとした多くの分野で適用されているX線デジタル撮像は、蛍光体を含むシンチレータパネルによりX線を可視光に変換し、その可視光をセンサーが検知することでリアルタイムに画像データを得ることができます。東レは、画素毎に隔壁を設け、蛍光体を区画することで可視光の拡がりを抑制し、非常に鮮明なX線デジタル画像を得られるセル方式シンチレータ4)技術を独自開発してきました。

 今回、ネガ型フォトリソグラフィ技術の極限追求により、厚み400μm、線幅20μmの超厚膜かつ高アスペクト隔壁を備える世界最高分解能のシンチレータパネルを開発しました。本開発品の適用により、DDAにおいて溶接継手の放射線透過試験方法のJIS規格「JIS Z3110:2017」の最も厳しい基準であるクラスBを達成しました。
 これにより、従来DDAが適用できなかったJIS規格検査におけるデジタル化を実現し、リアルタイムの欠陥検出およびAIによる欠陥検出支援など、見落としのない検査システムを可能とします。
 さらに、東レ独自の耐X線向上技術と残光制御技術を組み合わせることで、高エネルギーX線対応や長寿命化によるトータルコスト削減、高速検査や動画撮像対応が可能です。

 現在、高品質が求められる原子力発電所の配管検査や、航空機部品の製品検査等への適用検討を進めています。また、マンモグラフィによる乳がん検診に本技術を適用することで、今まで不可能であったレベルの乳がんの微小石灰化の早期発見が期待されます。
 2024年の実用化を目指し、研究・技術開発を推進してまいります。

 東レは、コア技術である「有機合成化学」、「高分子化学」、「バイオテクノロジー」、「ナノテクノロジー」を駆使し、社会を本質的に変える力のある革新的な素材の研究・技術開発を推進することで、企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」の具現化に取り組んでまいります。

<語句説明>
1) 分解能:
解像できる最小の形状及び寸法であり、どれだけ細かく見ることが出来るのかを示す指標。
2) シンチレータパネル:
X線等の放射線によって励起され、可視光を発光する蛍光体(シンチレータ)をパネル状にしたX線撮像装置の部材。酸硫化ガドリニウム、ヨウ化セシウム等が一般的に用いられる。
シンチレータパネルにより発光した可視光をセンサー画素が検知して画像データ化される。
3) JIS規格(JIS Z3110:2017):
溶接継手の放射線透過試験方法の規格。全てのクラスを達成することは困難なDDAにセル方式シンチレータを適用することで、達成が可能となった。
4) セル方式シンチレータ:
X線を可視光に変換する蛍光体が隔壁によって区画されたもの。隔壁によって可視光の拡がりが抑制されるため、非常に鮮明な画像を得ることができる。
 
検査規格 “JIS Z3110:2017”への適合試験結果
 
以 上


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