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航空機向け真空圧成形プリプレグを開発 -オートクレーブを使用しない実物大部材成形で高品質を実証-

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2019.04.18

東レ株式会社

 東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺 昭廣、以下「東レ」)は、中間素材として、オートクレーブを使用せずとも高品位で力学特性に優れた炭素繊維強化プラスチック(以下「CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)」)成形体を得ることが可能な新規航空機一次構造部材向けプリプレグを開発しました。今後、この新技術を深化させることで、航空機、自動車、一般産業用途などの様々な用途で、製造コストを低減した高性能CFRP部材の需要拡大を推進してまいります。

 一般的に、民間航空機の主翼や胴体に適用されているCFRP製一次構造部材は、炭素繊維にあらかじめエポキシ樹脂を含浸させたプリプレグを多数枚金型の上に積層し、高温高圧釜(オートクレーブ)の中に入れ、高い圧力を加えながら加熱し、樹脂を硬化するオートクレーブ法によって成形されます。オートクレーブ法は高性能かつ高品位なCFRP部材を安定して成形できるという利点を有する反面、初期の設備投資額が数十億円以上と高く、CFRP部材の製造コスト増の一因となっていました。

 東レはこのオートクレーブ法に代わる成形技術として、昨年、真空吸引による大気圧を利用した加圧のみで、CFRPを製造する真空圧成形技術を開発しましたが、この度、この成形技術に適したプリプレグを開発しました。新たなプリプレグは新規マトリックス樹脂の開発などにより、従来のプリプレグを用いてオートクレーブ成形した航空機一次構造部材と同等の衝撃後圧縮強度、引張強度などの性能を有しています。

 このプリプレグを用いて成形した、実在する航空機尾翼の一部を模擬した2m級部材の成形試験の結果は、その寸法精度や内部品位などについて、従来のプリプレグに比べ発生するボイドが極めて少なく、航空機部材の厳しい品質管理基準をクリアするレベルのCFRP部材であることを確認しました。

 なお、本成果の一部は、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「革新的構造材料」(管理法人:科学技術振興機構)により得られたものです。

 東レは、中期経営課題“プロジェクト AP-G 2019”において、炭素繊維複合材料事業の重要課題として「成長分野での事業拡大、新製品開発による新規需要の創出」を掲げています。今後も、「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」の企業理念の下、CFRPの一層の高性能化やプロセス加工性改善を通じて新製品の開発に取り組んでまいります。
以 上