東レ株式会社(本社:東京都中央区、社長:日覺昭廣)は、このたび、新たな膜表面加工技術により抗血栓性に影響する血小板付着の抑制を自社従来品に比べて向上させたPMMA(ポリメチルメタクリレート)膜人工腎臓の新製品フィルトライザー®NFを開発し、本年4月より東レ・メディカル株式会社(本社:千葉県浦安市、社長:田中資長、東レ100%出資)による本格販売を開始します(医療機器承認番号:21800BZZ10130000)。
人工腎臓を用いた透析療法(以下、人工透析という)は、血液を体外に循環させて人工腎臓内の中空糸膜を通すことで血液中の老廃物(尿毒素)や余分な水分を取り除き血液を浄化します。現在人工腎臓市場の80%以上を占めるポリスルホン膜人工腎臓は、透過(拡散とろ過)によって尿毒素を除去するのに対して、東レが1977年に開発し、世界で初めて合成高分子膜を使用したPMMA膜人工腎臓は、透過に加え吸着によっても尿毒素を除去できることが知られています。
これまで、PMMA膜については尿毒素の除去に優れた吸着特性を発揮する一方で、血液が中空糸膜に接触することで、血小板等が膜表面に付着する血小板凝集反応などの抑制が課題となっていました。東レは、この課題に対し、膜表面を加工する新技術を開発、新規人工腎臓フィルトライザー®NFに適用しました。
フィルトライザー®NFは、中空糸膜表面への血小板や凝固系タンパク質のフィブリノーゲンの付着を自社従来品に比べて低減しましたが、その一方で、尿毒素のβ2-ミクログロブリンの吸着除去特性や総タンパク質吸着量は、従来品同様に保持しています。
東レは2010年に上市した新規ポリスルホン膜人工腎臓トレライト®NVに続く、今回の新規PMMA膜人工腎臓フィルトライザー®NFの本格展開により、新たな生体適合性開拓を追求し、人工腎臓事業の拡大を推進します。
東レは、長期経営ビジョン“AP-Growth TORAY 2020”において、医薬品・医療機器を中心とするライフサイエンス事業を「重点育成・拡大事業」と位置づけています。先端材料技術を活用した高付加価値医 療材料の開発推進と販売展開により、この成長分野における事業育成と拡大を目指してまいります。