X線シンチレータパネルの耐久性を向上する新技術を開発

facebookでシェアする twitterでシェアする Linkedinでシェアする

2021.04.07

東レ株式会社

東レ株式会社(所在地:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、このたび、非破壊検査に用いるX線シンチレータパネル1)の耐久性を大幅に向上する新技術の開発に成功しました。本技術を適用したシンチレータパネルをX線検査機器に用いることで、X線検査のランニングコストを大きく低減することが可能です。現在サンプル販売を開始しており、シンチレータパネルの生産拠点である東レ滋賀事業場(滋賀県大津市)にて、2021年7月から本格生産を開始します。

 X線検査装置の検出器は、一般的にX線を可視光線に変換するシンチレータパネルと可視光線をデジタル画像に変換するフォトセンサーパネルで構成されています。従来のシンチレータパネルはX線照射により輝度劣化が進むことが知られています。特に、連続稼働や高速での検査を実施する産業用途のX線撮影装置では、X照射線によりシンチレータパネルの輝度劣化が顕著に進行するため、検出器を定期的に交換する必要があります。

 これに対して東レは、様々な角度から劣化解析を進め、X線照射によるシンチレータの輝度劣化要因を突き止めました。そして長年蓄積してきた材料設計技術や製造プロセス技術を活用し、高耐久性X線シンチレータパネルの開発に成功しました。X線照射の加速試験(社内評価)を実施した結果、従来技術によるシンチレータパネルでは輝度が30%低下するのに対し、新技術のシンチレータパネルでは約2%と、輝度劣化を10分の1以下に抑えることを確認しました。

 シンチレータパネルは医療用途で広く使われており、東レは、医療用X線シンチレータパネル製品を提供してまいりました。今回の新技術で、連続的にX線を照射する、産業用のX線撮影装置に適したシンチレータパネルを開発しました。X線による非破壊検査のランニングコストを大幅に低減することが可能なため、今後、自動車部品、航空機部品、電子部品等に加えて、各種電池部材や水素タンクなどのエネルギー分野、食品分野など、非破壊検査による異物やボイドなどに対する高い品質管理が必要な幅広い産業分野への展開を進めてまいります。
 東レは、今回の新技術を当社独自のセル方式X線シンチレータパネル2)による高精細技術や、画像のブレを抑制する高速化技術と組み合わせた製品開発も推進しています。市場ニーズに応え、高性能でありながら、より長寿命で、高精度のX線検出器の提供を目指し、脱炭素社会に向けた新エネルギー関連産業など、品質要求が高い分野へのX線撮影用途拡大に貢献してまいります。

 東レは、企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」を実現していくため、社会を本質的に変える革新素材の創出に取り組み続けてまいります。

以上

【ご参考】
初期輝度測定後、60kV、1.1MGy (平均的線量率で2年稼働想定) をシンチレータパネルに照射し、その後の輝度変化を確認

<語句説明>
1)X線シンチレータパネル:X線よって励起され、蛍光(シンチレーション)を発光する物質であるシンチレータをパネル状にしたX線撮影装置の部材。

2) セル方式X線シンチレータパネル:X線を可視光に変換するシンチレータ物質が隔壁によって区画されたもの。隔壁によって可視光の拡がりが抑制されるため、非常に鮮明なX線画像を得ることができる。