- HOME
- サステナビリティ
- 安全・防災・環境保全
- 生物多様性への取り組み
CSR活動報告(各CSRガイドラインの活動報告) - 安全・防災・環境保全
生物多様性への取り組み
気候変動問題に次いで、近年国際的に注目されているのが「生物多様性」の問題です。人間の活動に欠かせない水、空気、植物、動物、鉱物などの「自然資本」は生物多様性によって支えられています。人間の活動に伴う気候変動、天然資源の枯渇、そして生態系の破壊や生物種の絶滅などによる自然、生物多様性の危機的速度による消滅は、私たちが直面している重大な問題です。そのため、生物多様性の消滅を食い止め、回復に転じていく「ネイチャーポジティブ」に向けた行動を取っていくことの必要性が国際的に議論されています。
東レグループは、生物多様性保全を温室効果ガスの削減と並ぶ地球環境問題の重要なテーマと位置付けています。水処理技術による、安全・安心な飲料水の製造や下廃水の再利用を通じた水資源の保全や繊維のフィルター関連素材による空気の浄化など、事業を通じて生物多様性の保全、ネイチャーポジティブに向けて貢献をしています。
また、全製品の製品安全審査および設備投資時の環境リスク調査においては、環境アセスメントチェックシートを用い、製造時に規制対象物質が排ガスや排水、廃棄物などを通じて法令基準を超過しないことを確認しています。環境アセスメントチェックシートでは、新たに土地を利用する際、生物多様性に関する項目として生産拠点における規制や希少生物の調査の必要性、市民団体などからの要望の有無などを確認することとしています。これらの取り組みを通じて生物多様性への影響を評価し、持続可能な社会の実現を目指しています。
東レグループ 生物多様性基本方針2010年12月制定
基本的な考え方
東レグループは、生物多様性が生み出す自然の恵みに感謝し、生物多様性の保全とその持続可能な利用に努めると共に、生物多様性の保全に資する製品・技術の開発と普及を通じて社会に貢献します。
行動指針
- 事業活動に伴う生物多様性への影響に配慮し、生物多様性の保全と持続可能な利用に努めます。
- 環境に配慮した製品・技術の開発に努め、これらの提供・普及を通じて生物多様性の保全に貢献します。
- 遺伝資源に関する国際的な取り決めを踏まえ、公正な利用に努めます。
- サプライチェーンにおける生物多様性への影響に配慮し、自然との共生に努めます。
- 生物多様性に関する社員の意識の向上に努め、ステークホルダーとのコミュニケーションを通じて、生物多様性を育む社会作りに貢献します。
- ※ 東レグループは、日本経団連「生物多様性宣言(行動指針とその手引き)」および、環境省「生物多様性民間参画ガイドライン」を尊重し活動を進めます。
また、東レグループは、「日本経団連生物多様性宣言」推進パートナーズに参画しています。東レグループの取り組み方針と取り組み内容は、経団連生物多様性宣言イニシアチブにて紹介されています。
さらに、環境省が主体となり2022年4月8日に創設された「生物多様性のための30by30アライアンス」に設立当初から参加しています。
「生物多様性のための30by30アライアンス」とは、2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復させる(ネイチャーポジティブ)というゴールに向け、陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする国際的な目標「30by30目標」の達成を目的として、環境省をはじめとする産官民で設立された有志連合です。
ワーキンググループを中心にした活動
東レグループでは、2010年に、社内横断の生物多様性ワーキンググループを発足し、「東レグループ生物多様性基本方針」に基づいて、課題を策定し、優先順位を付けて取り組みを推進してきました。
2023年にワーキンググループ名を「NP(ネイチャーポジティブ)部会」に改称し、機能も一部見直しました。2024年には「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」の実現に向けた取り組みの推進体制全体を見直しました。
東レグループのサプライチェーンを通じた生物多様性に関する機会とリスクの分析
東レグループの事業活動において、サプライチェーンの上流での原材料調達、水資源・エネルギー資源の利用、自社の製品・サービスの設計、操業時の排出、操業のための土地利用、下流での使用、廃棄、回収、リサイクルなどに起因する生物多様性に関する機会とリスクについて、分析を実施しました。
機会側面としては、航空機などの部材の軽量化につながる製品の提供によるCO2排出量の削減への貢献や、緑地保全、水資源保全につながる製品提供による森林保全や生息地保護、リスク側面としては、水資源、エネルギー資源の使用による自然資本の減少、大気、水域への排出などによる気候変動や環境負荷への影響など、生物多様性にさまざまな影響を与えていると考えています。
そのため、東レグループのサプライチェーンを通じた生物多様性に関する機会とリスクについて、それぞれ以下の関係性マップにまとめています。
東レグループの戦略
東レグループは2018年に「東レグループ サステナビリティ・ビジョン」を策定しました。その中で2050年に向け、「地球規模での温室効果ガスの排出と吸収のバランスが達成された世界(GHG排出実質ゼロの世界)」「資源が持続可能な形で管理される世界」「誰もが安全な水・空気を利用し、自然環境が回復した世界」などを目指すと宣言し、その実現に向けた取り組みを推進しています。
2020年5月には、2030年度までの長期経営ビジョン“TORAY VISION 2030”-持続的かつ健全な成長と社会価値の創造-を、2023年3月には2023年度からの3カ年を対象期間とする中期経営課題“プロジェクト AP-G 2025”「革新と強靱化の経営」-価値創造による新たな飛躍-を発表しました。
その中で、地球環境問題、資源・エネルギー問題などの解決に貢献するグリーンイノベーション(GR)事業と、災害・異常気象対策も含め、医療の充実と健康長寿、公衆衛生の普及促進、人の安全に貢献するライフイノベーション(LI)事業を合わせて、サステナビリティイノベーション(SI)事業と再定義しました。SI事業の供給拡大を通じて、ネイチャーポジティブなどの地球規模の課題の解決に本質的なソリューションを提供していきます。
事業(製品、技術の提供)を通じた取り組み
水処理技術による、安全・安心な飲料水の製造や下廃水の再利用を通じた水資源の保全、繊維のフィルター関連素材による空気の浄化、プラスチック製品のリサイクルや原料のバイオ化、エネルギーの再エネ化や水素化など、事業を通じて生物多様性の保全、ネイチャーポジティブに向けて貢献をしています。
生産活動における取り組み
操業時の排出などによる影響の低減の取り組み
水の循環再利用などによる水の有効活用・適切な管理、VOC(揮発性有機化合物)・SOx(硫黄酸化物)・NOx(窒素酸化物)などの削減や排水処理設備の安定運転・増強などを通じたBOD(生物化学的酸素要求量)・COD(化学的酸素要求量)の低減による大気汚染・水質汚染防止、リサイクル・再利用による廃棄物削減などに取り組んでいます。
緑化保全
東レグループ 緑化基本方針2012年6月制定
- 生物多様性に配慮した自然生態に近い樹林方式で緑化を進め、地域の自然環境保全にも貢献します。
- 工場敷地境界部分を優先的に樹林方式で緑化し、「森に囲まれた工場」を目指します。
- 緑地面積率は各国・地域の規制や周辺環境との調和に配慮し、各工場ごとに目標を設定して緑化を推進します。
東レ(株)および国内関係会社の事業(工)場は、操業開始時より育んできた良好な自然樹林※1を極力維持するため、「東レグループ緑化基本方針」※2に沿って工場緑化方針・計画を作成し、それに基づく緑化保全活動を行っています。この持続性ある緑化保全活動は地域社会の環境保全にも貢献しています。
東レ(株)の工場周辺に環境保全林をつくるという緑化は、三島工場において、1973年(昭和48年)秋に約4,000人の社員が寺社や山に行き、そこに落ちているどんぐりを拾うことから始まりました。横浜国立大学で植物生態学を研究していた故宮脇昭教授のご指導のもと、拾ったどんぐりを各職場で苗に育て、伸びた苗を社員たちが汗を流しながら1本ずつ植えていきました。
およそ50年近くが経過し、東レ(株)の三島工場では、どんぐりから育てたタブ、クスノキ、シラカシなどの木々が1万m²余りに広がっています。
東レ(株)では三島工場をはじめ12事業(工)場と基礎研究所(現 基礎研究センター)で「鎮守の森方式」※3により合わせて約20万m²の緑化を行い、環境保全に努めています。
- ※1 自然樹林:地域の潜在自然植生に基づく樹種で造成した樹林もしくは自然林。
- ※2 1973年に制定した緑化方針を2012年に発展的に改訂し、制定しました。
- ※3 鎮守の森方式:神社の鎮守の森をモデルに、その土地に本来生育していた樹木を用い自然林に近い状態で再現する緑化方式です。地域の遺伝子を持った樹林を作るため、工場近隣の神社や森からドングリを拾って来て、苗を育て工場に森を作っていきました。
東レ(株)三島工場
- 植樹直後(1973年)
- 現在の様子(2023年撮影)
東レ(株)東海工場
- 緑化作業の様子(1976年)
- 現在の様子(2023年撮影)
なお、東レ(株)東海工場を含む12社で協力して形成している緑地帯が、「知多半島グリーンベルト」として自然共生サイト(環境省)の認定を受けました(2023年10月)。この自然共生サイトは、ネイチャーポジティブの実現を図ることを目的とし、民間の取り組みなどによって生物多様性の保全が図られている区域を認定するものです。今回の認定は、緑地の維持管理だけでなく、行政、地元大学生、専門家、NPOとの協力や水辺ビオトープや生き物マウンドなどの継続的な整備を通して、かつて里山で暮らしていた生き物も確認されたことで、周辺地域も含めた生物多様性の向上への貢献を評価されました。
また、工場緑化などの取り組みが評価された結果、2022年に公益財団法人都市緑化機構が運営する「SEGES(シージェス:社会・環境貢献緑地評価システム)」の「そだてる緑」部門において「Excellent Stage2」の認定を取得するとともに、愛知県の「あいち生物多様性企業認証制度」の認定を取得しています。
サプライチェーンでの取り組み
生物多様性保全の取り組みの一つとして、製品製造に必要な原材料において、生物由来原料の使用状況を定期的に調査するとともに、生物多様性への影響を開発段階で確認するルールを全製品に展開し、運用しています。
その中でも、パーム油については、重点フォロー原料と位置づけ、2020年度から対象サプライヤーに対して認証品を使用しているか否かの調査と、認証品への切り替え可否についての調査を進めました。
引き続き、環境保全や人権尊重に配慮したパーム油の使用を推進します。
加えて、東レグループは生物多様性への配慮や環境への影響の最小化などの内容を含む「東レグループCSR調達行動指針」を策定し、サプライヤーにその遵守を求めています。
また、お客様が東レグループ製品を使用した後に残る梱包荷資材の回収と再使用拡大も推進しています。
社会貢献活動としての取り組み
東レグループでは、「良き企業市民としての社会貢献活動」を通じた生物多様性保全を進めています。地域の学生などと連携した工場における水辺ビオトープの造成、市区町村やNPOと連携した河川・海岸の清掃や植樹などさまざまな取り組みを進めています。
詳細は以下のページをご覧ください。
森林破壊への対応
世界で急速に進む森林破壊は、野生生物の絶滅や気候変動の激化、感染症の拡大など、地球環境や人々の暮らしに大きな影響を及ぼすと考えられています。
東レグループは環境10原則の「1. 環境保全の最優先」にて全ての事業活動において法規制・協定を遵守するとともに、生物多様性に配慮し、環境保全を最優先した製造、取り扱い、使用、販売、輸送、廃棄を行うこととしており、森林を守るために最大限の配慮を行って事業活動をしています。
東レグループの活動例
TNFD提言に基づく開示
東レ(株)は、2024年1月に、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD : Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)が2023年9月に公表した情報開示に関する提言(TNFD提言)への賛同を表明するとともに、TNFD Early Adopter(TNFD提言の早期採用者)に登録しました。
また、当社は、TNFDの議論をサポートする組織であるTNFDフォーラムにも参画しています。
現在、LEAPアプローチに基づく調査、分析を進めており、その結果や東レグループの取り組み内容を取りまとめて、東レグループ TNFDレポート(仮称)として公開する予定です。
マテリアリティへの適応
東レグループは、2023年6月にマテリアリティ11項目を選定しました。
CSRのマテリアリティのひとつに、「自然環境の回復への貢献」を挙げ、安全な水・空気に貢献する製品や環境低負荷の製品提供、緑地保全や化学物質の適切な管理など、自然環境の回復(ネイチャーポジティブ)に貢献していきます。
ガバナンス体制
生物多様性・自然資本に関する取り組みは、気候変動、資源循環の取り組みと互いに影響し合う関係です。
そのため、GHG排出量削減などの環境負荷低減に関する東レグループの取り組みを推進する気候変動対策プロジェクトの傘下に、生物多様性・自然資本への負荷低減の全体戦略検討とその取り組みを全社的に推進するNP部会を設置しました。NP部会は、気候変動、資源循環の取り組みを推進する部会と連携して、生物多様性・自然資本の依存と影響、機会・リスクを特定、評価し、優先順位をつけて東レグループの取り組みを推進していきます。
また、NP部会の活動における重要課題については、取締役会の協議機関である経営会議で随時審議します。NP部会の活動の進捗、経営会議での審議結果は取締役会で年1回以上報告され、取締役会はそれらを適切にモニタリングするとともに、経営判断に際して、生物多様性・自然資本に関する問題を重要な要素のひとつとして考慮し、監督と総合的な意思決定を行います。
LEAPアプローチに基づく調査、分析
東レグループの生物多様性・自然資本関連の依存、インパクト、機会およびリスクにおいて、関係性が高いと想定される事業分野、活動、バリューチェーン、地域などを重点領域として設定するため、分析ツールのひとつとして推奨されているENCOREを用いて調査を行いました。
その結果、東レグループの事業は、地下水や地表水への依存が大きく、水の利用、大気汚染物質、固形廃棄物などへの影響が大きい可能性があることがわかりました。
現在、さらに調査、分析を進めています。
「CSRロードマップ 2025」におけるCSRガイドライン3「安全・防災・環境保全」の主な取り組みはこちらをご覧ください。