PVDF製限外ろ過(UF)膜の微細分離・高透水化技術を開発

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2019.02.25

東レ株式会社

 東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、この度、様々な分野で水処理に用いられるPVDF(ポリフッ化ビニリデン)製限外ろ過(Ultrafiltration : UF)膜について、微細分離性と高透水性を兼ね備えた新たなUF膜を開発しました。微少な物質を効果的に分離し、かつ透水性が低下しないため、上水道、下水・産業廃水処理から食品・飲料、医薬医療用途など幅広い分野の水処理で省エネルギー、低コスト化が期待できます。今後、実用化を目指して各用途での実証を加速致します。

 東レは、これまで高強度と高透水性を追求したPVDF製UF膜トレフィル®を水処理用途に展開しています。省エネルギー、低コストの観点から、微細分離性・高透水性への期待がますます高まっているものの、孔径が微細になるほど、UF膜構造内部での抵抗が大きくなり、透水性が低下するため、「微細分離性」と「高透水性」の両立が困難であるのが一般的です。
 東レは、この課題を解決すべく、十分な透水性を保持しながら、孔径制御を高度化する技術を深化させ、微細分離性と高透水性を兼ね備えた新規PVDF中空糸UF膜の創出に成功しました。本技術のポイントは下記のとおりです。

1.計算化学によるUF膜構造の極限追求
 東レは、長年培ってきた計算化学による相分離シミュレーションを用いて、微細分離に必要な膜表層の孔径微細化と、高透水性に必要な膜内部の孔径粗大化の極限追求に取り組みました。大型放射光施設“SPring-8”における相分離過程のin-situ観察を通じて、膜表層の相分離速度を速くしつつ成長速度を抑制し、膜内部の相分離速度を遅くすることで両層を実現できることを見出しました。

2.革新中空糸膜プロセス技術による微細分離性と高透水性の実現
 水処理および人工腎臓用途中空糸膜で培ってきた独自の中空糸膜プロセス技術を駆使し、膜表層と膜内部の相分離速度、成長速度を制御しました。これにより、これまでの孔径-透水性のトレードオフを脱却し、ナノメートルサイズの微細孔径としつつ、従来比6倍の高透水性を発現させることに成功しました(図1)。

 東レは、2018年7月に発表した「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」のなかで、世界が直面する「発展」と「持続可能性」を両立させるために、革新技術・先端材料の提供によって、本質的なソリューションを提供していくことを自らの使命として表明しています。
 「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」との企業理念の下、今後も基礎研究に基づいた性能の極限追求を継続するとともに、微細分離性と高透水性を兼ね備えた新規PVDF中空糸UF膜の各用途における実証を進めてまいります。

以  上

【ご参考図】

【技術用語説明】
相分離過程のin-situ観察:
相分離が生じていく過程を、その場で追跡する観察手法。