(a) |
ホットメルトプロセスのセットアップ。布地(ポリエステル)と超薄型太陽電池の間にメルトフィルム(ポリウレタン性)を挟み、120℃、15 kPaの条件で30秒間加熱圧着させた。これによって超薄型太陽電池を布地に貼り付けた。 |
(b) |
ホットメルトプロセス前後の特性変化。接着前(青)、ホットメルト接着後(赤)共に太陽電池の性能に変化はみられず、特性劣化なく布地へと貼り付けできていることが確認された。 |
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3.今後の期待 |
本研究では、新しい半導体ポリマーと新しい基板材料、封止構造を組み合わせることで、耐熱性と高いエネルギー変換効率を持つ超薄型有機太陽電池を実現しました。また太陽電池性能を劣化させることなく、ホットメルト手法で布地へ密着させることにも成功しました。
本技術は、衣服貼り付け型の太陽電池を容易に実現できるだけでなく、加熱を伴う過程にも耐えうるフレキシブルな電源となります。これにより、車内などの高温・多湿環境下でも安定して駆動する軽量な電源の実現に貢献すると期待できます。
また、本研究で実現した高耐熱・高エネルギー変換効率の超薄型有機太陽電池は、ウェアラブルデバイスやe-テキスタイルに向けた長期安定電源応用の未来に大きく貢献すると期待できます。 |
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4.論文情報 |
<タイトル>
Thermally stable, highly efficient, ultraflexible organic photovoltaics
<著者名>
Xiaomin Xu, Kenjiro Fukuda, Akchheta Karki, Sungjun Park, Hiroki Kimura, Hiroaki Jinno, Nobuhiro Watanabe, Shuhei Yamamoto, Satoru Shimomura, Daisuke Kitazawa, Tomoyuki Yokota, Shinjiro Umezu, Thuc-Quyen Nguyen, Takao Someya
<雑誌>
Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America
<DOI>
10.1073/pnas.1801187115 |
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5.補足説明 |
[1] 有機太陽電池 |
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有機半導体を光電変換層として用いた太陽電池のこと。塗布プロセスによる大量生産が適用できると同時に、安価かつ軽量で柔らかいことから次世代の太陽電池として注目を集めている。 |
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[2] 半導体ポリマー |
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半導体の性質を持つポリマー(高分子の有機化合物)材料。可視光を吸収することができ、有機溶剤に溶けるため、塗ることができる半導体として、有機薄膜太陽電池をはじめとした有機デバイスに応用されている。 |
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[3] ホットメルト手法 |
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熱をかけることで溶ける接着剤を利用した接着プロセス。アパレル分野では、無縫製での衣服成形が可能となる手法として利用されている。 |
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[4] e-テキスタイル |
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センサーやマイクロチップなど、電子機器を衣料や布地(テキスタイル)に埋め込み、情報収集や遠隔管理など、一般の繊維素材では得られない新しい機能を備えたテキスタイル素材のこと。より広義の同様の語句として「スマートテキスタイル」がある。 |
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[5] パリレン |
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高分子材料の一種。化学気層堆積法によって良質の均一薄膜が形成できる。生体適合性に優れているため、さまざまな生体・医療用途に応用されている。 |
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[6] 透明ポリイミド |
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高分子材料の一種。繰り返し単位にイミド結合を含む高分子の総称をポリイミドと呼ぶ。通常のポリイミドは透明ではないが、材料の工夫などにより可視領域の光透過性を向上させることで、透明化を実現したものを特に「透明」ポリイミドと呼ぶ。 |
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[7] フィルファクター |
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太陽電池素子の最適動作点での出力(最大出力)を、開放電圧と短絡電流の積で割った値のこと。曲線因子とも呼ぶ。一般的にフィルファクターが高い(100%に近い)素子のほうがよい性能であると考えられる。太陽電池内部の直列・並列接続の抵抗値やダイオード損失の影響を受けて、フィルファクターの値は小さくなっていく。 |
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6.発表者・機関窓口 |
<発表者> ※研究内容については発表者にお問い合わせ下さい |
理化学研究所 |
創発物性科学研究センター 創発ソフトシステム研究チーム |
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専任研究員 福田 憲二郎(ふくだ けんじろう)
(染谷薄膜素子研究室専任研究員、JSTさきがけ研究者) |
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チームリーダー 染谷 隆夫 (そめや たかお)
(染谷薄膜素子研究室主任研究員、東京大学大学院工学系研究科教授) |
TEL:048-467-9174(福田)、048-467-1943(染谷) FAX:048-467-5348 |
E-mail:kenjiro.fukuda[at]riken.jp(福田)、takao.someya[at]riken.jp(染谷) |
福田 憲二郎
染谷 隆夫
東レ株式会社基礎研究センター 先端材料研究所 新エネルギー材料研究室
主任研究員 北澤 大輔 (きたざわ だいすけ)
TEL:077-533-8433 FAX:077-533-8706
<機関窓口>
理化学研究所 広報室 報道担当
TEL:048-467-9272 FAX:048-462-4715
E-mail:ex-press[at]riken.jp
東レ株式会社 広報室
TEL:03-3245-5179 FAX:03-3245-5459
科学技術振興機構 広報課
TEL:03-5214-8404 FAX:03-5214-8432
E-mail:jstkoho[at]jst.go.jp
<JST事業に関すること>
中村 幹(なかむら つよし)
科学技術振興機構 戦略研究推進部 グリーンイノベーショングループ
TEL:03-3512-3531 FAX:03-3222-2066
E-mail:presto[at]jst.go.jp
※上記の[at]は@に置き換えてください。 |
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