そう痒症改善薬「TRK-820」の欧州におけるライセンス契約締結について

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2012.04.04

東レ株式会社

東レ株式会社(本社:東京、社長:日覺昭廣、以下「東レ」)は、このたび世界最大の透析サービスおよび透析関連機器の販売会社であるフレゼニウス メディカル ケアAG&Co KGaA(本社:ドイツ-バドホンブルグ、CEO:Dr Ben J. Lipps、以下「フレゼニウス」)と、東レが開発したそう痒症改善薬「TRK-820」(東レ開発番号、一般名:ナルフラフィン塩酸塩)の注射剤について、欧州におけるライセンス契約を締結しました。本契約により、東レが欧州で承認を取得した後は、フレゼニウスが欧州で独占的に販売を行うことになります。

 TRK-820は、オピオイドκ(カッパ)受容体に対する選択性の高い作動薬で、日本において、血液透析患者におけるそう痒症改善剤「レミッチ®カプセル 2.5μg」(製造販売元:東レ、販売元:鳥居薬品株式会社、提携:日本たばこ産業株式会社)として2009年3月より販売されています。欧州では経口剤ではなく、毎回の透析終了後、透析施設で投薬を行う注射剤で開発を行っています。

 血液透析患者におけるそう痒症は、頻度は高くないものの炎症などを伴わない全身性の強い痒みです。痒みの強い患者さんでは、痒みのために十分な睡眠がとれず、生活の質(QOL = Quality of Life)の低下が問題とされるだけでなく、痒みは掻破による皮膚炎、感染症など全身症状悪化のひとつの要因ともなっています。この痒みは、抗ヒスタミン薬など従来の痒みに対する治療薬では十分に抑えられないことが知られています。このような背景からTRK-820注射剤は血液透析患者の痒みに対して、欧州医薬品庁(EMA)よりオーファン医薬品の指定を受けています。

 今回の提携は、欧州の透析関連医薬品分野で強力な販売ネットワークを求める東レの希望と、透析患者を対象とする医薬品の品揃えを強化したいフレゼニウスの戦略が合致し実現したものです。両社は1日も早い承認取得と上市を目標として、本年、EMAへの販売承認申請を行うべく準備を進めてまいります。

なお、TRK-820の詳細な特長などは別紙のとおりです。

以上

<別紙>
1. TRK-820の特長
TRK-820は、オピオイドκ(カッパ)受容体に選択的に結合して作動活性を示し、従来の止痒薬(抗ヒスタミン薬など)とは異なるメカニズムを有する化合物です。TRK-820は抗ヒスタミン薬などでは抑えられなかった中枢性の痒みを抑えることが可能であり、血液透析患者における既存治療では効果が不十分な痒みに有効性を示します。また血液透析患者の生活の質(QOL=Quality of Life)向上に大きく貢献するものと考えています。
2. オピオイド受容体
受容体とは細胞膜上に存在し、各種生理活性物質を特異的に認識して結合し、生体反応の引き金を引く部分です。受容体は体内に多種類存在し、その種類によって結合できる化合物や、結合後にあらわれる薬理作用が全く異なってきます。オピオイドも受容体に結合して反応を示す物質の一つであり、その受容体がオピオイド受容体です。オピオイド受容体の発見当初は、受容体は1種類であると考えられていましたが、その後の学問の進歩により現在はμ(ミュー)、δ(デルタ)、κ(カッパ)の大きく3種類の受容体に分類できることがわかっています。
3. 作動薬とは
受容体を標的にする薬は、作動薬と拮抗薬に分けられます。作動薬はその受容体を活性化もしくは刺激して、細胞の活動を増減する反応を誘発します。
4. オーファン医薬品
患者数が少なく、かつ確立した治療法が存在しない致死的疾患もしくは慢性的な消耗性疾患を対象にした医薬品に対して、オーファン医薬品の指定が与えられます。

<会社概要>
フレゼニウス メディカル ケアAG&Co KGaA
本社:ドイツ-バドホンブルグ
CEO:Dr Ben J. Lipps
フレゼニウス・メディカル・ケアは、世界で200万人といわれる透析患者に対する透析関連製品およびサービスを提供する世界最大の会社です。フレゼニウス・メディカル・ケアは、北米、欧州、南米、アジア、アフリカにおける2,874ヶ所の自身の透析クリニックを通じて、228,239人の方に透析治療を提供しています。フレゼニウス・メディカル・ケアは、透析機器、透析膜、その他透析時に使用する使い捨て器具などの透析関連製品についても世界最大の供給会社です。