東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、この度、水中に含まれる汚れ成分の付着を抑制する耐汚れ性逆浸透(RO)膜 1)について、高い脱塩性能および透水性能を維持しながら、これまでよりも多様な汚れ成分の付着を抑制する基本技術の確立に成功しました。
今回の技術により、これまで以上に様々な水質に対応したRO膜の開発が可能となることから、今後、世界各地で適用性を確認するとともに、早期の量産化技術確立に向けて開発を加速して参ります。
近年、水不足や水質悪化といった世界各地の水問題を解決するための水源開発として、海水やかん水の淡水化に加えて、下廃水再利用への需要が高まっています。
RO膜はこれまで、海水淡水化をはじめとして世界中の水処理プラントで採用が進んできましたが、下廃水のように様々な種類の汚れ成分を多く含むような水を処理する際には、ファウリング 2)と呼ばれるRO膜表面の汚れによる目詰まりが生じ、安定運転が困難になるという問題がありました。
これに対して東レは、日本、中国、韓国、シンガポールの研究・技術開発拠点を融合させたグローバル研究・技術開発体制により、多様な水を対象とした水質分析とファウリングの可視化による現象解析を基に、膜表面に水和水を保持する構造設計を行いました。膜表面の水和水がコーティングの役目を果たすことで、種々の汚れ成分の付着を大幅に抑制します。
東レでは従来から、下廃水処理において、膜表面に汚れ成分が付着しにくいように表面加工した低ファウリングRO膜を販売していますが、本技術を用いた耐汚れ性RO膜は、これまで対策の難しかった汚れ成分を含む水の処理においても長期間安定して高品質のろ過水を提供できることから、より広範な地域の幅広い用途での利用が期待できます。
これまでも東レは、独自のコア技術である高分子化学とナノテクノロジーを駆使し、世界中の水処理プラントで期待される、高品質のろ過水を得るための物質除去性能や省エネルギーを実現する透水性能の向上に努めてきましたが、今後さらに、原水の多様化に伴う「耐汚れ性」にも対応を進めていく考えです。
なお、今回の開発成果は、2016年1月27日(水)~29日(金)に東京ビッグサイトで開催される「nanotech 2016(第15回国際ナノテクノロジー総合展・技術会議)」に出展します。
東レは、現在進めている中期経営課題"プロジェクト AP-G 2016"において、「グリーンイノベーション事業拡大(GR)プロジェクト」を掲げ、地球環境問題や資源・エネルギー問題の解決に貢献する事業の拡大に取り組んでいます。
今回のような水処理膜の開発は、まさにこのGRプロジェクトを実現するための一環であり、今後も地球規模での水問題の解決に貢献することで、持続的な事業拡大を進めていく所存です。