世界初、100%VOCフリー水なしEBオフセット印刷技術の実証に成功

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2020.09.28

東レ株式会社

東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、この度、欧州有数の食品軟包装印刷会社であるスペインのSP Group社と世界で初めて軟包装印刷分野での100%VOC1)フリー水なしEB(電子線)オフセット印刷2)技術の実証に成功しました。本技術はシャープで高精細な印刷品質でありながら印刷時の環境負荷低減に大きく貢献します。今後、更に実証を進め、2020年度内の実用化を目指して参ります。

軟包装材は、フィルムを使った包装材で、軽量性、柔軟性、加工のしやすさ、透明性、バリア性などの特長から、食品やシャンプー・洗剤の詰め替え品用など、生活に身近な幅広い商品の包装に使われています。軟包装用印刷には、アジアを中心にグラビア(凹版)印刷3)方式が採用されていますが、有機溶剤を含むインキを大量に使うことから、PM2.54)による大気汚染、および印刷オペレーターへの健康被害の原因となるVOCを多く排出することが問題となっており、欧州でもこれらの問題に関心が高まっています。
本技術を適用したレトルト包装サンプル
本技術を適用したレトルト包装サンプル

東レ水なし平版®は、印刷時にVOCを含む湿し水を用いないことや、製版時にアルカリ現像廃液を出さない等の特長から環境に配慮した製品として広く認知され、1979年の販売開始以来、世界52ヶ国、1,500社以上の印刷会社で使用されています。
東レは2015年から100%VOCフリー印刷技術の開発を開始し、2017年にはVOCを発生する有機溶剤を含まない液体で印刷機のユニットを洗浄することができる水溶性UVインキを開発してきました。
そして今回、SP Group社と世界で初めて軟包装印刷分野での100%VOCフリー水なしEBオフセット印刷技術を使用したレトルト食品包装印刷の実証に成功しました。東レ水なし平版®にSP Group社の協力を得て今回開発した水溶性EBインキを適用し、EB硬化プロセスを組み合わせた本技術は、インキ溶剤乾燥、有機溶剤によるインキ洗浄が不要となり、すべての印刷工程において100%VOCフリーを達成すると共に、各国の食品包装規制にも準拠しています。

東レは「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」や、今年5月に発表した長期経営ビジョン“TORAY VISION 2030”の中で、事業活動を通じて地球環境問題や資源・エネルギー問題の解決に貢献することを表明しています。東レは今後も、先端素材とプロセスの開発を継続し、企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」の具現化に取り組んで参ります。

以上

<語句説明>
1) VOC:
揮発性有機化合物のことで、印刷工程では、有機溶剤を含むインキや薬液を使用することでVOCが発生する。VOCは、光化学オキシダントや浮遊粒子状物質の主原因となるため、国内では大気汚染防止法によって規制されており、発生するVOCは燃焼処理や吸着処理などの排気処理が施されている。近年では、VOC発生源付近での労働環境改善、防災対策、VOC処理のエネルギーコスト低減(CO2削減)の必要性が高まっており、VOCそのものを排出しない印刷システムが望まれている。
2) オフセット印刷:
版は板状の金属プレートで、表面の感熱層をレーザー露光して絵柄を作る。版の耐久性はグラビア版に及ばないが版コストが安く、短納期で用意できる。写真や色などの再現性に優れており、商業印刷に多く用いられている。インキ硬化方式として、熱乾燥、UV(紫外線)硬化、EB(電子線)硬化等の方式がある。
3) グラビア(凹版)印刷:
版は円筒形の金属シリンダで、表面に直接絵柄を凹状に刻んでクロムメッキを施す。製版のコストは高いが、耐久性に優れており、フィルムロールの連続印刷など、大量印刷に適している。凹部の深さや形状に融通が利くので濃淡表現に優れる。インキ成分は顔料と樹脂と有機溶剤であり、印刷後に有機溶剤を乾燥させて被印刷物に絵柄を定着させる。
4) PM2.5:
微小粒子状物質。主に人の呼吸器系に沈着して健康に影響を及ぼすため、大気中に放出されると環境問題を引き起こす。
<ご参考>
SP Group社
本社所在地
設立
代表者
事業内容
: スペイン コルドバ市
: 1985年
: (CEO) Francisco Bernal
: 軟包装包材の製造・販売
SP Group社
【資料ダウンロード】
https://go.mktg.toray/t010-WC-202009XX-1353-01-DL-jp.html

以 上