人工腎臓装置の新製品(個人用透析装置 TR-3300S)の本格販売について

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2016.03.29

東レ・メディカル株式会社
透析事業本部

 東レ・メディカル株式会社(本社:東京都中央区 社長:大志万俊夫 東レ100%出資)は、この度、静岡事業場(静岡県沼津市)にて新たに開発し、2015年11月16日に厚生労働省から製造販売承認を取得した「個人用透析装置 TR-3300S」(以下、TR-3300S)を2016年3月から本格発売します。

 TR-3300Sは、個人用透析装置 TR-3000Sからデザインを一新させ、①業務効率化、②操作性・作業性の向上、③安全性・信頼性の追求、④高機能化、⑤クリーン化のコンセプトのもと新たに開発した製品です。安全性を重視した逆ろ過透析液による自動化機能や、ユーザーフレンドリーデザインなどの特長を有しています。
 透析施設の多くは透析用監視装置(セントラルシステム)と個人用透析装置の組み合わせでシステム構成されています。今回発売するTR-3300Sと、すでに市場で高い評価をいただいている弊社の透析用監視装置 TR-3300M(以下、TR-3300M)の併用によって、ほぼすべての透析室で生理食塩液を必要としない自動化透析が可能となり、経済性や業務効率化に大きく寄与します。また、透析装置の操作・作業および血液回路などのディスポーザブル品との共通化、共有化によって、装置操作ミス、血液回路のセットミスなどのヒューマンエラー防止効果が期待できます。
 透析の準備(自動プライミング)は、透析医療事故防止に対応した当社独自の方式(オーバーフローラインレス)を採用し、高い安全性を確保する一方、治療モードでは近年普及しているオンラインHDFはもちろんのこと、透析中の末梢循環の改善が期待できる新たな治療法"間歇補充型HDF"(I-HDF)にも対応しています。
 これら特長を有するTR-3300Sは市場のニーズに応え、透析治療の更なる質の向上に大きく寄与できる人工腎臓装置であり、TR-3300Mとの組み合わせによって、今後、多くの透析施設への普及が期待できる新製品と考えています。

 弊社は世界で唯一、透析用RO装置から透析用監視装置、個人用透析装置および透析管理システムに至るまでの統合的な透析システムを自社で一貫製造している透析装置メーカであり、グローバル展開も積極的に行っています。

 日本国内における透析患者数は約32万人で、年間約6,000人増加し、今後もしばらく増加することが予想されています。
 弊社は、市場ニーズに対応した透析装置システムと高性能で生体適合性に優れた透析器(ダイアライザの"フィルトライザー®"、"トレライト®"、ヘモダイアフィルタの"トレスルホン®")等を軸に更に透析事業の拡大を図り、安心、安全で効果的な透析医療の実現に向け高品質な透析関連製品を提供すると共に、透析患者さんのQOL(クオリティ オブ ライフ)向上、医療従事者の利便性改善等のお役に立ちたいと考えています。

- 補足資料 -
1.東レ・メディカル株式会社の概要
 1980年、東レ(株)が製造する人工腎臓(透析器)"フィルトライザー®"などの医療機器製品の販売会社として設立しました。現在は透析装置メーカとしての役割も担っており、その事業構成は血液透析を中心とした透析器や透析装置、救急・集中治療の血液浄化システム、カテーテルなどの医療用具、医薬品の天然型インターフェロン製剤販売などからなり、2014年度の売上高は約400億円です。
2.TR-3300Sの詳細
業務効率化
 逆ろ過透析液によるプライミング、急速補液、返血および脱血の各自動化機能が業務効率化をさらに推進します。
 特に治験によって2010年に承認を得た"逆ろ過透析液を用いた自動化機能"は、ダイアライザが最終フィルタの役割を兼用し、また補液ライン、オーバーフローラインを必要としないシンプルな回路で使用することができる簡便でより安心・安全なシステムです。
[主な自動化機能]
生理食塩液を必要としない自動プライミング(透析準備)
ワンタッチで自動脱血(透析開始)
生理食塩液を必要としない簡単補液(透析中の血圧低下時など)
生理食塩液を必要としない自動返血(透析終了時)
操作性・作業性の向上
 血液ポンプ、シリンジポンプなどのデバイスはスタッフの作業姿勢を重視したレイアウトとしました。さらに、LCD(12.1インチ)および操作部は広範囲に可動しますので、スタッフおよび患者さんの視点に合わせて向きを変えることができます。また、操作面では経験の少ないスタッフも簡単に操作ができるよう、各工程で必要なスイッチを表示するなどのナビゲート機能を搭載しています。
安全性・信頼性の追求
 返血時は血液ポンプケーシング部の自動スライド機構によって、患者の動脈圧、静脈圧を自動測定し、それぞれの患者さんに適した圧力を監視しながら自動返血ができる安全性の高いシステムを搭載しています。
 デザイン面では全てのクランプを装置本体に組み込み、気泡検知器とクランプをユニット化することで、血液回路のセットミスなどのヒューマンエラーの低減に寄与します。
高機能化
 国内において2010年に認可された治療方法であるオンラインHDFや、新しい治療法として注目されている間歇補充型HDF(I-HDF)など、多様な治療法に対応します。I-HDFは、逆ろ過透析液を間歇的に補液するHDFモードであり、補液回路を用いずに簡便な操作で施行することができます。治療中の末梢循環改善、plasma refilling促進、膜性能の経時劣化抑制などの効果が期待できます。また、弊社人工透析管理システム Miracle DIMCS UX®との連携により、効率的な透析管理が可能です。
クリーン化
 高品質な透析に寄与する透析液清浄化システムとして、ETRFの自動フラッシング、リークチェック機能を搭載しています。ETRFには高い除去性能および耐久性を有した"TORAY ETRF TE-12R"の搭載で、高い清浄度を維持します。また、透析液のサンプリングおよびオンライン補充液を衛生的かつ容易に抽出でき、かつ消毒時のすすぎ性をベンチュリ効果によってさらに向上させたサンプリングポートを搭載しています。また、装置内部配管の消毒には高濃度薬液による消毒後、低濃度薬液を封入して装置停止時の生菌増殖を抑制する2段階薬液消毒機能を搭載しています。
 透析液清浄化によって透析治療における副作用・合併症が軽減されるという臨床効果はすでに多くの学会、研究会等で報告されており、弊社の透析液清浄化に関する取り組み、システムは医療施設より高い評価を受けています。

*ETRF:endotoxin retentive filter(エンドトキシン捕捉フィルタ)
3.用語説明
1)透析(血液透析、人工透析)
透析とは、慢性腎不全に陥った患者の生命維持に必要な治療方法のひとつで、通常1週間に2~3回(1回あたり:約4時間)維持透析として施行される。原理は、拡散と限外濾過で、ダイアライザ(半透膜)を介して血液と透析液を接触させることにより、尿毒素および余分な水分の除去、電解質バランスの調節等を行う。
2)人工腎臓(透析器、ダイアライザ)
透析に用いる血液浄化用のフィルタをいう。
3)人工腎臓装置(透析用監視装置、個人用透析装置など)
透析器(ダイアライザ)を用いて、透析を行うために使用する装置をいう。
4)個人用透析装置
逆浸透法精製水製造装置(RO装置)から透析用水の供給を受け、透析患者さんのベッドサイドで透析治療に用いられる装置。海外の透析装置は個人用透析装置のみであるが、国内では処方透析、病棟/ICU透析、在宅透析、感染症患者への対応に用いられることが多い。
5)透析用監視装置
多人数透析液供給装置(セントラル)から透析液の供給を受け、透析患者さんのベッドサイドで透析治療に用いられる装置。国内の透析装置の8~9割を占め、個人用透析装置との大きな違いは透析液調製機能を有していないこと。
6)逆ろ過透析液
透析の除水は、限外濾過によって血液側の水分を透析液側へ移動させているが、それとは逆方向に透析液側から血液側に移動させた液を逆ろ過透析液という。ダイアライザ(半透膜)を介して清浄化された透析液を逆ろ過することで、生理食塩液の代用としてプライミング液、置換液として使用できる。
7)オンライン補充液
透析液をETRFでろ過した清浄度の極めて高い透析液をいう。
8)プライミング
血液回路をプライミング液(通常は生理食塩液)、ダイアライザをプライミング液および透析液でエアー抜き、洗浄を行い治療が開始できるようにすること。
9)返血
透析終了後、体外循環している血液を患者へ戻すこと。通常は血液を生理食塩液に置換することで返血を行う。
10)脱血
患者から血液を導出し、血液回路、ダイアライザのプライミング液を血液に置換し体外循環を開始すること。
11)補液
透析中の血圧低下時など、患者に補充液(通常は生理食塩液)を注入すること。
補液によって、体液(血管内液)を補い血圧を回復させ循環動態を安定させる。