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リチウムイオン電池の高容量化に対応する 負極バインダー用水溶性ポリイミドの開発について

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2016.01.28

東レ株式会社

 東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、この度、リチウムイオン電池の高容量化に対応するための負極バインダー用に水溶性ポリイミドを開発し、1月からサンプル出荷を開始しました。
 これからユーザーでの評価を進めるとともに、早期の量産化技術の確立に向け技術開発を加速して参ります。

 負極バインダーとは、リチウムイオン電池の負極を形成する際に、金属製の基板に負極材を固定するための材料です。負極材は、充電時にリチウムを蓄える役目をしますが、これまでは炭素系の材料が主に使われてきました。しかし最近では、リチウムイオン電池の高容量化のため、より多くのリチウムを蓄えることができるシリコン系材料の適用が進められています。
 ところが、シリコン系の負極材は充放電時の体積変化が大きく、強度の低い現行のバインダーでは、負極材が膨張と収縮を繰り返すことで劣化して壊れたり、負極材が基板から離脱したりするため、時間とともに電池自体の性能が低下してしまうという問題がありました。

 今回東レは、この問題を解決するため、当社が情報通信材料分野で長い研究・技術開発の歴史があり多くの知見を持つ、高強度・高弾性のポリイミドを負極バインダーとして適用することを考えました。ポリイミドは耐熱性に優れた樹脂で、強固な分子構造を持っており、半導体の保護膜や電気回路の絶縁材料等に使用されています。
 リチウムイオン電池の負極を形成する際には、樹脂を水に溶かしてその中に負極材を添加し、それを銅製の基板に塗布した後に熱をかけて硬化させるプロセスが一般的です。
 しかしポリイミドは、不溶・不融のポリマーであり、バインダーに用いて負極を形成するためには、ポリイミド前駆体を溶解するための有機溶剤が必要となります。さらに、ポリイミド前駆体をポリイミドに転化するために250℃以上にもなる高温での熱処理が必要となるため、現在一般的なリチウムイオン電池製造プロセスに適用することは極めて困難でした。

 そこで、ポリイミドを分子レベルで改質し、前駆体ではなく、既にポリイミドに転化した状態で溶解させることが可能となったため、高温での熱処理が不要となり、現行プロセスと同等の150℃以下の熱処理が可能となりました。さらに分子構造に親水性の修飾を施すことで、ポリイミドを水溶性にすることに成功しました。
 これらの開発により、ポリイミドをバインダーとして、高強度特性を維持したまま現行のリチウムイオン電池製造ラインにおける負極形成プロセスに適用することができるようになりました。

 東レは、ポリイミドの世界トップメーカーとして、長期にわたる継続的な研究・技術開発により、高性能・高品位なポリイミド材料を創り出し、グローバルに事業展開して参りました。
 今後も、創業以来の企業理念である「わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します」を実現していくため、社会を本質的に変えるような革新素材の開発に取り組んでいく所存です。

以 上