省エネ高ウイルス除去UF膜を創出

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2021.02.25

東レ株式会社

東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、このたび、水処理に用いられるPVDF(ポリフッ化ビニリデン)製限外ろ過(Ultrafiltration : UF)膜について、高ウイルス除去性と高透水性を兼ね備えた新たなUF膜を開発しました。ウイルスを効果的に除去し、かつ透水性が低下しないため、食品・飲料から下廃水再利用など幅広い分野の水処理において、安全・安心な処理水を省エネルギー、低コストで提供することが期待できます。今後、実用化を目指して各用途での実証を加速します。

 東レは、これまで高強度と高透水性を追求したPVDF製UF膜を水処理用途に展開しています。近年、処理水の安全性、低コストの観点から、UF膜には病原性ウイルスの除去性向上と高透水性の両立が求められています。しかし、ウイルス除去可能な範囲まで孔径を小さくすると、UF膜の抵抗が大きくなり透水性が低下するため、高ウイルス除去性と高透水性の両立は困難でした。

 東レは、この課題を解決すべく、十分な透水性を保持しながら、除去性を向上させる技術を深化させ、高ウイルス除去性と高透水性を兼ね備えた新規PVDF中空糸UF膜の創出に成功しました。本技術のポイントは下記のとおりです。

1.相分離制御技術を用いた均一緻密構造の設計
 東レは、ウイルスが通り抜け易い100nm程度以上の粗大空隙の存在に着目し、長年培ってきた相分離制御技術を用いて、孔径分布の均一な薄層を重ねることで、粗大空隙を極限まで抑制した均一緻密構造を創出しました。これにより、従来の緻密構造に比べて薄層にしてもウイルス除去性が損なわれず、直径約27nmのウイルス(大腸菌ファージMS21))を用いたろ過評価にて除去率99.99%を実現しました。

2.革新中空糸膜プロセス技術による高ウイルス除去性と高透水性の両立
 緻密構造層が厚いと抵抗が大きくなり、水が流れにくくなってしまいます。そこで、これまで水処理および人工腎臓用途の中空糸膜で培ってきた独自の中空糸膜プロセス技術を駆使して、薄層化した均一緻密構造を設けるとともに、均一緻密構造以外を高空隙率化させることで水が流れる流路を多く確保し、膜全体の透水性を高めることで、高ウイルス除去性と高透水性を両立できることを見出しました(図1、図2)。

 東レは、「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」や、長期経営ビジョン“TORAY VISION 2030”の中で、誰もが安全な水・空気を利用し、自然環境が回復した世界を東レグループの革新技術・先端材料によって実現すると表明しています。企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」のもと、安全・安心な循環型社会の実現を見据え、本技術のスケールアップ、社会実装、長期性能評価を進め、食品・飲料から下廃水再利用など幅広い用途への適用に向けた検討を加速してまいります。

以上

【ご参考図】

※大腸菌ファージMS2でのろ過評価

【用語説明】
1)大腸菌ファージMS2
  大腸菌のみに感染する直径約27nmのウイルス。