東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺 昭廣、以下「東レ」)は、特発性肺線維症(Idiopathic Pulmonary Fibrosis、以下「IPF」)(*1)を対象として株式会社ボナック(本社:福岡県久留米市、社長:林 宏剛、以下「ボナック」)と共同開発を進めてきた核酸医薬品「TRK-250(東レ開発コード)/BNC-1021(ボナック開発コード)」(以下「本剤」)について、本年7月に米国FDA(*2)からIPF患者を対象とした米国での第I相臨床試験(*3)実施の許可を取得しました。今回の実施許可を受け、東レは本剤の第I相試験を速やかに開始します。
IPF は、不可逆的に肺の線維化が進行し、予測できない多様な臨床経過をたどる予後不良の疾患です。そのため、医療現場における治療の選択肢の幅を広げるためにも、新たな作用機序を有する新薬の開発が求められています。
東レはこれまでに、バイオ医薬品のフエロン®、低分子医薬品(*4)のドルナー®やレミッチ®を上市し、現在では抗体医薬品(*5)の開発に取り組むなど、疾患と治療標的分子に適した各種医薬品の創薬を進めてきましたが、このたび、ボナックと共同開発を進めていた本剤の臨床試験を開始することとしました。
核酸医薬品はDNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボ核酸)の働きを利用して、病気を引き起こす遺伝子やタンパク質に作用するタイプの医薬品です。副作用を低減した新たな治療薬となる可能性があることから、低分子医薬品、抗体医薬品などのバイオ医薬品に続く、 次世代の医薬品として近年注目されています。
本剤は、肺の線維化に関与する主要な増殖因子であるTGF-β1(*6)タンパク質の発現を遺伝子レベルで選択的に阻害することにより、線維化の進行を阻止することを狙いとする核酸医薬品です。また本剤は、ボナック独自の核酸医薬技術を採用したユニークな構造を有する一本鎖長鎖核酸とすることで、従来の核酸医薬の課題である体内での安定性を向上させ、さらに、吸入剤として肺に直接投与することにより、効率的に標的組織へ到達させることが期待される新しいコンセプトの医薬品です。
東レは、本剤を創出したボナックと2015年12月にライセンス契約を締結し、日本におけるIPF患者を対象とした本剤の独占的開発権、販売権、製造権(原薬を除く)を取得しました。東レとボナックはこれまで本剤の非臨床試験および吸入剤開発に関する課題解決・進捗管理を共同で行い、このたびIPF患者を対象とした米国での第I相臨床試験を開始することになりました。
東レは、AMEDの支援事業(*7)により開発費用の一部支援を受けながら第Ⅰ相臨床試験を推進し、IPF患者を対象として吸入投与にて安全性・忍容性・薬物動態の確認を行います。また、動物モデルを用いた非臨床試験において確認された本剤の肺の線維化進行抑制について、第Ⅱ相臨床試験にて確認を行うことを目標とします。さらに、東レ及びボナックは、現在、核酸医薬の合成法についても、両社の経験と技術を生かし、革新的製造技術の開発にも共同で取り組み、段階的に臨床試験を進めて2020年代後半の上市を目指します。
以 上