高流動性と高導電性を両立した極薄グラフェン分散液を創出

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2021.03.08

東レ株式会社

東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、このたび、高濃度でありながら流動性に優れた極薄グラフェン1)分散液を開発しました。本開発品は、グラフェンが有する高い導電性などの優れた特長を発揮しやすいことから、電池材料、配線材料、塗料など各種用途への展開が可能です。早期の実用化を目指し、研究・技術開発を推進してまいります。

 グラフェンは、炭素からなるナノサイズの極薄シート状の二次元材料で、均一に配列しやすい性質を持ち、優れた導電性・熱伝導性・バリア性を有する次世代機能性材料です。グラフェンを塗布したり、他材料と混合したりすることで、新たな機能を付与することができます。
東レはこれまで、安価な黒鉛原料から極めて薄い高品質グラフェンを作製する技術を開発しています。グラフェンは、薄いほど塗布した時の被覆性や他材料との混合性が良くなり、特長をより強く発揮することができますが、薄いほど凝集しやすく、高濃度にすると粘土状になり流動性が悪化してしまいます。粘土状では塗布や混合が困難なため、希釈して低濃度溶液で用いる必要があり、グラフェン本来の特長を発揮しにくい課題がありました。

 東レは、グラフェン同士の相互作用による凝集を抑えるため、独自の高分子材料を添加して粘度を自在に制御する分散技術を開発し、高濃度の極薄グラフェン分散液の流動性を高めることに成功しました(図)。本開発品は高濃度でも流動性が良好であることから取扱性に優れ、希釈することなく塗布できるので高い導電性などの優れた特長を発揮しやすくなります。また、分散性が高く攪拌しやすいことから他材料と混合が容易です。

 例えば本開発品をリチウムイオン二次電池用導電材料に用いると、正極材料と混合しやすく、正極の間にグラフェンが入り込み、導電性が向上します。これにより電池を繰り返し充放電する際に、導電経路の劣化による電池容量低下が抑制され、電池の寿命が長くなります。電気自動車向け高性能電池の導電助剤には従来カーボンナノチューブ(CNT)が使用されていますが、当社電池評価において、本開発品を用いることで、CNTより電池寿命が1.5倍向上することを確認しました。
 さらに、本開発品は塗布し乾燥する時、グラフェンが積層することで緻密膜を形成します。この緻密膜は金属の様に錆びることのない、耐久性に優れた導電配線材料として、プリンタブルエレクトロニクス用配線への応用が期待できます。また、防錆塗料に混合すれば錆の原因となる水や酸素の透過を遮断し耐久性を向上できるなど、幅広い用途への展開が可能です。

 東レは今後も、社会を本質的に変える力のある革新的な素材の研究・技術開発を推進することで、企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」の具現化に取り組んでまいります。

以上

【用語説明】
1)グラフェン:炭素原子が蜂の巣状に結合したシート状の物質であり、シートが複数層積層した物質もグラフェンと呼ばれる。当社開発のグラフェンは10層程度に積層したグラフェンシートである。

【ご参考】