東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、山小屋等の屋根に適用することで、火山噴火時に飛来する噴石による建物被害を防ぐ補強材を開発しました。本素材はパラ系アラミド繊維 デュポン™ケブラー®を使用した織物で、このほど内閣府から発行された「活火山における退避壕等の充実に向けた手引き」記載の仕様に基づき、屋根材にこのケブラー®製織物を挟み込むことで、噴石等の飛散物による衝撃を和らげることができます。今後は自治体や民間事業主への提案を進め、2016年度に3万m、2017年度に5万mの販売を見込みます。
昨年9月に発生した御嶽山の噴火は、多数の死者、行方不明者、負傷者を出すなど、戦後最悪の人的被害をもたらしました。この御嶽山噴火で火口周辺に降り注いだ噴石に対し、山小屋等に退避する行動が身を守るうえで有効であったことをふまえ、内閣府(防災担当)、防衛大学校、山梨県富士山科学研究所とともに当社は、既存の山小屋等の補強方法を検討してきました。
既存の山小屋等の屋根を補強する場合、特に御嶽山のように3,000m 級の活火山や、ロープウェイによるアクセスが必要な活火山等では、建設用の重機、資材の搬入が困難です。また、一般的に木造建築物の構造耐力上、屋根材は軽量であることが望ましく、さらに活火山の火口周辺は火山ガス(硫化水素、二酸化硫黄、塩化水素等)が多い場合があり、鋼板等は経年劣化が進みやすいとされています。
ケブラー®製織物は、防弾チョッキ等に用いられるなど、軽量で強度が高く、鋼板と比較して防錆性に優れます。また、布状のため、屋根の葺き替えや防水シートの張替工事を行う際に、タッカー(建築用ホッチキス)等で容易に施工することが可能です。
さらに、熱分解点400℃以上の高い耐熱性があり、屋根面の高温化による変質が小さいというメリットがあります。当社はこれらケブラー®の特長が屋根補強材に適すると考え、本年6月からケブラー®製織物を使用した素材開発に着手し、織物の種類や積層枚数、生地の固定方法など様々な条件下で評価を繰り返し、補強材としての仕様を確立しました。
本仕様に基づき、9月中旬には防衛大学校で噴石衝突模擬実験が公開されました。山小屋の屋根に見立てた材料(供試体)を設置し、噴石に見立てた飛翔体を衝突させて破損状況を検証したところ、従来の屋根材にケブラー®製織物を挟み込んだ場合、飛翔体が供試体を貫通せず、補強材として一定の効果があることが確認されました。
火山の噴火状況により噴石被害も様々ですが、待避場所を補強して、より堅牢にすることは避難者の安全確保に直結する重要な対策であり、本素材はその一助となるものです。
東レは、内閣府発行の手引きに沿って人的被害の軽減が進むことを願うとともに、人々の安全確保に繋がる素材開発をさらに推進し、より良い社会の実現に貢献してまいります。
当商品の概要は次頁の通りです。