• HOME
  • ニュースルーム
  • ナノ積層技術の深化で革新的な遮熱フィルムを創出 -高透明性と世界最高レベルの遮熱性を両立-

ナノ積層技術の深化で革新的な遮熱フィルムを創出 -高透明性と世界最高レベルの遮熱性を両立-

facebookでシェアする twitterでシェアする Linkedinでシェアする

2019.01.15

東レ株式会社

 東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣 、以下「東レ」)は、この度、ガラス並みの透明性を維持しつつ、温度上昇の原因となる太陽からの赤外線に対する世界最高レベルの遮熱性を備えた革新的な遮熱フィルムを開発しました。これは、東レ独自のナノ積層技術をさらに深化させ、革新的な層配列デザインにより達成したものです。今後、さらなる遮熱性能の向上を図るとともに、3年後の実用化を目指して開発を進めてまいります。

 地球温暖化を背景に、省エネ、CO2削減が求められており、その一つとして建物での冷房負荷の削減に対するニーズが高まってきています。冷房負荷を抑制する有効な対策としては、複層ガラスや遮熱フィルムといった太陽からの赤外線をカットするさまざまな遮熱部材が販売されています。

 東レが2008年に上市したナノ積層フィルムPICASUS®1)(読み:ピカサス)は、当社独自積層技術の極限追求により、ナノスケールの厚みの層を数百~千層重ねたフィルムで、その層の厚みやその配列デザインにより特定の波長の光を反射させる機能を備えています。従来のナノ積層技術では、赤外線の反射性能を向上させようとすると、フィルムに色づきが発生するという課題がありましたが、今回開発した本技術はすべてのナノ積層の1層ごとに高精度な層厚み制御を行い、かつ革新的な層配列デザインを導入することで、従来のナノ積層技術では困難であった高い透明性と遮熱性を両立させるものです。

 今回開発した、高い透明性と遮熱性を兼ね備えた新たな遮熱フィルムは、共同研究先の国立研究開発法人 産業技術総合研究所中部センターにある環境調和実験棟において実施した遮熱試験においても、冷房負荷の中から日射に起因する成分を取り出す新しい測定手法を用いることで、 通常のクリアガラス対比-39%、市販の高性能・透明遮熱フィルム対比-11%の冷房負荷削減効果を示すことが実証されています。

 本遮熱フィルムの技術ポイントは下記の通りです。

1.革新的な層配列デザイン
 従来のナノ積層フィルムで用いられる層配列デザインでは、赤外線の反射性能を向上させようとすると、原理上色づきの原因となる可視光の反射も付随して発生します。そこで、革新的な層配列デザインを導入し、可視光の反射を抑制しつつ赤外線カット性能のみを向上させ、世界最高レベルの遮熱性を達成しています。

2.フィルムの高精度積層技術
 上述の革新的な層厚みデザインでは、数百層もの層厚みを1層ごとにわずか1nm2)単位で制御する必要があります。そこで、東レ独自の流動シミュレーション技術に基づく装置設計と、超高精度な製膜プロセスを組み合わせることで、たとえば、1nmの層厚みでも、フィルム全幅にわたって均一に制御することを可能としました。これにより、オフィスビルの窓ガラスにも対応できる大面積の遮熱フィルムも提供することができます。

 なお、この開発には、経済産業省、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)より受けた未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発(受託者:TherMAT・未利用熱エネルギー革新的活用技術研究組合)ならびにNEDOより受けた戦略的省エネルギー技術革新プログラム(助成期間:2017年6月~)で得られた成果が含まれています。

 東レは今後も、「有機合成化学」、「高分子化学」、「バイオテクノロジー」そして「ナノテクノロジー」という東レのコア技術を駆使して、社会を本質的に変える力のある革新的な素材の研究・技術開発を推進することで、創業以来の東レグループ企業理念である「私たちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」の具現化に取り組んで参ります。

<語句の説明>

1)PICASUS®
  東レ独自のナノ積層技術を駆使したポリエステルフィルムの総称。可視~近赤外線までの光を一様に干渉反射させた金属光沢調フィルムから、ディスプレイから発するブルーライトのみを色づきなくカットできるフィルム、特定の色の光のみを選択的に反射できるダイクロイック調フィルムなど、様々なラインナップがある。

2)ナノメートル(nm)
  10-9m(髪の毛の直径が10~100μmとすると、その1万~10万分の1)

以 上