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第50回日化協技術賞技術特別賞受賞について 「タッチパネル用感光性導電ペーストの開発」

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2018.05.28

東レ株式会社

 東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、5月24日(木)、『タッチパネル用感光性導電ペーストの開発』について、一般社団法人日本化学工業協会(以下「日化協」)より「第50回(平成30年度)日化協技術賞技術特別賞」を受賞いたしました。「日化協技術賞技術特別賞」は、独創的技術かつ科学技術の進歩に寄与したもので、技術的に優れたものを表彰するものであり、東レの「日化協技術賞」受賞は、第49回(平成29年度)に続き今回で6度目となります。  この度の受賞は、東レが2005年から上市していた電子部品用途向けの「焼成型感光性導電ペースト“RAYBRID®”」に加え、新たに「タッチパネル用感光性導電ペーストの開発」に成功したことが評価されたものです。  従来の感光性導電ペーストは600以上の高温熱処理が必要であり、微細配線が形成可能な感光性と、低温熱処理での導電性の両立は困難でした。東レは、独自の感光系設計技術に加え、微粒子分散技術や粒子表面制御技術により、L/S=7µmの解像度と140処理での導電性を両立し、PET等のフィルム基材上でも微細配線加工可能な感光性導電ペースト“RAYBRID®”の開発に成功しました。  本技術によりスマートフォンの引き出し配線の微細化が可能となり、ディスプレイの大画面化や狭額縁といったデザイン性のあるスマートフォンの進化に大いに貢献したことが、高く評価されたものです。低温熱処理タイプは2012年の上市以来、スマートフォンを中心にタブレットなどタッチパネルの引き出し配線に用いられ、年間2億台以上のモバイル機器に継続採用されています。
第50回日化協技術賞技術特別賞受賞について
 なお、今回の受賞に関する主な技術特徴は下記の通りです。
(記)
1.テーマ
「タッチパネル用感光性導電ペーストの開発」

2.本技術の特徴
 東レは、感光性有機成分と無機粉末を混合した感光性ペーストにより、微細配線を形成する技術を保有し、主に電子部品の内部配線として、広く展開してまいりました。本技術は、その微細配線パターンの形成に加え、低温熱処理で導電性を発現する特性を持つことに成功したタッチパネル用感光性導電ペースト技術です。タッチパネルの基材は、PETフィルムやCOPフィルムが主流となっており、耐熱温度から150以下での熱処理で導電性を発現させる必要があります。従来の感光性導電ペーストでは、有機成分の含有量を増やさないと基材との密着性が発現せず微細なパターンを形成することが出来ませんでした。一方で、銀粉末の含有量を増やさないと導電性が発現せず、このトレードオフの関係からフィルム基材への感光性導電ペーストの開発は難しいと言われてきました。当社は、少ない有機成分で微細パターンが可能な感光性と基材との密着性を両立する感光性樹脂材料技術、および、銀粉末の粒径制御・表面処理技術により140以下の温度で導電性を発現する技術を見いだし、フィルム基材に対応可能な感光性導電ペースト“RAYBRID®”の開発に成功しました。

3.実用状況と今後の展開
 東レが開発した“RAYBRID®”は、スパッタや蒸着等の真空工程を用いず、また、レジストが不要なプロセスで微細な配線パターンを形成できる革新技術であるため、多くのタッチパネルメーカーが新たな設備投資をすることなく、既存設備を用いて生産可能という特徴を有します。低温熱処理タイプは、フィルムセンサー用途に2012年に初上市以降、スマートフォンを中心に、タブレットなどタッチパネルの引き回し配線として、アジア各国20社以上のタッチパネルメーカーに採用いただき、現在、年間2億台以上のモバイル機器に使用され、感光性銀ペースト市場では、ほぼ100%のシェアを実現しました。スマートフォンの狭額縁化は更に進んでおり、採用台数は拡大を続けています。  更に、“RAYBRID®”技術を用いて2~4μmの超微細配線形成を達成し、目に見えない透明電極として、車載・パソコン用途を中心にタッチパネルへの採用に適用範囲が広がっています。“RAYBRID®”を用いたタッチパネルは、従来ITO電極と比較し、①低抵抗、②優れた視認性、③良好な屈曲性、等の特徴があります。特に屈曲性に関しては、4mm径で20万回以上折り曲げても抵抗値が変化しないことから、従来にないフレキシブル電極として注目を集めています。
 東レの独自技術であるフォトリソによる精密加工技術と微粒子分散技術を駆使し、配線の微細化(高画質)と熱処理の低温化(あらゆる基材への直接形成)及び、低抵抗化(消費電力低減)といった特性を持つ感光性導電材料の開発に成功しました。  今後も、微粒子分散技術をベースに精密パターンが可能なフォトリソペーストを開発し、高画質化、軽量化、フレキシブル化、透明ディスプレイといった未来型ディスプレイの実現に向け、新規な感光性導電材料を創出してまいります。
<ご参考>
東レの「日化協技術賞」受賞履歴について
第49回(平成29年度)
「高機能性逆浸透膜の開発」(総合賞)
第24回(平成3年度)
「航空機用炭素繊維強化複合材料"トレカ"プリプレグP2302の開発」(技術賞)
第22回(平成元年度)
「ヒト線維芽細胞の大量培養による 天然型インターフェロンベータの生産技術の開発」(技術賞)
第20回(昭和62年度)
「スタティックキャスト重合法による連続装用可能なソフトコンタクトレンズの開発」(技術賞)
第1回(昭和43年度)
「光ニトロソ化(PNC法)によるε-カプロラクタムの製造」(技術賞)
 日化協は、化学工業の健全な発展を図り、我が国の経済繁栄と国民生活の向上に寄与することを目的とし、1948年(昭和23年)に設立され、優れた科学技術や製品の創出を表彰する「日化協 技術賞表彰事業」等を実施しています。
以 上