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DX活用でポリマーリサイクルの研究・技術開発を加速
-ポリマーの化学構造から成形加工性を高精度予測、シカゴ大学と共同開発-

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2023.02.16

東レ株式会社


 東レ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:日覺 昭廣、以下「東レ」)は、このたび、米国シカゴ大学de Pablo教授の研究グループ(以下、「シカゴ大学」)と共同で、ポリマーの成型加工プロセスにおいて重要な物性である粘弾性※1をポリマーの化学構造から高精度に予測できるマルチスケールシミュレーション技術※2を開発しました。本計算技術により、廃棄物の使用で大きく変動するポリマーの粘弾性を研究段階から予測できるようになり、リサイクルまで想定した製品開発までのスピードアップが期待されます。今後、本技術を当社DXに活用することで、ポリマーリサイクルの研究・技術開発を加速してまいります。

 ポリマーの粘弾性は、原料を繊維やフィルムなどに成形加工する際、サイズや性能を精密制御する上で欠かせない物性です。その一方、ポリマーをリサイクルすると、廃棄物の量や状態で原料の粘弾性が大きく変化するため、成形加工プロセスを頻繁に調整する必要があり、歩留まりが低下する課題がありました。

 そこで今回、東レはシカゴ大学と共同で、東レが長年培ってきた分子設計の計算技術※3とシカゴ大学が開発した粗視化計算技術※4を融合し、実験なしに研究段階でポリマーの化学構造から粘弾性を高精度に予測できるマルチスケールシミュレーション技術を開発しました。ポリスチレンとナイロン6で本計算技術の原理検証を行ったところ、実験から得られた粘弾性データを良好に再現できました。本計算技術により、例えば、廃棄物の種類・量・状態に対して、粘弾性を軸とした成形加工プロセス最適化を行えるようになり、歩留まりを向上させることが可能になります。

 今後、本計算技術を東レの強みである量子化学計算※5、マテリアルズインフォマティクス※6、CAE※7と融合し、基幹ポリマーに展開し、原料から製品、さらに製品廃棄物から原料までを全てデータで紐づけた、一気通貫型のデジタル製品設計体制を構築することで、めまぐるしく変化するリサイクル市場および顧客ニーズへの迅速な対応をさらに推進してまいります。

 東レは、計算要素技術を深化させ、研究・技術開発におけるDXを推進することで、企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」の具現化に取り組んでまいります。

 なお、本計算技術の予測精度と汎用性については、国際学会誌MacromoleculesとJournal of Polymer Science Bで発表しています。
 
シカゴ大学と共同開発したマルチスケールシミュレーション技術の概要
 
ポリマーリサイクル促進に向けた東レの一気通貫型デジタル製品設計体制


<語句説明>
※1  粘弾性:
液体のような粘性と固体のような弾性を両方持った性質。
※2 マルチスケールシミュレーション技術:
異なる時空間スケールを対象にしたシミュレーション技術を、計算パラメータを介してつなぎ合わせる技術。
※3 分子設計の計算技術:
原子・分子の動きや構造を物理法則に基づき数値計算で求める方法。
※4 粗視化計算技術:
分子を構成する原子をグループ化して、計算負荷を軽減する方法。
※5 量子化学計算:
原子や分子の構造や性質を電子状態から解析する手法。
※6 マテリアルズインフォマティクス:
統計分析やAIを活用したインフォマティクス(情報科学)の手法により、材料開発を高効率化する取り組みのこと。
※7 CAE:
Computer Aided Engineeringの略称。工業製品の設計・開発工程においてその作業を支援するコンピュータシステム、あるいはそのツールのこと。
 
以 上