東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、この度、経口プロスタサイクリン(PGI2)製剤 ラプロス®について、2017年1月13日付で猫の慢性腎臓病治療薬としての製造販売承認を取得しました。本年4月より共立製薬株式会社(本社:東京都千代田区、社長:髙居隆章)を発売元として発売開始予定です。
現在、犬と並んで最も身近なペットとして親しまれている猫にとって、かかりやすい病気の一つに慢性腎臓病が挙げられます。慢性腎臓病は、腎臓の機能が徐々に低下していくことで、食欲不振や体重減少、多飲多尿、嘔吐など様々な症状が現れます。特に高齢の猫においてよく認められ、10歳齢以上の猫における有病率は30~40%にのぼると報告されています。しかし、猫の慢性腎臓病は、病態が解明されていないことも多く、治療の選択肢は限られていました。
ところが近年研究が進み、猫の慢性腎臓病は病理組織学的に間質の線維化と炎症が主体であり間質の線維化が腎機能低下と最もよく相関することが分かってきました。腎臓の線維化は、炎症や虚血、低酸素状態、線維化によるさらなる虚血と低酸素状態…という風に悪循環を形成して進行していきます。つまりこの腎線維化プロセスを抑制することができれば、腎機能の低下を抑制できると考え、開発に着手しました。
ラプロス®は、ベラプロストナトリウムを有効成分とする経口プロスタサイクリン(PGI2)製剤であり、血管内皮細胞保護作用、血管拡張作用、炎症性サイトカイン産生抑制作用及び抗血小板作用を有しています。これらの薬理作用によって腎臓の虚血および低酸素状態を改善させると考えられており、腎機能の低下を抑制し臨床症状を改善させます。
国内で「腎機能低下の抑制」を効能効果として承認を取得した薬剤はラプロス®が初めてであり、猫医療に心強い治療選択肢を提供することができたと考えています。
昨今、日本国内では猫が登場する映画やTV番組、CM、スマートフォンのゲームアプリなどが多数作られており、「ネコノミクス」という言葉が誕生するなど、空前の「猫ブーム」と言われています。
本製品は、家族の一員としての猫に対して病気の治療を施すとともに、飼い主の癒やしとしてのQOL(Quality of Life=生活の質)の向上にも貢献すると考えます。
今後も東レは新薬開発を通じて、動物医療のアンメットメディカルニーズに応えていく所存です。
※ ラプロス®は東レの登録商標です。