造水効率を最大2倍に高めた革新RO膜エレメントを開発

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2019.04.17

東レ株式会社

 東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、このたび、造水効率※1を飛躍的に高めた新たな小型RO膜エレメントを創出しました。RO膜エレメントに通す供給水※2と透過水※3が流れる際の抵抗を極限まで抑えつつ、供給水流速を高める技術によって、造水効率の良い省エネ運転が可能となります。今後、スケールアップに向けたグローバル実証を進め、産業用大型RO膜エレメントへの展開を目指してまいります。
 RO膜エレメントは、様々な水の浄化に利用されていますが、世界中で年々深刻化していく水問題に対応するためには、さらに造水性能を高める技術開発が求められています。
RO膜エレメントは、RO膜を両側から挟む形で配置される、透過側流路材および供給側流路材を主要部材として構成されています。造水効率を高めるためには、透過側流路の流動抵抗※4を低くすることと、RO膜表面のイオン濃度を低減することが必要です。
 本技術のポイントは下記のとおりです。

1.高分子精密加工技術を用いた新たな透過側流路材の設計
 今回開発した流路材は、東レのもつ流体解析と構造解析技術、および長年培ってきた繊維加工技術を応用したものです。溶融樹脂をストライプ状に微細精密成形することで、透過側流路材として必要な耐圧性を維持しつつ、流路を拡大させることに成功しました。本技術により、透過側流動抵抗の従来比50%低減を実現しました(図1)。
2.流体解析を駆使した新たな供給側流路材の設計
 造水効率を高めてRO膜エレメントを運転すると(図2)、RO膜表面でのイオン濃度が高まり分離性能が低下していきます。東レは、流体解析を駆使した結果、供給側流路材を薄型化し交点数を減少させることで、供給水の流速を2倍以上に高め、RO膜表面のイオン濃度を従来比30%以上低減できる技術を開発しました(図3)。
 東レは、上記2点の新規技術を組み合わせることによって、従来の大小各種のRO膜エレメントと比べ、造水効率を最大2倍に向上させることに成功しました(図4)。

 東レは、2018年7月に発表した「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」の中で、水処理膜技術を活かし、世界が直面する水不足問題の解消、環境負荷の低減へ貢献していくことを自らの使命として表明しています。
 なお、浄水器用RO製品の見本市である「2019 WQA CONVENTION & EXPOSITION」(米国Las Vegas、2019年4月23日~25日開催)に、本技術を適用したRO膜エレメントを出展する予定です。
以 上
【参考図】



【用語説明】
※1) 造水効率
 RO膜エレメントへの供給水量を100とした場合の透過水量。
※2)3) 供給水と透過水
 RO膜による処理工程において、エレメントに入れる水を供給水と呼び、膜透過後の水を透過水と区分して呼ぶ。
※4) 流動抵抗
 水がRO膜エレメント内の流路を流れた際に、流路材との接触により生じる摩擦損失。流動抵抗を低減するほど流水量を増加させることができ、処理量アップが可能となる。