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塗布型カーボンナノチューブ半導体で世界最高レベルの移動度を達成 -半導体型単層CNTと半導体ポリマーの複合化により半導体特性を向上-

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2016.03.24

東レ株式会社

 東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、このたび、半導体型単層カーボンナノチューブ(Carbon Nano-Tube:以下「CNT」)において、塗布型半導体としては世界最高となる従来比2倍の移動度1)36 cm2/Vsを達成しました。

 優れた電気的・機械的特性を持つCNTは、その導電性を生かして、二層CNTや多層CNTではタッチパネルの透明電極などでの実用化が始まりつつあります。
 一方、東レが現在技術開発に取り組んでいる単層CNTは、半導体として高いポテンシャルを有しており、ディスプレイ用の薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下「TFT」)等への応用を目指した開発が進められています。
 この単層CNTは、半導体型が3分の2、金属型が3分の1の混合物として合成されますが、近年は半導体型のCNTをより高純度で取り出す技術開発が進んでおり、単層CNTのポテンシャルをさらに引き出すことができるようになってきています。
 しかしCNTの純度を高くした場合には、CNT自体の凝集力によって均一な分散が難しく、安定的な性能を発揮しにくいという問題がありました。

 そこで東レは、独自に開発した半導体ポリマーを単層CNTの表面に形成することによって、半導体としての特性を大きく阻害することなく、単層CNTの凝集を抑制するという技術開発に取り組んできました。
 この開発の結果、今回は、半導体純度の高い単層CNTに対して、より強く相互作用しやすい新しい半導体ポリマーを見出し、半導体型CNTの分散性向上に成功したことで、塗布法で作製したTFTにおける移動度を大幅に向上させることができました。
 今回達成した移動度36cm2/Vsは、現在ディスプレイ等で用いられているアモルファスシリコンの約40倍であり、半導体としてのCNTのポテンシャルを十分に引き出した結果と言えます。

 この技術を用いることで、フィルム等の汎用素材上に、ウェットコーティングによる塗布で半導体素子を形成する事が可能となるため、高コストを理由に普及が進んでいない半導体応用製品への普及に繋がると考えます。
 東レはこの塗布型の特徴である低コストを生かして、今後、急速な拡大が期待されるIoT分野、あるいは、エレクトロニクス技術との融合が進みつつあるメディカル分野への展開に取り組んでいきます。具体的には、あらゆる商品に貼り付けられる、低コストのRFIDタグや、微量成分が検出可能なバイオセンサーの分野に向けた技術確立を目指して参ります。

 なお、本研究は、NEDO「低炭素社会を実現するナノ炭素材料実用化プロジェクト」の助成事業を受けて行ったものです。また、本研究の成果は、3月24日~27日に同志社大学で開催される日本化学会春季年会で発表する予定です。
 東レは、コア技術である高分子化学とナノテクノロジーの融合によって、塗布型CNT半導体技術を早期に確立するとともに、今後も、創業以来の企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」を実現していくため、社会を本質的に変えるような革新素材の開発に取り組んでいく所存です。

【用語説明】
1)移動度: 半導体中の正孔・電子などのキャリアの動きやすさの指標。移動度が大きいと高速応答が可能になり、またTFTサイズを小さくできるため微細化にも有利となる。

以 上