東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、このたび、合成繊維の紡糸技術を応用し、海島複合繊維※1の表面形態や化学構造を制御することで、細胞やタンパク質等のバイオターゲット※2の選択的除去を可能にし、これまでの繊維吸着体に比べて性能と安全性の向上が期待される、新規の血液浄化用繊維吸着体を創出しました。今後、2019年度中の臨床試験開始を目標に、研究を進めてまいります。
今回開発した繊維吸着体は、健康維持に必要な細胞やタンパク質は除去せず、炎症に関与する細胞(活性化白血球※3)、ならびにタンパク質(サイトカイン※4)のみ選択的に除去することができます。除去する細胞やタンパク質の種類は、繊維の表面形態を変化させたり化学修飾を施すことで、それぞれ独立して制御することが可能です。当社独自の革新紡糸技術"NANODESIGN®"を用いることにより、構造変化や化学修飾を受けやすい反応性の高いポリマーと、繊維の強度を維持する安定ポリマーとの配置をナノスケールで制御し、機能付与と強度の両立に成功しました。
東レはこれまで、エンドトキシン※5除去向け血液浄化用浄化器"トレミキシン®"を世界に先駆けて開発し、1994年に敗血症性ショックの症例に対して保険適用を受け、救急・救命センター、ICU(Intensive Care Unit: 集中治療室)を中心に販売してまいりました。"トレミキシン®"は、エンドトキシンという細菌毒素を除去する吸着体を用いますが、「エンドトキシンだけではなく、より多くの病因物質を1本のカラムで同時除去したい」という臨床現場からのニーズを多くいただき、20年以上の研究を重ね、本吸着体の創出を世界で初めて実現させました。
本吸着体をカラムに充填し血液循環させることにより、例えば、敗血症や急性肺障害、がん治療に伴う重篤な炎症反応等を引き起こす病因物質のみを除去し、有用なタンパク質等には反応しないという高い選択的吸着性能の効果が期待できます。今後、国内外の大学と連携した動物実験により更なる検証を進め、多くの患者様に新しい治療を提供するための製品化を検討してまいります。
東レは、中期経営課題"プロジェクト AP-G 2019"で、医療の質の向上や、医療現場の負担軽減、健康・長寿に貢献する事業の拡大を目指す「ライフイノベーション事業拡大(LI)プロジェクト」に取り組み、2020年度には同事業を3,000億円の規模にまで拡大する目標を掲げています。当社は今後も、先端材料技術を活用した高付加価値医療材料の開発推進により、企業理念である「わたしたちは 新しい価値の創造を通じて 社会に貢献します」を具現化し、社会貢献とともに持続的な成長拡大を目指してまいります。
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