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フレキシブル性を大幅に向上させたハイバリアフィルムについて -膜の薄さの追求で耐屈曲性・半径1mmを実現-

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2016.09.15

東レ株式会社

 東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、この度、独自のバリア膜形成技術をベースに、当社現行品と同等の水蒸気バリア性を有しながらも、フレキシブル性を向上させたハイバリアフィルムを開発しました。2016年10月より、フレキシブル有機ELディスプレイやフィルム型センサ、電子ペーパーラベルなど、耐湿性と耐屈曲性が求められる幅広い分野に向け、サンプルワークを開始します。

 ハイバリアフィルムとは、ベースとなるフィルムの上に水蒸気や空気の透過を防ぐ機能を持つ特殊な膜(バリア膜)を形成させたフィルムのことです。有機太陽電池の発電層や有機ELディスプレイの発光層などに対する水による劣化や腐食を防止するために使用されます。また、リチウムイオン電池や医薬、特殊電子部品の外装等、従来アルミ箔などの金属箔が使用されていたパッケージ材料に置き換えることによって、金属箔では困難な透明性や電磁波透過性の新たな機能を付加することも可能です。

 近年、フレキシブルディスプレイなど自由に曲げることができるデバイスの開発が進んでおり、当社もこれらの用途向けにハイバリアフィルム「バリアトップ®04」を上市してきました。「バリアトップ®04」は水蒸気透過率が10-4[g/m2・day]レベルという高いバリア性能を持ちながらも、バリア膜の厚みは薄く、曲げたときに割れにくいという特長を持っており、曲げたり、曲面に沿わせたりする必要がある用途への採用が進んでいます。
 また最近は、折りたたみや巻き取りが可能なタイプのスマートフォンやタブレット端末等の電子デバイスや、人体や衣服に密着させることが可能なウェアラブルセンサなどの開発がすすんでおり、これらの製品に使用されるハイバリアフィルムでは更なる耐屈曲性を求められることが予想されます。

 そこで当社は、屈曲半径を小さくするため、バリア膜を薄くすることに着目しました。柔軟性に優れた材料を開発し、バリア膜の緻密化を進めることにより、水蒸気透過率は、当社現行品と同等の10-4[g/m2・day]レベルを維持しながらも、バリア膜厚を大幅に薄くすることが可能となりました。この技術により、屈曲半径1mmでも高い性能を持つハイバリアフィルムが得られることを確認しています。また、バリア膜厚を薄くすることにより、バリアフィルムの反り(カール)をほぼゼロに抑えることもできました。

 今回のバリア膜は多様なフィルムに対して加工適性が優れていることも特徴です。今後は、標準基材として開発してきたポリエステルフィルム「ルミラー®」を始め、耐熱性の優れたPPSフィルム「トレリナ®」、寸法安定性の優れたアラミドフィルム「ミクトロン®」など、東レグループの高機能基材との組み合わせでさらに新しい機能を開拓していきます。
 東レは今後も、「高分子化学」、「有機合成化学」、「バイオテクノロジー」そして「ナノテクノロジー」といった、自社の保有するコア技術を駆使して、社会を本質的に変える力のある革新的な素材の研究・開発を推進することで、東レグループ企業理念である「私たちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」の具現化に取り組んでまいります。
 超薄膜バリア層を有するハイバリアフィルムの技術ポイントは下記の通りです。
 
 
1. 技術ポイント
従来のバリア膜は比較的硬いケイ素化合物薄膜を使用することが多いが、屈曲や切断加工においてクラックや欠けが生じやすいため、柔軟性に着目した膜材料を開発・採用した。
薄膜構造はSEM(走査電子顕微鏡)・TEM(透過電子顕微鏡)、XPS(X線光電子分光法)などによる元素組成と観察が主体だったが、フィルム上の100nm以下の薄膜となると内部構造や緻密性の十分な情報を得ることが困難であった。これに対して当社は、X線反射率法(XRR)を活用した独自の膜密度解析技術と緻密性の評価法を確立した。
従来のXRR法ではフィルム表面の凹凸や湾曲の影響により精度は不十分だったが、大学と共同でフィルム用の測定方法を確立し、0.1[g/cm3]以下の精度で薄膜の密度情報を取得することに成功した。
組成情報と密度情報を組み合わせることでバリア膜の緻密性を定量的に把握し、それを材料組成と成膜プロセス条件にフィードバックすることでバリア膜の緻密性を定量的に把握し、それを材料組成と成膜プロセス条件にフィードバックすることで、バリア性の最適化を図ることが可能となった。
膜材料の開発と、構造解析技術とを組合せることで、バリア層の膜厚を極限まで薄くすることを追求した結果、膜厚50nm以下においても、水蒸気透過率が10-4[g/m2・day]レベルのバリア性能を安定的に作製できる技術を確立した。
現在、膜厚100nm以下で究極のバリア性と言われている10-6[g/m2・day]レベルのバリア性能を達成する技術を研究中。
 
2. 用途 有機EL等のフレキシブルデバイス、リチウムイオン電池、医薬、特殊電子部品などの外装・パッケージ材料
 
<用語説明>
1) 水蒸気透過率
単位面積、単位時間あたりの水蒸気透過量。バリアフィルムの場合、面積1[m2]、1[日]あたりの水蒸気透過量[g]を、[g/m2・day]の単位で表すことが多い。
   
以 上