使い切り防護服LIVMOAⓇ高通気タイプの熱ストレス軽減効果を確認

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2021.05.31

東レ株式会社

 東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、安全性と快適性の両立を追求する使い切り防護服LIVMOA®(リブモア®)高通気タイプにおいて、信州大学繊維学部(長野県上田市)佐古井智紀准教授監修の下、生地の蒸発熱抵抗試験を実施し、熱中症対策における指標として用いられる暑さ指数(WBGT<注1>)が一般の衣服と同等の補正値=0℃に相当し、さらに、汎用的な防護服と比較し作業時に熱ストレス<注2>を軽減する効果を持つことを確認しました。

 防護服は周囲環境と身体を遮断するために用いられるため、着用することで身体が作った熱を周囲環境に逃がしにくく、熱ストレスが高まります。また、熱中症リスクが高い高温環境下では、周囲環境との温度差により身体からの放熱がしづらいため、汗の蒸発が主な身体からの放熱手段となります。
 そこで今回、生地の蒸発熱抵抗(汗の蒸発のしやすさ、熱ストレスに及ぼす影響)試験を行った結果、LIVMOA®高通気タイプのWGBT補正値が0℃に相当することを確認しました。これは、作業服など一般の衣服と比較し、防護服着用によって熱ストレスに差が生じないことを示すもので、熱中症対策の上で労働環境改善に貢献できると考えています。
 さらに、衣服内に気流が生じる状態(作業で動いているなど、静止していない状態)では、同等の粉塵防護性を有する商品と比較して通気性が高いLIVMOA®高通気タイプが熱ストレスを軽減する効果も高いことを確認しました。

LIVMOA®高通気タイプ

 東レは、中期経営課題“プロジェクト AP-G 2022"における基本戦略の一つとして「成長分野でのグローバルな拡大」を掲げ、健康長寿、人の安全に貢献する「ライフイノベーション事業拡大プロジェクト」を推進しています。
 今回の試験結果を踏まえ、夏場の暑熱対策が特に必要とされる製造業、建設業等へLIVMOA®高通気タイプを暑熱対策防護服としてご提案することで、より安全で快適な労働環境改善の実現に貢献してまいります。

今回の試験概要・結果は下記の通りです。

1.試験概要
(1)試験方法
   ①衣服内環境を模すために、肌面として環境温度と同温度に設定した発熱平板の上に濡れた生地を設置。
    その上に試料(サンプル生地)を重ねて設置し、試料面に弱い気流を当てる。
   ②試料を介して放熱した熱量(蒸発熱量)を測定し、蒸発熱抵抗を算出する。

(2)試験条件
   環境温湿度: 20℃、50%RH
   発熱平板温度:20℃
   風速:1.0m/S

(3)試験アイテム
 ①LIVMOA®高通気タイプ(LIVMOA®3000)
 ②市場に流通する代表的な防護服 他社品A(1層不織布製)
 ③市場に流通する代表的な防護服 他社品B(SMS製)
 ※「SMS」とは不織布の構造で、スパンボンド不織布(S)でメルトブロー不織布(M)を挟んだ三層構造を指す。


2.試験結果
 (1)蒸発熱抵抗について、試料と濡れた生地の間隔が0cmの場合、LIVMOA® 高通気タイプはSMS製と同等、1層不織布と比較し低い結果が 
得られた。さらに実際の防護服の着用条件に近づけるため、試料と濡れた生地の間隔を1cmとした場合、LIVMOA®高通気タイプの蒸発熱抵抗が最も低い結果となった。

(2)
LIVMOA®高通気タイプは「WBGT補正値=0℃」とされる汎用SMS品と比較し、同等以下の蒸発熱抵抗を示しており、「WBGT補正値=0℃」の衣服を構成する生地に相当する。さらに、風の有る条件下では、汎用SMS品と比較し蒸発熱抵抗が小さい。特に作業時は、動くと衣服内に気流が生じるため、LIVMOA®高通気タイプ生地を使用した防護服は、汎用SMS生地を使用した防護服より、熱ストレスを軽減する効果を期待できる。防護服着用時の熱中症リスクの低減には、防護性を満たしつつ、いかに生地の通気性を高め、汗の蒸発を促すことができるかが重要である。


※本試験は国立大学法人信州大学 繊維学部先進繊維・感性工学科 佐古井准教授の指導の下に実施した。佐古井准教授は、人体-着衣-熱環境系の相互作用の中で、温熱快適性を高め、熱中症リスクを低減することに取組んでいる。暑さ寒さの調節のための新しい衣服開発や気流制御法の提案、身体からの熱・湿気輸送現象の計測とそのための装置開発、身体の温度分布を予測するための数値人体モデルの開発などに取り組んでいる。

以上

<注1>WGBT値 (Wet-bulb Globe Temperature)
湿球黒球温度。
熱中症対策における指標として用いられ、温度、湿度、照り返しによる輻射の影響などから導き出される。
厚生労働省労働基準局が策定する「職場における熱中症予防基本対策要綱」において、労働安全環境管理における指標値として活用することが推奨されている。また着用する衣類に応じてWBGT値に補正値を加えることが求められている。

<参考> 衣類の組合せによりWBGT 値に加えるべき着衣補正値
(JIS Z 8054:2021)
 
組み合わせ
コメント
補正値
(℃- WBGT)
作業服 織物製作業服で、基準となる組合せ着衣
0
単層のSMS不織布製のつなぎ服 SMS はポリプロピレンから不織布を製造する汎用的な手法である。
0
単層のポリオレフィン不織布製のつなぎ服 ポリエチレンから特殊な方法で製造される布地
2

<注2>熱ストレス
高温による健康影響の総称。暑熱環境による熱ストレスの評価にはWBGT値が活用されている。作業場所におけるWBGT値には基準値が設定されており、WBGT値が基準値を超えるおそれがある場合には、熱中症にかかる可能性が高くなるため、WBGT値を下げるための対策を講じる必要がある。

LIVMOA®製品 ウェブサイト https://www.livmoa.toray/
 
本実験結果を含むLIVMOA®情報ファイル『現場作業の「働き方改革」とその行方』はこちらからダウンロードいただけます。