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第59回大河内記念技術賞受賞 「中枢系に作用する難治性そう痒症治療薬ナルフラフィン塩酸塩の創出」 -5年ぶり、12度目の「大河内賞」受賞-

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2013.03.25

東レ株式会社

 東レ(株)(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、3月22日(金)、『中枢系に作用する難治性そう痒症治療薬ナルフラフィン塩酸塩の創出』について、財団法人大河内記念会より「第59回(平成24年度)大河内記念技術賞」を受賞いたしました。

 この度の受賞は、血液透析に伴う難治性のそう痒症に対する、世界初の選択的オピオイドκ受容体作動性の経口そう痒症改善薬であるレミッチ®カプセル2.5µgの開発・上市に成功したことが評価されたものです(※レミッチ®は鳥居薬品株式会社の商標)。
 東レの「大河内賞」受賞は、第54回(平成19年度)に続き今回で12度目となります。
 大河内記念会は、故大河内正敏博士の学界、産業界に残された功績を記念して、1954年(昭和29年)に設立され、その後今日まで、博士の遺志となった「生産のための科学技術の振興」を目的として、大河内賞による表彰事業等を実施しています。大河内賞は、毎年、各方面からの推薦に基づき、わが国の生産工学、生産技術の研究開発、および高度生産方式の実施等に関する顕著な功績を表彰するものです。今回東レでは、生産工学、生産技術の研究により得られた優れた発明または考案に基づく産業上の顕著な業績をあげた個人または5名以内のグループを対象に贈られる「大河内記念技術賞」を受賞しました。

 東レは、長期経営ビジョン“AP-Growth TORAY 2020”において、医薬品・医療機器を中心とするライフサイエンス事業を「重点育成・拡大事業」と位置づけています。中でも医薬事業においては、世界にさきがけ、かつ、患者さまのために真に役立つ、特徴ある新薬の創製に取り組んできました。今回の受賞は、フエロン、ドルナーに続く、東レ医薬事業として3回目の受賞となります。

 近年、社会の高齢化、QOL(Quality of Life)重視の流れに伴い、より長く、健康な人生を過ごすことへの関心がますます高まっています。東レは引き続き、革新的新薬の創出を通じて、健康社会の実現に貢献して参ります。

 なお、今回の受賞に関する主な技術特徴は下記の通りです。




1.テーマ
 「中枢系に作用する難治性そう痒症治療薬ナルフラフィン塩酸塩の創出」
2.本技術の特徴
 モルヒネに代表されるオピオイド医薬は、強力な鎮痛作用を含む有用な薬理作用を有する反面、副作用としての薬物依存なども良く知られており、麻薬ではないオピオイド医薬の実現が強く望まれてきました。
 近年、モルヒネが結合するオピオイド受容体(μ型)と異なる型の受容体(κ型など)に結合する化合物が、麻薬性のない有用医薬候補として注目されるようになりました。しかし、これまで報告された選択的オピオイドκ受容体作動薬は、麻薬性は克服できたものの動物では薬物嫌悪性として観察される副作用を示すものばかりで、臨床後期にまで進階できたものは皆無でした。そこで東レは、これらの欠点を克服する選択的オピオイドκ受容体作動薬の探索を進めました。
 東レは、研究開始までに見出されていた既報化合物の構造改変的アプローチではなく、分子構造の理解に基づく論理的・化学的な独自設計思想を採用しました。その結果、従来化合物とは一線を画す特徴的な構造を有する選択的オピオイドκ受容体作動薬として、ナルフラフィン塩酸塩の創出に成功しました。さらに、(1)立体選択性に優れた製造ルートの確立、(2)光異性化・易酸化性・非晶性・吸湿性という製剤学上極めて取り扱いが難しい化合物であるナルフラフィンのソフトカプセル化による製剤上の問題点の克服、(3)カプセル中に含有される極微量薬物の定量法、管理プロセスの確立を通じて「レミッチ®カプセル2.5µg」として上市を達成しました。
 激しいかゆみに悩まされる血液透析患者の方々のQOLを重篤な副作用無く高めたという点で本薬物の意義は極めて大きく、日本発のオリジナル有用医薬として学術論文などを通じて公開した創薬コンセプト、設計手法は学会でも高く評価されています(2010年度 日本薬学会創薬科学賞および有機合成化学協会賞(技術的))。
3.実用状況と今後の展開
 本薬物は、同種の適応症を持つ医薬品が他にはなく、上市以来、国内市場占有率は100%を維持しています。
 また、日本発のオリジナル有用医薬として世界展開を図っており、近々海外の患者さまにもご活用いただけるものと考えております。
 さらに現在、血液透析に伴う難治性そう痒症治療以外の適用に関しても臨床試験が行われており、中枢系に作用することによってそう痒症を治療する唯一の薬物として、適切に用いられていくことが期待されています。

<ご参考>
東レの「大河内賞」受賞履歴について
第59回(平成24年度)
 「中枢系に作用する難治性そう痒症治療薬ナルフラフィン塩酸塩の創出」(技術賞)
第54回(平成19年度)
 「液晶ディスプレイバックライト用高性能反射ポリエステルフィルムの開発」(生産賞)
第52回(平成17年度)
 「非感光ポリイミド法による携帯電話用液晶ディスプレイ向け高性能カラーフィルターの開発」(生産賞)
第49回(平成14年度)
 「ポリアミド複合逆浸透膜および逆浸透膜システムの開発」(生産賞)
第47回(平成12年度)
 「パラ系アラミドフィルムの開発」(生産賞)
第43回(平成8年度)
 「磁気記録媒体用PETフィルム表面形成法の開発」(生産特賞)
第40回(平成5年度)
 「経口PGI2誘導体ベラプロストナトリウムの開発と企業化」(技術賞)
第33回(昭和61年度)
 「天然型ヒト・インターフェロン ベータ製剤の生産技術の開発」(生産賞)
第21回(昭和49年度)
 「溶融紡糸延伸直結法の開発と工業化」(生産賞)
第19回(昭和47年度)
 「新しいパラキシレンの製造技術の開発と工業化」(生産賞)
第18回(昭和46年度)
 「オープンエンド精紡機MS400の発明およびその工業化」(生産賞)
第14回(昭和42年度)
 「光ニトロソ化(PNC法)によるε-カプロラクタムの製造」(生産特賞)
 
以上