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塗布型半導体カーボンナノチューブで世界最高の移動度を達成 -IoT時代におけるキーデバイスとなるRFIDを塗布製造で実現-

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2017.02.02

東レ株式会社



 東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、このたび、半導体型単層カーボンナノチューブ(Carbon Nano-Tube:以下「CNT」)において、塗布型半導体として世界最高となる従来比2倍の移動度1)81cm2/Vsを達成しました。この成果により、IoT時代において必須ともいえる通信距離の長いICタグであるUHF帯RFID等の高機能デバイスを、塗布技術により安価に製造できる可能性を世界で初めて示しました。

 単層CNTは、半導体として高いポテンシャルを有しており、ディスプレイ用の薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下「TFT」)、ICタグ、センサー等への応用を目指した開発が進められています。この単層CNTは、半導体型が3分の2、金属型が3分の1の混合物として合成されますが、近年は半導体型のCNTをより高純度で取り出す技術開発が進んでいます。しかし、純度が高いCNTほど凝集する力が強く、均一な分散には外部から強いエネルギーを加える必要があり、CNTがダメージを受けてしまうという問題がありました。

 東レはこれまで、半導体ポリマーを単層CNTの表面に形成することで、導電性を阻害することなく単層CNTの凝集を抑制する技術に取り組んできました。今回は、この技術をさらに深化させ、半導体純度の高い単層CNTにより強く相互作用する新しい半導体ポリマーを見出し、より小さいエネルギーで単層CNTを均一分散できることを見出しました。これにより、塗布法で作製したTFTの移動度を大幅に向上させることができ、現在ディスプレイ等で用いられているアモルファスシリコンの約80倍となる移動度81cm2/Vsを達成しました。この結果、TFT素子としての基本性能はある程度見通しが立ちました。
 さらに、この技術を用いることで、フィルム等の汎用素材上に、ウェットコーティングによる塗布で半導体素子を形成する事が可能となるため、高コストを理由に普及が進んでいない半導体応用製品への展開に繋がります。
 東レはこの塗布型の特徴である低コストを生かして、今後、レジの自動化などの小売・流通や医療・介護など様々な場面での使用が期待されるディスポーザブルなICやセンサーなどへの展開に取り組んでいきます。具体的には、あらゆる商品に貼り付けられる、低コストRFIDタグや、微量成分が検出可能なバイオセンサーの分野に向けた技術確立を目指して参ります。

 なお、本研究は、NEDO「低炭素社会を実現するナノ炭素材料実用化プロジェクト」の助成事業を受けて行ったものです。また、本研究の成果は、2月15日~17日に東京ビックサイトで開催されるnano tech 2017で発表する予定です。

 東レは、コア技術である高分子化学とナノテクノロジーの融合によって、塗布型CNT半導体技術を早期に確立するとともに、今後も、創業以来の企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」を実現していくため、社会を本質的に変えるような革新素材の開発に取り組んでいく所存です。
 

【用語説明】
1) 移動度:半導体中の正孔・電子などのキャリアの動きやすさの指標。移動度が大きいと高速応答が可能になり、またTFTサイズを小さくできるため微細化にも有利となる。
以上