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東レの「κ型オピオイド受容体作動薬ナルフラフィン塩酸塩の発明」が 平成25年度全国発明表彰「発明賞」を受賞

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2013.06.19

東レ株式会社

 このたび、平成25年度全国発明表彰が決定し、東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)の「κ型オピオイド受容体作動薬ナルフラフィン塩酸塩」(特許第2525552号、発明者:長瀬博、川村邦昭、河合孝治、早川潤、遠藤孝)が「発明賞」を受賞しました。今回の受賞は、血液透析に伴う難治性のそう痒症に対する、世界初の選択的オピオイドκ受容体作動性の経口そう痒症改善薬であるレミッチ®カプセル2.5 μgの開発・上市に成功したことが評価されたものです(※レミッチ®は鳥居薬品株式会社の商標)。
 表彰式は、常陸宮殿下・同妃殿下の御臨席の下、6月18日(火)、ホテルオークラ東京において執り行われ、5名の発明者に「発明賞」が授与されました。
 なお、東レの全国発明表彰の受賞は、平成24年度の「プラズマディスプレイ隔壁用感光性ペーストの発明」による「発明賞」に続き、通算10度目となります。またナルフラフィン塩酸塩に関しましては、日本薬学会創薬科学賞、有機合成化学協会賞(技術的)、大河内記念技術賞に続く4件目の受賞です。

 東レは、長期経営ビジョン“AP-Growth TORAY 2020”において、医薬品・医療機器を中心とするライフサイエンス事業を「重点育成・拡大事業」と位置づけています。中でも医薬事業においては、世界にさきがけ、かつ、患者さまのために真に役立つ、特徴ある新薬の創製に取り組んできました。今回の受賞は、ドルナー®の全国発明表彰弁理士会会長賞に続く、東レ医薬事業として2回目の受賞となりました。

 近年、社会の高齢化、QOL(Quality of Life)重視の流れに伴い、より長く、健康な人生を過ごすことへの関心がますます高まっています。東レは引き続き、革新的新薬の創出を通じて、健康社会の実現に貢献して参ります。

【全国発明表彰とは】
皇室から毎年御下賜金を拝受し、公益社団法人 発明協会の主催により優れた発明を完成した人、実施化に尽力した人、 発明の指導・奨励・育成に貢献した人を表彰するものです。表彰を通じて発明の奨励・育成を図り、日本の科学技術の向上と産業の振興に寄与することを目的としています。

 今回の受賞内容は下記の通りです。


 
1.受賞テーマ:「κ型オピオイド受容体作動薬ナルフラフィン塩酸塩の発明」
2.対象特許:第2525552号
3.受賞者:
平成25年度全国発明表彰「発明賞」受賞
所属 氏名
筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構 教授
元 東レ株式会社 医薬研究所 所長
長瀬 博
東レ株式会社 三島工場 医薬技術部 部長 川村 邦昭
東レ株式会社 医薬研究所 創薬化学研究室 室長 河合 孝治
東レ株式会社 医薬企画部 部長 早川 潤
Eurofins Panlabs Inc. ビジネスディレクター
元 東レ株式会社 医薬研究所 薬理研究室 室長
遠藤 孝

4.受賞技術の概要:
 モルヒネに代表されるオピオイド医薬は、強力な鎮痛作用を含む有用な薬理作用を有している反面、副作用としての薬物依存なども良く知られており、麻薬ではないオピオイド医薬の実現が強く望まれてきました。
 近年、モルヒネが結合するオピオイド受容体(μ型)と異なる型の受容体(κ型など)に結合する化合物が、麻薬性のない有用医薬候補として注目されるようになりました。しかし、これまで報告された選択的オピオイドκ受容体作動薬は、麻薬性は克服できたものの動物では薬物嫌悪性として観察される副作用を示すものばかりで、臨床後期にまで進階できたものは皆無でした。そこで東レは、これらの欠点を克服する選択的オピオイドκ受容体作動薬の探索を進めました。
 東レは、研究開始までに見出されていた既報化合物の構造改変的アプローチではなく、分子構造の理解に基づく論理的・化学的な独自設計思想を採用しました。その結果、従来化合物とは一線を画す特徴的な構造とプロファイルを有する選択的オピオイドκ受容体作動薬として、ナルフラフィン塩酸塩の創出に成功し、「レミッチ®カプセル2.5 μg」として上市を達成しました。
 激しいかゆみに悩まされる血液透析患者の方々のQOLを、重篤な副作用無く高めたという点で本薬物の意義は極めて大きく、日本発のオリジナル有用医薬として活用されていくことが期待されます。

以上