東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)、東レリサーチセンター(本社:東京都中央区、社長:川村邦昭、以下「TRC」)はこのたび東京大学物性研究所(所長:瀧川仁、以下「東大物性研」)の山室修教授・古府麻衣子助教と共同で、これまで未解明であったRO膜の細孔中における、水分子の状態と拡散の挙動の詳細解析に取り組みました。この結果、細孔中の水は、細孔と相互作用して動きにくい「束縛水」と、運動性の高い「自由水」の2種類に大別され、自由水は束縛水と比べて10倍以上速く拡散していることを示しました。さらに、RO膜のポリマー分子は細孔を形成しているだけでなく、水と相互作用し運動が活性化していることを、世界で初めて明らかにしました。
東レは、本解析結果を活用し、革新省エネルギーRO膜の開発など、先端分離材料の開発を加速していきます。
RO膜を用いた浄水技術は、世界人口の急増と経済成長を背景に地球規模で深刻化する水不足・水質汚濁といった問題に対し、持続可能な水資源を確保するための技術として、世界各地での採用が進んでいます。東レとTRCは、15年以上にわたり、最先端技術を駆使して、実験と計算化学の両面からRO膜の構造解析に取り組み、高性能RO膜の開発に活用してきました。RO膜の表面には厚さ1億分の1メートル程度のひだ状のポリマーの分離機能層が形成され、分離機能層に存在する10億分の1メートル以下の細孔を利用して水と塩などの不純物の分離を行っています(図1)。微細な細孔の構造と、その中での水の動きを精密に制御することができれば、水だけを効率的に透過する、つまり透水・除去性能に優れた高性能RO膜を得ることができます。
本研究のポイントは下記の通りです。