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次世代パワーエレクトロニクス用感光性耐熱レジストを開発 ―SiC半導体製造のイオン注入工程を大幅簡略化―

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2013.10.01

東レ株式会社

東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)はこのたび、次世代パワーエレクトロニクス(インバータなどの電力機器)に用いられるシリコンカーバイド(Silicon Carbide、以下「SiC」)半導体デバイス製造工程である、イオン注入工程を大幅に簡略化できる感光性耐熱レジストを開発いたしました。これまでに、つくばイノベーションアリーナ(TIA-nano)におけるパワーエレクトロニクス共同研究体「つくばパワーエレクトロニクスコンステレーション」(以下「TPEC」、所在地:茨城県つくば市)において、本材料を適用したデバイス製作の実証検証を行い、従来の無機酸化膜を用いるプロセスと同等レベルの電気特性が得られることを確認しています。

 SiC半導体は、Si半導体の10倍の絶縁破壊耐性や高耐熱性であるなど、Si半導体の性能を凌駕する次世代の半導体材料として注目されています。通常、SiC半導体デバイス製造工程においては、SiCウェハ上にアルミ等のイオンを、マスクを介して注入することによって、電気特性を制御するための回路パターンを形成します。従来のSi半導体では行っていなかった300℃以上の高温でイオン注入を行うためには回路としない部分のマスク材料として、高耐熱性を有するCVD(化学気相蒸着)法による二酸化珪素などの無機物の層と、フォトレジスト樹脂の二層が必要となっています。通常、感光によりパターンを描くフォト加工、パターンを切り出すエッチング、レジスト剥離、イオン注入、マスク除去といった一連の長く複雑な加工を数回繰り返すため、高コストであるという課題があります。

 今回開発した感光性耐熱レジスト材料は、一般的なフォトリソグラフィー加工により2µm以下のファインパターンの形成が可能で、イオン注入時の300℃以上に対する耐熱性、ウェハへのイオン阻止性能を有し、かつ、イオン注入処理後に薬液での除去性能を保有しています。マスク材料並みの耐熱性があるため一層の塗布で直接パターニングが可能であり、大幅なプロセス簡略化が可能です。

 現在、東レが2012年より参画している「TPEC」において、独立行政法人産業技術総合研究所(所在地:茨城県つくば市、理事長:中鉢 良治)、富士電機株式会社(本社:東京都品川区、社長:北澤 通宏)、株式会社アルバック(本社:神奈川県茅ヶ崎市、社長:小日向 久治)と共同で、本開発品を高温イオン注入レジスト材料として適用した簡略化プロセスによるデバイス製作の実証検証を行っております。今回、代表的なパワー半導体1200Vショットキー・バリア・ダイオードデバイス(Schottky Barrier Diode :以下「SBD」)の作製について、フォト加工プロセス、イオン注入プロセス、マスク剥離プロセスを最適化することにより、従来の無機酸化膜と同等レベルの電気特性を得ることができました。今後は、SBDで得られた知見を生かして、メタル・オキサイド・セミコンダクター・フィールド・イフェクト・トランジスター(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor :以下「MOSFET」)のデバイス製作の実証検証を行ってまいります。

 今後、東レの強みである材料開発と、共同研究による実用化に向けた開発を一層強化し、次世代パワーエレクトロニスクス用途での採用を目指し、コーポレートスローガンである“Innovation by Chemistry”を具現化する先端材料の開発を推進していく所存です。


以上