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リチウムイオン電池用グラフェン導電助剤の開発について -ナノカーボン技術と界面化学の融合で高出力化・高容量化を実現-

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2016.11.25

東レ株式会社

 東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、この度、独自の表面処理技術により、極めて薄い形状を維持しながらも、安定して分散可能なリチウムイオン電池用グラフェン1)導電助剤を開発しました。これにより、リチウムイオン電池の高出力化・高容量化を実現することが可能となります。現在、ユーザー評価を開始しており、今後はグラフェンの量産技術開発を加速して参ります。
 導電助剤とは、リチウムイオン電池の電極2)を形成する際に、電極の抵抗を低減するために使用する材料です。導電助剤は、これまではカーボンブラックが主に使われてきました。しかし最近では、リチウムイオン電池の更なる高出力化や、導電助剤添加量低減による活物質増量(高容量化)が求められています。今回、当社は、これらの課題を解決するため、薄層形状で導電率が高いグラフェンに注目しました。
 グラフェンは、電気伝導性、機械強度に非常に優れる材料であり、半導体材料やディスプレイ、フィルタなど様々な分野での活用が期待されています。しかしナノカーボンであるグラフェンは、比表面積が大きく凝集しやすいため、従来の技術ではリチウムイオン電池の導電助剤として使用した場合に、電極内で偏在を生じやすく、高出力化・高容量化の効果を得ることが困難でした。
 当社ではグラフェンの表面に、溶媒との親和性を向上する独自の表面処理を施すことで、溶媒中に安定して分散することを可能としました。このようなグラフェンを導電助剤として用いることで、電極内に薄層状態で広範囲に導電助剤を分布させることができ、その結果、電池の高出力化・高容量化を確認しました。
 また、当社グラフェンは、安価な黒鉛を原料とする化学剥離法を用いて製造しているため、低コスト化が可能です。今後は、電池以外の用途についても幅広く展開を図っていきます。
 なお、本研究の成果は、11月29日~12月1日に、千葉県で開催される第57回電池討論会にて発表する予定です。
 東レは、創業以来の企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」を実現していくため、社会を本質的に変える革新素材の創出に取り組み続けて参ります。

 
【用語説明】
1) グラフェン:炭素原子1個(1層)が蜂の巣状に結合したシート状の物質であり、シートが複数層積層した物質もグラフェンと呼ばれる。当社開発のグラフェンは10層程度に積層したグラフェンである。
 
2) 電極:リチウムイオン電池の電極は、化学変化によりエネルギーを生み出すための活物質(セラミックス)と電極の抵抗を下げるための導電助剤(カーボン材料)とこれらを固定するための結着剤(ポリマー材料)から構成されている。
以 上