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水処理用分離膜の汚染をさまざまな条件下で分析する革新技術を開発 -水質に応じたファウリング機構の解明に向け大きく前進-

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2017.10.31

東レ株式会社

 東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、このたび国立研究開発法人理化学研究所(理事長:松本紘)内の前田バイオ工学研究室との共同で、水に含まれる有機物やバクテリア等の汚れ成分(以下、「ファウラント」)が、逆浸透膜(以下、「RO膜1)」)に付着し目詰まりする現象(以下、「ファウリング2)」)をさまざまな条件下で分析する革新技術を開発しました。

 RO膜は、世界の水問題(水不足、水質悪化など)を解決しうる技術として世界中の水処理プラントで採用が進み、高品質の水を得るための除去性能、かつ省エネルギーを実現させる透水性能の向上が望まれています。また、用途拡大にともない海水や河水、下廃水、工場廃水など、多様な汚染原水にどう対応するかが喫緊の課題となっています。例えば海水は河水の数十~数百倍塩濃度が高い特徴がある一方、下廃水は多くの有機物を含み、工場廃水は廃水の種類によってpH3)が異なるなど水質は多種多様であり、各水質に応じたファウリング機構の解明が強く求められていました。
 そこで今回本研究グループでは、各水質を想定した基礎解析をもとに、ファウラントがRO膜表面に付着する過程を分子レベルで解析し、ファウリング機構の解明に取り組みました。ファウラントを結合させた高感度センサーを用いて、種々の塩濃度、pHの水中にて、ファウラントとRO膜表面との間にはたらく付着力を高精度で測定することに成功しました。付着力は水質およびファウラントに起因する特定の因子と相関が見られ、さらにRO膜表面の水分子や力学特性と付着メカニズムの関係を精査することを可能としました。

 今回開発したRO膜とファウラントの間にはたらく付着力を分析する技術は、海水や下廃水に加え、シェールオイル・ガス開発等で副次的に発生する随伴水処理への応用も期待できます。
 なお、本研究成果は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」の支援を受け、「世界の豊かな生活環境と地球規模の持続可能性に貢献するアクア・イノベーション拠点4)」の事業・研究プロジェクトによって得られたものです。

 東レは今後も、地球上の誰もが十分にきれいな水を手に入れられる社会の実現に寄与するべく、産学官の連携により、世界各地への社会実装を目指して研究・技術開発を推進してまいります。

【技術用語説明】

1)逆浸透(RO)膜
 濃厚水溶液と希薄水溶液とを半透膜で隔てて接触させると、濃度差で生じる浸透圧によって希薄水溶液側から濃厚水溶液側に水が移動します。ここで浸透圧より大きな圧力を濃厚水溶液側にかけると、水が半透膜を透過して希薄水溶液側に移動します。この現象を利用した膜分離法を逆浸透法と呼び、逆浸透法に用いる膜を逆浸透(RO)膜と言います。RO膜は、ナトリウムやカルシウムなどの金属イオン、塩素イオンや硫酸イオンなどの陰イオン、あるいは農薬などの低分子の有機化合物を除去対象としています。

2)ファウリング
 有機物やバクテリアなどの汚れ成分を含む水をRO膜で処理したときに、それらの汚れ成分がRO膜の表面に付着することをファウリングといいます。ファウリングによって分離膜の性能が変化するために、安定した水処理が困難になります。

3)pH
 水素イオン指数 (potential of hydrogen)。pHの値が小さいほど水素イオンの濃度が高く酸性、大きいほど水素イオンの濃度が低くアルカリ性を示します。

4)アクア・イノベーション拠点
 文部科学省「革新的イノベーション創出プログラム「COI STREAM」の採択を受けて開始し、信州大学を中核機関に企業が参画した産学官連携の開発拠点です。

以上