東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、この度、ポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維トルコン®と弊社子会社Zoltek社製のポリアクリルニトリルからなる耐炎化糸を用いた高性能遮炎ペーパーを開発しました。
今回開発した高性能遮炎ペーパーは、薄膜かつ柔軟性を持ちながら、高い難燃性と10分以上の高い遮炎性能(当社独自評価方法)を有します。
この遮炎ペーパーを難燃性が求められる様々な製品に適応することで、その難燃性を向上させ、より高い安全性を製品に付与することが出来ます。また、厚く頑丈な難燃材と置き換えることで、最終製品の省スペース化や小型化の実現が可能となります。
PPS繊維トルコン®は、難燃性、耐熱性や耐薬品性を持つ熱可塑性繊維であり、主に石炭火力発電ボイラーのバグフィルター用途で幅広く使用されています。また、弊社が2014年2月に子会社化した、ラージトウ炭素繊維製造会社Zoltek社が生産する耐炎化糸は、空気中で焼成酸化させた酸化ポリアクリロニトリル糸であり、優れた難燃性、耐熱性を活かし、航空機用ブレーキパッドや溶接時のスパッタシートをはじめとしてさまざまな産業分野に展開されています。
今回、開発に成功した高性能遮炎ペーパーは、東レが新たな繊維先端材料を創出するための新規要素技術として、ここ数年来戦力を重点化し研究・開発を進めてきた『繊維複合・構造化技術』による成果です。
既存の難燃ペーパーでは、炎を遮る性能(遮炎性)を実現するにはかなりの厚みが必要で、また、無機物からなる既存の遮炎シートは、薄膜化が難しく、柔軟性に欠けるものでした。今回、東レは、この『繊維複合・構造化技術』を用い、PPS繊維トルコン®と耐炎化糸を特殊な抄紙技術で複合混抄することで、両繊維が個別に持っていた性能を有し、薄膜でかつ適度な強度を持ちながら柔軟で加工性に優れた遮炎ペーパーの開発に成功しました。
この遮炎ペーパーが炎にさらされ300℃以上に加熱された場合、熱可塑製樹脂であるPPS繊維トルコン®が溶融し、ペーパー内に網目状に配置された耐炎化糸の空隙に膜状に広がり、更なる温度上昇とともに炭化が進み、炎をも遮る難燃シートへと構造転化していきます。これにより、難燃性としては、厚さ60ミクロンの薄膜状でありながら、UL-94規格VTM-0クラス(*1)同等の性能を発現し、かつ炎も遮断します。
また、この遮炎ペーパーは、高い通気度を有するため、熱の篭りを軽減でき、立体加工の際の接着剤塗布時には優れたアンカー効果を発揮します。そのため今までにない「薄くて、軽くて、成形可能で、遮炎できる」という特徴を持ち、最終製品の防炎性の向上や火災リスク低減はもちろんのこと、最終製品の省スペース化や軽量化にも寄与できるため、幅広い分野への適用が期待されます。
東レは今後も、コーポレートスローガンである"Innovation by Chemistry"のもと、お客様の課題解決に貢献する先端材料の開発を推進し、より豊かな社会の実現に向けて「素材」で貢献する企業集団であり続けます。