公益財団法人がん研究会(所在地:東京都江東区、理事長:草刈 隆郎、以下「がん研」)と東レ株式会社(本社所在地:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、がん医療現場における衣料ニーズの発掘を共同で行い、乳がん患者様が治療中にも快適に着用できる新しいインナータイプのケアウェアの開発に着手しました。今後はがん研有明病院において、患者様に試着していただき、より良い製品をご提供する計画で、2015年の上市を目指して取り組みを進めてまいります。
また本製品の概要は来る7月12日の日本乳癌学会(大阪)でも発表いたします。
日本人女性の乳がん罹患率は年々増加傾向にあり、1年間で5万人が新たに乳がんと診断されています。これに対する治療として外科療法、薬物療法のほか、放射線療法が行われます。放射線療法は有効な術後局所療法ですが、放射線皮膚炎の発症が認められることがあります。この皮膚炎の治療には、炎症部分に軟膏を塗布し、患部を保護するガーゼを貼るのが一般的です。がん研有明病院では、保護に医療材(リント布など)を用いて、弾性包帯を加工した独自の保護ベストで保護する方法を検討してきました。一般素材の保護ベストは、伸縮性に乏しいため皮膚への刺激が強く、また軟膏や患部からの浸出液が衣服を汚してしまうなど、治療中の患者様が日常生活を送る上での負担を生じていました。皮膚障害をケアしつつ、快適に過ごせる患者用衣料があれば、患者様の「生活の質(QOL:quality of life)」を改善することが期待できます。
がん研と東レはこうした医療現場のニーズに応える形で、東レが長年培ってきた先端素材開発技術を活かして、照射後皮膚炎の患部を保護しつつ、着心地やファッション性に配慮した乳がん患者向けケアウェアを共同で企画・開発いたしました。体に柔らかくフィットするニット素材を用い、患部保護材をずれにくくするホールド性と、肌への刺激を抑えた縫製仕様によって、快適に着用でき、容易に着脱することが可能です。さらに特殊な防汚加工を施し軟膏や患部からの浸出液を吸収保持し裏面に染み出しにくくすることで、浸出による外衣への汚れを防止します。また家庭での洗濯でウェアに付着した軟膏などを簡単に洗い落とせるイージーケア性を備えています。このような防汚性、伸縮性等の機能と、装用性、ファッション性を向上させた患者様用のケアウェアとして、広く世界に普及できるものと期待しています。
がん研と東レは、これを始めとして、患者様に少しでも快適な医療環境を提供するための患者様サポートという新しい視点から、がん治療の周辺領域に役立つ製品の開発を進めて参ります。
乳がん患者向けケアウェアの概要は以下のとおりです。