東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)はこの度、安定した水資源と期待されている下水の再利用に向け、東レの限外ろ過(UF)膜トレフィル®を逆浸透(RO)膜ロメンブラ®の前処理に適用することで、従来の砂ろ過前処理法に比べてコストが2割削減できることをパイロット実証しました。
今回の実証は、東レのグローバル研究拠点の一つである東麗先端材料研究開発(中国)有限公司(略称:TARC)水処理研究所と連携し、華東地域最大級の蘇州下水処理場において、中国の有力学術機関である上海交通大学と共同で行った成果です。
経済活動や人々の生活から毎日排出される下水の再利用は、安定した水資源として今後のさらなる活用が期待されています。
下水の再利用では、RO膜を使用して再利用可能なきれいな水を得ますが、 RO膜の汚れ防止のため、従来は、砂ろ過前処理で汚れ成分を除去する方法が適用されていました。しかし、汚れ成分の多い下水では除去が不完全になり、RO膜が汚れてしまう(ファウリング)ため安定運転が難しく、また、RO膜面の汚れを除去する薬品洗浄の回数が多く、コストが高いという課題がありました。
この課題に対し、東レは、RO膜の前処理に当社のUF膜トレフィル®を適用し独自の運転技術を組み合わせることで、UF膜+RO膜下水再利用プロセスの安定運転に成功しました。
トレフィル®は、汚れ成分が詰まりにくい低ファウリング層を有することで高効率に汚れ成分を除去できる、特殊なPVDF素材の中空糸UF膜です。
このトレフィル®を、当社のRO膜ロメンブラ®の前処理に適用することで、汚れ成分を効率的に除去し、従来の砂ろ過前処理法に比べRO膜のファウリングを約9割低減することに成功しました。
これより、RO膜の薬品洗浄頻度を大幅に少なくすることができ、同時にRO膜の交換費用を約4割低減、プロセス全体での処理コストの2割削減を達成することができました。
トレフィル®がRO膜の前処理として有効であるという成果を得られたことで、水道浄水処理に加え、下廃水の再利用向けRO膜の前処理として適用拡大を目指していきます。なお、本成果については、「IDA World Congress 2015(8月30日~9月4日:米国サンディエゴ開催)」にて発表予定です。
東レは、各地域の水事情に合わせた水処理技術、水処理製品の研究・開発を進めています。シンガポールに設置したToray Singapore Water Research Center(TSWRC)でも、下水を処理する際のRO膜安定運転キー技術となる膜面の汚れ(ファウリング)抑制について、南洋理工大学と共同研究を進め、当社UF膜とRO膜を組み合わせた統合的膜処理システム(IMS:Integrated Membrane System)の開発に取り組んでおり、シンガポール最大規模のチャンギ下水処理場でのパイロット実証試験を完了しており、ASEAN地域の顧客への提案活動を進めています。
中期経営課題“プロジェクト AP-G 2016”で「グリーンイノベーション事業拡大(GR)プロジェクト」を掲げ、地球環境問題や資源、エネルギー問題の解決に貢献する事業の拡大を目指している東レは、このようにグローバルな研究・開発体制の下、より幅広い用途に向けた提案を加速し、地球規模での水問題解決に貢献してまいります。
今回行ったパイロット実証の詳細は下記の通りです。