世界最高レベルの水素精製高分子分離膜を創出

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2018.10.29

東レ株式会社

 東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、このたび、水素を含む混合ガスから、水素を選択的にかつ高透過可能な高分子分離膜の創出に成功しました。今後、水素社会実現に向け、スケールアップ・社会実装を進めてまいります。

 現在、新エネルギーの活用として、水素の利用拡大が注目されています。水素の製造量は、2030年には3億トンにまで急増すると見られ、省エネ・高効率な水素精製が期待できる膜分離法が注目されています。

 一般的な膜法によるガスの分離は、高温高圧下で行う必要があり、過酷な分離条件下でも優れた分離特性を発揮させるためには、分離膜を構成する多孔性基材の耐熱化と耐圧化が必要です。また、供給ガスから水素を高透過かつ高選択に分離するためには、分離機能層の精密孔径制御が重要であり、現状の水素精製高分子分離膜では、分離工程における耐熱性・耐圧性および水素の透過性・選択性の両立に課題がありました。
 東レは、これらの課題を解決すべく、耐熱性、耐圧性、高水素選択分離性を有する新規分離膜の創出に成功しました。本技術のポイントは下記のとおりです。

1.耐熱・耐圧多孔質基材設計
 東レは、長年培ってきた耐熱高分子材料と分離膜製膜技術を融合させた多孔質基材設計に取り組み、非溶媒誘起相分離法※により、200℃以上の高いガラス転移温度を有するポリマーの相分離速度を高度に制御することで、均一多孔性基材を実現しました。本技術によりガス透過性を十分に確保しつつ、耐熱性と耐圧性を大幅に向上させました。

2.精密孔径制御技術による水素高選択・透過分離膜設計
 逆浸透(RO)膜で培った界面重縮合技術をベースとし、ガス分離に適した孔構造制御と水素分子に親和性を有する分子骨格導入技術を駆使することで、水素分子(0.29nm)を選択的に透過させるために適した平均孔径を有する新規分離膜設計を行いました。新規分離膜は、従来の高分子膜性能ラインを大幅に上回る水素透過性、選択分離性を有することを確認しました(図1)。

 東レは、7月に発表した「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」のなかで、世界が直面する「発展」と「持続可能性」を両立させるために、革新技術・先端材料の提供によって、本質的なソリューションを提供していくことを自らの使命として表明しています。
 「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」との企業理念の下、水素社会の実現を見据え、世界各地への社会実装を目指して、革新的ガス分離膜研究を推進してまいります。

以 上
【参考図】

【技術用語説明】
非溶媒誘起相分離(Non-solvent Induced Phase Separation):
ポリマー溶液を非溶媒に接触させ、相分離を起こす。