世界初、有機溶剤フリー化を実現する水なしUV印刷システムを開発

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2016.05.25

東レ株式会社

 東レ株式会社(所在地:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)はこの度、東レ水なし平版®と新規開発した親水性ポリマーの適用により、揮発性有機溶剤を用いない究極のエコ印刷方式である水溶性インキを用いた水なしUV印刷システムを開発しました。

 東レは、オフセット印刷に用いる印刷版材である、東レ水なし平版®を展開して参りました。東レ水なし平版®は、印刷時に揮発性有機溶剤を含む湿し水を用いないことから、環境面に配慮した製品として認知されております。しかし、オフセット印刷には油性インキが使用されているため、版や設備を洗浄する際には揮発性有機溶剤を用いる必要がありました。
 そこで、東レのコア技術である機能性高分子設計技術を用いた親水性ポリマーを開発し、世界初の「水溶性インキを用いる水なしUVオフセット印刷システム」の実現に成功しました。
 今回開発した、水なしUVオフセット印刷システムでは、インキは揮発性有機溶剤を含まず、また、水溶性のため、水系洗浄剤で洗浄可能であることから、印刷工程で発生する揮発性有機溶剤の排出・使用を削減することが可能になります。さらに、この親水性ポリマーを用いることにより、従来よりも温度等の印刷条件のマージンが拡大するインキを実現できるなど、さまざまなメリットがあることがわかりました。

 近年では、中国などアジア新興国では、PM2.5に起因する環境汚染が社会問題となっています。このPM2.5の原因物質の一つと考えられているVOCは揮発性有機溶剤に起因しています。このVOC削減に向けて、ペンキ等の塗料分野では水性化による対策が進められてきましたが、オフセット印刷の分野でも、本開発の水溶性インキ適用により、VOCの大幅削減が可能となります。
 さらに、温度等の印刷条件のマージンが拡大し、より簡便に安定な印刷工程を実現でき、フィルム等の紙媒体以外の幅広い媒体への印刷にも対応することが可能になります。

 東レは、2017年より、各インキメーカー様向けにこの親水性ポリマーを用いたインキ原料の販売を開始致します。今後、インキメーカー様、印刷会社様、印刷機メーカー様とご協力させて頂き、VOC排出量の削減による環境問題の解決に貢献して参ります。
 なお、本研究の成果は、5月31日~6月10日に、ドイツのデュッセルドルフで開催される世界最大の印刷展示会DRUPAで発表する予定です。

 東レは、創業以来の企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」を実現していくため、社会を本質的に変える革新素材の創出に取り組み続けて参ります。

【用語説明】
1)UVオフセット印刷
従来の油性インキのような自然乾燥ではなく、紫外線(UV)照射により瞬時に硬化するUVインキを用いるオフセット印刷。
2)PM2.5
微小粒子状物質。主に人の呼吸器系に沈着して健康に影響を及ぼすため、大気中に放出されると環境問題を引き起こす。
3)VOC
揮発性有機化合物。大気中に放出されると、公害などの健康被害を引き起こす。
以上