パワー半導体向け高放熱接着材料の実用化に向けた共同研究について

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2022.09.21

Institute of Microelectronics, Agency for Science, Technology and Research
東レ株式会社


 シンガポール科学技術研究庁A*STARの先端的半導体研究機関であるInstitute of Microelectronics(所在地:シンガポール、エグゼクティブ・ディレクター:Terence Gan氏、以下「IME」)と、東レ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:日覺 昭廣、以下「東レ」)は、SiCパワー半導体※1向け高放熱接着材料の実用化に向けた共同研究を開始しました。

 SiCパワー半導体は、省エネルギー・カーボンニュートラルの観点から、車載用途をはじめ、スマートグリッドやデータセンターなどへの拡大が期待されています。特に、さらなる省エネルギー化の観点から、車載向けへより広く適用が開始されています。従来のSi対比、SiCは耐熱性に優れているため、発生した熱を効率よく放熱することで大幅な性能向上につながります。本共同研究では、IMEの設計・試作・評価技術と、東レの材料・プロセス技術を融合することで、半導体の安全性や品質・信頼性に寄与する高放熱接着材料の貼付けプロセスの簡便性と信頼性の向上に取り組み、2025年の実用化を目指します。IMEと東レは、SiCデバイスメーカーへトータルソルーションを提供し、高効率なSiCパワー半導体の普及に貢献してまいります。
 東レは、本共同研究を円滑に進めるために、シンガポールに6月に開所した研究センター「東レシンガポール研究センター(英文名:Toray Singapore Research Center(略称TSRC))」から支援を実施します。

 東レは、ポリイミド系耐熱樹脂に独自の分子設計技術を駆使したエレクトロコーティング剤の「Semicofine®」や「Photoneece®」、半導体・電子部品向け接着シートの「FALDA®」を展開しており、高い信頼性から、これまで半導体や電子部品、ディスプレイ向けに広く採用されています。2016年よりIMEの先端半導体パッケージに関する国際コンソーシアムに複数参画し、共同研究を行うことで連携を深化させ、成果を挙げてきました。

 IMEと東レは、これまでにFALDA®のラインナップである高放熱接着シートを用いた新規冷却型SiCパワー半導体モジュールの開発を共同で進めてきました。一般的なグリース・半田を用いる放熱接着部材では、冷却器との接触熱抵抗が高く十分に冷却できない為、半導体が故障するという課題がありました。そこで、東レ素材の適用によって本課題を解決し、接触熱抵抗が極めて低い放熱接着シートを用いた新規SiCパワー半導体モジュールの試作に初めて成功しました。高温での耐久性試験※2では、非常に高い駆動を確認しています。

 本共同研究では今後、高放熱接着シートの貼付けプロセスの簡便性とさらなる信頼性の向上を目指したデバイス試作・評価を進め、実用化に向けて取り組みを推進してまいります。
 
<新規冷却型SiCパワー半導体モジュール(左:上面、右:側面)>

 A*STARのマイクロエレクトロニクス研究所エグゼクティブ・ディレクターであるTerence Gan氏は、次のようにコメントしています。「東レと提携し、SiCパワー半導体の技術革新に拍車をかけられるのは喜ばしいことです。両社の能力を補完しあうことで、新しい放熱ソリューションの共同開発が可能になります。また、東レのシンガポールにおける新研究センターは、この地域におけるより強力な研究開発エコシステムの構築に貢献することでしょう」

 東レの研究本部の執行役員である井口雄一朗は、次のようにコメントしています。「当社は、以前からIME社のSiCパワー半導体の設計・評価技術を高く評価しています。このような官民一体の研究開発プロジェクトで、シンガポールの政府系機関と協力できることを光栄に思います。本連携によって、次世代放熱技術の実用化に向けた課題抽出・対策が加速され、最終顧客採用に向けた放熱ソリューションとなり、エネルギーの高効率化、持続可能な社会となることを期待いたします。」

Institute of Microelectronics(IME)について
 Institute of Microelectronics(IME)は、1991年に設立されたA*STAR(シンガポール科学技術研究庁)傘下の研究機関です。世界の半導体産業に対して影響力のある研究開発を行うことに重点を置き、ダイナミックな半導体エコシステムの実現のために、次世代技術の共同開発・技術革新を行うことを役割としています。最先端のインフラと高度なスキルを持つ人材により、戦略的で革新的な技術開発を行います。主な研究分野は、アドバンスト・パッケージ、センサ&アクチュエーター、ミリ波、ワイドバンドギャップ技術です。
IMEの詳細については、ウェブサイト(https://www.a-star.edu.sg/ime)をご覧ください。 

A*STAR(シンガポール科学技術研究庁)について
 A*STAR(シンガポール科学技術研究庁)は、シンガポールの公的な主要研究開発機関です。オープン・イノベーションを通じて、官民双方のパートナーと協力し、経済および社会に貢献しています。A*STARは、科学技術機関として、学術界と産業界の橋渡しをしています。研究活動によりシンガポールでの経済成長と雇用を創出すると共に、ヘルスケア、都市居住、および持続可能性の社会的成果を向上させることで、生活を豊かにします。 
 A*STARは、幅広い研究コミュニティと産業界に向けて、科学的才能に優れた人材やリーダーを育成する上で重要な役割を果たしています。A*STARの研究開発活動は、生物医科学から物理科学、工学まで幅広く、主にバイオポリスとフュージョノポリスに研究拠点を置いています。
最新情報については、ウェブサイト(https://www.a-star.edu.sg)をご覧ください。


【用語説明】
※1 SiC(炭化ケイ素)パワー半導体:電気エネルギーの制御や供給に用いられるシリコンに代わる次世代の半導体素子。
※2耐久性試験:パワー半導体の熱疲労による接合信頼性の寿命推定を目的とした評価試験。モジュールに搭載したチップへ電力をOn/Offする際の発熱/冷却によって起きる熱応力に因って、線膨張係数の違う各材料間で剥離や破壊などの不具合を発生させる。


資料ダウンロード https://www.electronics.toray/download/ma/2208p1.html

 
以 上