
図1.有機薄膜太陽電池の典型的構造

図2.新規ドナー材料の光吸収特性(薄膜)
2. 発電層製膜法の最適化
有機薄膜太陽電池の発電層は、ドナー材料とアクセプター材料がブレンドされた「バルクヘテロ構造」と呼ばれる特異的な構成となっており、高いJscを発現させるためには、ドナー材料とアクセプター材料がナノレベル相分離11)していることが望ましいとされています(図1)。
これに対して東レは、発電層の製膜溶媒など製膜条件を最適化することでナノレベル相分離している理想的なバルクヘテロ構造の形成を実現し、さらに上記のようなドナー材料の高度な配向性も相まって、高いJscを得るために必要な配向制御された厚膜化(約300nm、従来比約3倍)を可能としました。これにより、本材料を用いて作製した有機薄膜太陽電池において、全吸収波長領域でほぼ9割を超える極限の外部量子効率を実現し、有機薄膜太陽電池では世界最高レベルとなる10%を超える変換効率を達成しました(図3)。この有機薄膜太陽電池の内部微細構造を大型放射光施設「SPring-8」(兵庫県 播磨科学公園都市内)で測定・解析した結果、ドナー材料の主鎖平面は、アクセプター材料との混合状態であるバルクヘテロ構造においても、分子設計通り太陽電池基板と平行に配向していることが確認できています。
この有機薄膜太陽電池は発電層が従来に比べて厚いため、上記のような高効率化に加えて、リーク破壊12)が起きにくいこと、ならびに発電層が1層のみで複数の発電層を積層させる他方式よりも構造がシンプルであることから、従来方式に比べて高耐久性と低コスト製造が期待できます。