反射防止機能に優れた超低屈折率コーティング剤の開発について

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2016.04.21

東レ株式会社

 東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、この度、反射防止機能に優れた超低屈折率コーティング剤の開発に成功しました。本開発品を、デジタルカメラやスマートフォンなどのレンズから入った光を電気信号に変換する部品であるイメージセンサーの反射防止膜として用いた場合、集光効率を向上させることが可能となり、感度向上に貢献します。
 2016年3月からイメージセンサー用レンズの反射防止膜向けにサンプル出荷を開始していますが、今後は、反射防止機能を必要とする、プリズムシートやレンズ部材等の光学部品・光学フィルムへの展開も視野に入れた開発を進めて参ります。

 イメージセンサー等の光学部材では、マイクロレンズという小さなレンズを表層に多数敷き詰めることで、集光効率を高めています。ただしレンズと空気の界面で光が反射してしまうとその分がロスになるため、低屈折率の層を設けることで反射を防止し、さらに集光効率を高める工夫がなされています。
 マイクロレンズは、0.5~5μmの微細な凹凸の形状をしており、一般的に液状であるコーティング剤では付着量が凹部分に多く、凸部分には少なくなってしまい、反射防止の機能を発揮できるとは言い難いものです。従って現在は、真空プロセスを用い二酸化ケイ素(SiO2)の層をレンズに沿って化学的に形成する方法が通常ですが、真空プロセスの設備コストが高額になるという問題や、SiO2では屈折率が1.46(空気は1.0)と比較的高いことから反射防止効果がまだ十分ではないといった課題がありました。

 そこで今回東レは、透明で耐熱性の高いポリマーであるポリシロキサンを用いて、分子設計技術の応用とナノコンポジット技術の進化により、屈折率1.33の超低屈折率かつ流動性を高度に制御した新しいコーティング剤を開発しました。塗布直後、コーティング剤が凸部分から凹部分に流れてしまう前に硬化が進み、流動性が低くなることから、マイクロレンズを敷き詰めた凹凸形状を損なわず、均一な厚みの反射防止膜の形成が可能になるため、微細な凹凸からなるレンズに対しても、レンズ効果を損なうこと無く、高い反射防止効果が得られるため、集光効率の向上が可能になります。
 また、この新しいコーティング剤は、250℃までの耐熱性もあるため、はんだ実装など高温となるプロセスでも使用可能という利点があります。

 東レは、「有機合成化学」「高分子化学」「バイオテクノロジー」「ナノテクノロジー」の4つのコア技術を駆使し、様々な先端材料を生み出すことで、社会の発展に貢献して参りました。
 今後も、創業以来の企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」の実現のため、たゆまぬ研究・技術開発に取り組んでいく所存です。

以 上