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膜利用発酵プロセスのスケールアップ実証について -製糖工場で発生するバイオマスを原料にしたエタノール生産-

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2016.11.28

東レ株式会社



 東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、このたび、サトウキビ製糖工場で発生するバイオマス(バガス1)、廃糖蜜2))を原料とする菌体リサイクル型連続発酵プロセスによるエタノール製造技術において、水処理膜技術とバイオ技術を融合した「膜利用発酵プロセス」のスケールアップ実証に成功しました。
 今回の実証により、従来プロセスに比べ約10倍の高い生産速度で効率よくサトウキビからエタノールを生産することが可能になり、また収量が10~20%向上することでエタノールの増産も可能になります。
 今後は、サトウキビを原料とするエタノール製造が進んでいるブラジル、インド、タイへ本技術を導出し、更なる量産技術の開発を推進することで、5年以内の実用化を目指します。

 膜利用発酵プロセスとは、発酵プロセスに水処理用分離膜を使用することで発酵効率の飛躍的向上を可能にする技術であり、バイオマスを原料とする非石化原料素材の効率的製造の実現に貢献するものです。
 バイオマスを活用した従来の発酵プロセスは、仕込んだ原料を消費し尽くすと生産が終了するバッチ式発酵プロセスでしたが、生産速度が低いという課題がありました。これに対して当社は、これまでに開発した高透水性・高耐久性のポリフッ化ビニリデン(PVDF)素材の分離膜を組み込んだ発酵リアクターを用いることで、菌体リサイクル型連続発酵を行うプロセスである「膜利用発酵プロセス」の研究・技術開発を推進してきました。

 しかしながら膜利用発酵プロセスは、従来のバッチ式発酵プロセスと比較して長時間の発酵を継続するため、実用化するためには高度な雑菌汚染対策が必要になります。そこで当社は独自の連続発酵プロセス開発のため、当社東海工場に設置されているスケールアップ実証設備に適用し、2014年に採択された環境省の「CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業(国内製糖工場廃棄物からの有価物製造によるGHG削減技術実証)」においてスケールアップ実証を推進して参りました。
 さらに当社は、連続発酵に適した新たな酵母の取得にも成功し、これらの技術融合によって、雑菌汚染の問題なく、バッチ式発酵プロセス対比10倍の生産速度で連続発酵を約1ヶ月継続するスケールアップ実証に成功しました。

 CO2排出量削減に向けた再生エネルギー導入の動きが世界中で加速している中、大気中のCO2総量に影響を与えないカーボンニュートラル3)なバイオエタノール燃料が注目されており、米国、ブラジル、欧州、東南アジア諸国等で自動車ガソリン混合用の燃料として利用されています。
 今回の技術で得られるエタノールは、バイオエタノール燃料として利用できる品質のものであり、これらの各国への技術導出による実用化が期待できます。

 東レは、「すべての事業戦略の軸足を地球環境に置き、持続可能な低炭素社会の実現に向け貢献していく」という経営方針の下、日本の総合化学企業としていち早くLCM環境経営4)を推進しています。
 当社はその一環として、水処理分離膜とバイオ技術の融合について社外とのオープン・イノベーションを積極的に推進し、今後もサプライチェーンの構築とソリューションの提供を目指して参ります。

 
以上
 
【語句の説明】
1) バガス:サトウキビを搾汁した後に残る固形物。
2) 廃糖蜜:サトウキビの搾汁糖液から、砂糖を結晶させた後に残る液。
3) カーボンニュートラル:バイオマスを原料とする燃料の場合、燃焼させると化石資源と同じようにCO2を発生させるが、バイオマスの生長過程で光合成によりCO2を吸収しているため、ライフサイクル全体で見ると大気中のCO2を増加させずに収支がゼロと見なされる状態。
4) LCM環境経営:あらゆる産業活動、企業活動において、製品やサービスをライフサイクル全体で捉え(LCA:ライフサイクルアセスメント)、環境負荷を低減しながら、経済・社会的価値の向上を目指す持続的な取り組み(LCM:ライフサイクルマネジメント)。
 
以上