東レグループの物流活動

社外との連携

物流基本方針説明会の開催

物流基本方針説明会(2024年度開催時)物流基本方針説明会(2024年度開催時)

東レ(株)は、物流に関わる環境負荷軽減と品質向上に継続的に取り組むため、毎年「東レ物流基本方針説明会」を物流会社向けに開催し、東レの物流施策に対する理解推進と、パフォーマンス向上を図っています。2024年度は、オンラインと会場の併用形式で開催し、64社の物流会社にご参加いただきました。

「ホワイト物流」推進運動への参加と物流環境改善の取り組み

東レ(株)は、国民生活や産業活動に必要な物流機能を安定的に確保するとともに、経済の成長に寄与することを目的とした「ホワイト物流」推進運動※1に参加しています。
本運動においては、以下の自主行動宣言に沿って、取引先や物流事業者との相互理解と協力のもと、物流環境の改善に積極的に取り組んでいます。

  1. ※1 「ホワイト物流」推進運動:深刻化が続くトラック運転者不足に対して、国土交通省、経済産業省、農林水産省の3省が連携し、荷主企業と物流事業者が参画する取り組み。トラック輸送の生産性の向上・物流の効率化、女性や60代以上の運転者なども働きやすい、より「ホワイト」な労働環境の実現を目指す。
取り組み項目 取り組み内容
物流の改善提案と協力 トラック運転者の拘束時間増につながる附帯作業などの削減について真摯に対応します。
パレットなどの活用 荷役時間削減のため、リフト荷役が可能な荷姿(パレットなど)の拡大を図ります。
リードタイムの延長 輸送距離に応じた十分なリードタイムを確保します。
法令遵守状況の考慮 契約する物流事業者を選定する際には、関係法令の遵守状況を最優先事項として考慮します。
働き方改革等に取り組む物流事業者の積極的活用 働き方改革、輸送の安全性向上、物流品質改善に取り組む物流事業者を積極的に活用します。
異常気象時等の運行の中止・中断等 異常気象、地震等が発生した場合は、トラック運転者の安全を最優先事項として考慮します。

フィジカルインターネット実現会議・化学品ワーキンググループによる物流の2024年問題の対応について

日本の物流業界では、小口貨物を中心とする物流が増加する一方で、ドライバーや船員の高齢化、人手不足を背景に、輸送力不足の状況が続いています。さらに、いわゆる物流の2024年問題も加わり、このままでは2030年に輸送力が34%不足するといわれており、化学業界にとって極めて重要な課題のひとつとなっています。
また、化学品物流は、貨物の物性・梱包形態・重量などの特殊性により、輸送方法や条件も多岐にわたるため、個社単位では効果的な施策を講じることが難しい環境にあります。
こうした課題の解決に向けて、東レ(株)は、三菱ケミカルグループ、三井化学(株)、東ソー(株)とともに事務局を務め、経済産業省・国土交通省が主導するフィジカルインターネット実現会議内に、化学品ワーキンググループを2023年7月に設置しました。
化学品ワーキンググループには、荷主事業者や物流事業者を中心とする78団体(77企業・1大学、2024年12月時点)に加え、経済産業省、国土交通省、厚生労働省の関係部署、日本化学工業協会、石油化学工業協会などが参加しており、2024年3月29日には自主行動計画を発表しました。詳細はこちら(469.8KB)PDFからご確認ください。
また、参加企業のうち、三菱ケミカルグループ、三井化学(株)、東ソー(株)、(株)プライムポリマー、東レ(株)は、2024年9月から12月にかけて、政府がフィジカルインターネット実現会議で推進している物流データプラットフォームや物流情報標準ガイドラインを活用した実証実験を、国土交通省および経済産業省の補助金を活用して実施しました。この実証では、四日市~市原のコンビナート間往復物流の実地検証に加え、中京~北陸間における共同物流のシミュレーション、市原~東北間における輸送効率の分析を行い、共同輸送の効果と共同物流プラットフォームの有用性を検証しました。特に実地検証においては、トラック積載率が20ポイント改善し、CO2排出量は28%削減されるなど、顕著な効果が確認できました。詳細はこちらからご確認ください。

構内物流改革による荷役作業の改善

東レ(株)三島工場のフィルム倉庫では、トラックが入場してから積み込みを開始するまでに待機時間が発生することが課題となっていました。この課題に対し、「ホワイト物流」の取り組みの一環として、ドライバーがウェブサイト上で入場前に積み込み作業の混雑状況を確認し、適切なタイミングで積み込み予約ができるシステムを2021年度に導入したことで、待機時間の削減につながっています。
また、2022年度には、これまで紙で出力していた出荷関連帳票をタブレット端末で電子化したことにより、帳票の受け渡しなどが不要となり、作業員やドライバーの負担を軽減に加え、ペーパーレス化にも寄与しています。

取り組み項目 システム導入前 システム導入後
トラックの平均待機時間削減 56分/車 15分/車(73%削減)
出荷関連帳票の電子化 120枚/日 0枚/日

なお、東レ(株)の他の工場でも同様の取り組みを進めており、岐阜工場では2022年度から2023年度にかけて積み込み予約システムと帳票ペーパーレス化を導入しました。また、名古屋事業場・岡崎工場・千葉工場では積み込み予約システムを導入しました。
今後も荷主として物流の効率化に貢献すべく、構内物流の改革を推進していきます。

スマートパレットの活用による物流の生産性向上

東レ(株)は、ユーピーアール(株)が開発したアクティブRFIDタグ搭載スマートパレットの活用に、業界で初めて取り組んでいます。通常、パレットは紛失や流出を防ぐため、輸送や保管の過程で別のパレットに交換されますが、その都度、積載製品の載せ替えが必要となります。
一方、スマートパレットは、搭載されたアクティブRFIDタグにより、離れた場所からでもパレットの入出在庫を管理できるため、パレットの交換が不要になります。
このスマートパレットを活用することで、東レ製品を生産から保管、運送、顧客での使用に至るまで同一のパレットで運用できることになり、トラック運転者や倉庫担当者の荷役作業の解消や積み下ろし時間の短縮を実現し、労働環境の改善と物流生産性の向上を図りました。
さらに、空パレットの回収には当社の荷資材回収体制を活用することで、回収に伴うCO2排出量も削減しています。

物流に関わる環境負荷低減への取り組み

物流におけるCO2排出量原単位の前年対比削減率

■報告対象範囲
東レグループ(特定荷主:東レ、TAF)
■目標
2024年度 / 1.0%

実績(2024年度)

5.5%(増加)

東レグループでは、輸送距離の短縮、環境負荷の少ない船舶や鉄道での輸送への切り替え(モーダルシフト)、輸送効率の向上などの取り組みを積極的に実施することで、物流におけるCO2排出量の削減に努めています。
2024年度の東レグループ(特定荷主※2)での物流におけるCO2排出量※3は合計26.9千トン-CO2で、製品・原料輸送量の増加を主な要因として、前年度比で1.5千トン-CO2(5.9%)増加しました。また、東レグループのCO2排出量原単位※4も同様に、輸送量の増加を受けて前年度より増加しました。その結果、2024年度のCO2排出量原単位増減率は、2014年度を基準(=100)として74.5となり、前年度(2023年度)比で5.5%の増加となりました。直近5年間では年平均6.6%削減しています。
一方、東レ(株)での2024年度の物流におけるCO2排出量は22.9千トン-CO2で、前年度比で1.0千トン-CO2(4.6%)増加しましたが、まとめ輸送や積載率の向上、モーダルシフトなどの取り組みにより213トン-CO2の排出を抑制しました。
東レ(株)のCO2排出量原単位については、継続的なモーダルシフト推進に加え、原単位の分母となる売上高が増加したことにより、単年度では前年度(2023年度)比2.6%の減少となりました。直近5年間でも年平均7.8%の減少を達成しており、年平均1%以上の削減義務を確実に果たしています。
東レグループは今後も、環境物流の推進を通じて、物流におけるCO2排出量の削減に取り組んでいきます。

  1. ※2 特定荷主:年間の貨物輸送量が合計3,000万トンキロ以上の荷主。東レグループで特定荷主に指定されているのは東レ(株)、東レフィルム加工(株)(TAF)の2社。
  2. ※3 物流におけるCO2排出量:「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(改正省エネ法)」で定める“貨物輸送事業者に委託する貨物の輸送に関するCO2排出量”。
  3. ※4 CO2排出量原単位:物流におけるCO2排出量÷以下の物流に密接に関連する数値
    東レ(株)=売上高
    TAF=出荷量
    特定荷主は、CO2排出量原単位を中長期的にみて年平均1%以上低減する努力をするよう義務づけられている。
物流におけるCO2排出量およびCO2排出量原単位の推移(東レグループ特定荷主)
物流におけるCO2排出量およびCO2排出量原単位の推移(東レグループ特定荷主)
  1. 東レグループ原単位増減率=特定荷主各社の原単位増減率×各社のCO2排出量/全体のCO2排出量の合計
    各社の原単位増減率=CO2排出量/物流に密接に関連する数値の増減率(2014年度=100)

モーダルシフトの推進によるCO2削減量(東レ(株))

取り組み内容 CO2削減量(千トン)
まとめ輸送、積載率の向上など 0.034
在庫拠点の見直し、最寄港揚げなど 0.027
モーダルシフト 0.152
合計 0.213

梱包荷資材の回収と再使用拡大

東レグループは、お客様が製品を使った後に残る荷資材を、グローバル規模で回収・再使用する体制を構築しています。
東レ(株)における2024年度の荷資材回収金額は6.2億円で、前年度比0.3億円(5.4%)の増加となりました。
主にフィルム製品での出荷量増加に伴い、回収量も増加しました。
また、回収センターでの一時在庫分など、回収途上にある荷資材在庫の情報などを社内で共有し、新品購入量の削減に努めました。

荷資材回収の仕組み(東レ(株))
荷資材回収の仕組み(東レ(株))
荷資材回収金額の推移(東レ(株))
荷資材回収金額の推移(東レ(株))

東レ滋賀事業場でのEVトラック導入(東洋運輸(株))

EVトラック出発式EVトラック出発式

東洋運輸(株)は、東レの工場で初の試みとして、滋賀事業場内で貨物を運搬する車両にEVトラックを導入しました。これによるCO2排出量の削減効果は約1トン(切り替え前に比べ99.7%削減)となります。

モーダルシフトの推進

東レ(株)では、環境物流の推進を「物流基本方針」に定め、物流における環境への配慮と、コストダウンによる競争力強化の両立を目指し、トラックから鉄道・船舶輸送への切り替え(モーダルシフト)を積極的に推進しています。
加えて、近年深刻化しているドライバー不足によるトラック輸送の脆弱化への対策としても、モーダルシフトは有効な手段です。
2024年(1-12月)のモーダルシフト比率は、トラック輸送から鉄道輸送への切り替えを積極的に検討・拡大した結果、前年比1.0ポイント増の31.3%となりました。
今後も、製品や原料などあらゆる輸送においてモーダルシフトの可能性を追求するとともに、関係先との連携をさらに深め、流通過程における環境負荷の低減に十分配慮した環境物流を推進していきます。

モーダルシフト比率の推移(東レ(株))
モーダルシフト比率の推移(東レ(株))

エコレールマーク、エコシップマークの取得

東レ(株)は、環境にやさしい鉄道貨物輸送に積極的に取り組む企業として、国土交通省と(公社)鉄道貨物協会より「エコレールマーク取組企業」に認定されています。繊維製品「東レ テトロン」およびPBT樹脂製品「トレコン」は、エコレールマーク商品としての認定も受けています。
さらに、鉄道輸送が困難なフィルム製品においても、2017年度に「エコシップマーク」を取得しました。この制度は、船舶輸送への切り替えを推進し、環境負荷の少ない海上輸送を一定以上の割合で利用する事業者を認定するものです。

エコレールマーク、エコシップマークの取得

自然災害リスクへの対応

主要社外在庫拠点の内、自然災害リスクを評価し、重大なリスクへの対策が完了した拠点の比率(拠点数・%)

■報告対象範囲
東レ(株)
■目標
2024年度 75%以上

実績(2024年度)

70.6%

東レ(株)では、近年頻発する台風や豪雨などの自然災害による被害を防止し、または最小限に抑えるため、国内の社外倉庫拠点における自然災害リスクを継続的に調査・把握し、社外倉庫と共同で対策を講じています。
主要社外倉庫68拠点について、国や自治体が発行するハザードマップなどの立地環境情報や倉庫建屋の構造などをもとに自然災害リスクを把握し、リスクが高いと判断された拠点には現地調査を含む評価を実施しています。調査結果を踏まえ、社外倉庫と対策を協議の上、改善を進めています。
具体的な対策としては、気象庁が発表する洪水浸水危険度情報を活用した防災行動マニュアルの作成、ウォーターゲートの設置、床面のかさ上げなどを実施しています。
2021年度から2024年度にかけて、主要在庫拠点68拠点のうち60拠点のサーベイを完了し、そのうち28拠点はリスク無し、32拠点はリスク有りと評価しました。リスク有りとされた32拠点のうち20拠点では、対策を完了しています。この結果、68拠点中48拠点(70.6%)において、リスクが無いか、対策が完了した状態になっています。
2025年度も、さらに現地調査と協議を進め、リスク低減を図っていきます。

自然災害リスクへの対応
  • ウォーターゲートの設置ウォーターゲートの設置
  • 床面のかさ上げ床面のかさ上げ

物流安全・品質への取り組み

東レ(株)では、輸送保管品質向上プロジェクトを推進しており、物流パートナーに対して事故分析表や物流品質向上レポートの発行、現場ラウンドや品質会議の開催などを通じて、物流安全・品質向上・トラブル削減に向けた取り組みを一体となって進めています。さらに、年1回、品質向上に大きく貢献した物流パートナーを表彰※5することで、輸送・保管時における製品の破損、遅配・誤配などのトラブル防止に努めています。

  1. ※5 2024年度表彰パートナー(50音順)
    伊予商運(株)/遠州トラック(株)/四国名鉄運輸(株)/(株)須賀川東部運送/ダイセー倉庫運輸(株)/(株)中央倉庫/長浜冷蔵(株)/三井倉庫(株)

物流トラブル発生件数の推移

昨今、物流業界の人手不足により、輸送途上での製品破損などの事故が増加傾向にあります。
東レ(株)においても、小口貨物などを扱う路線輸送において、製品破損事故や誤配などが増加傾向にあることから、事故件数の多い物流パートナーを中心に改善策を協議し、現地訪問や教育活動などを通じて物流品質の向上に努めました。その結果、2024年度の事故件数は544件となり、前年度比で8%減少しました。
引き続き、物流パートナー各社と一体となって、物流品質の向上に努めていきます。

物流事故件数の推移(東レ(株))
物流事故件数の推移(東レ(株))

物流における法令遵守や安全に関する取り組み

物流における安全保障貿易管理の取り組み

東レ(株)では、当社製品の安全保障貿易管理を徹底するため、リスト規制品を寄託している社外倉庫拠点に対し、安全保障貿易管理に関する講習を継続的に実施しています。
2024年度は、10社13拠点を対象に、安全保障貿易管理の説明に加え、過去のヒヤリハット事例を踏まえたリスト規制品の取り扱いに関する注意点などを説明し、適切に管理・取り扱いいただくことを改めて要請しました。

物流パートナーへの第三者認証取得の推奨

東レ(株)では、流通過程における法令遵守、品質向上、環境保全などの観点から、物流パートナーに対し、ISO9001やISO14001をはじめ、グリーン経営認証※6やGマーク制度※7などの取得を推奨しています。これらの取り組みを通じて、物流パートナーと協働しながら、CSRへの取り組みを推進しています。

  1. ※6 グリーン経営認証:グリーン経営(環境負荷の少ない事業運営)推進マニュアルに基づいて環境改善に向けた取り組みを一定のレベル以上行っている事業者に対して、公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団が審査の上、認証・登録するもの。
  2. ※7 Gマーク制度:国土交通省が推奨する法令遵守、安全性に対する積極的な取り組みなどを全日本トラック協会に設置された安全性評価委員会が、事業所ごとに評価し、基準をクリアした事業所を安全性優良事業所として認定する制度。

イエローカード※8による緊急時対応

輸送車両の乗務員は、事故発生時に被害の拡大を防ぐための応急処置手順を記載したイエローカードを携行しています。
また、緊急連絡体制の整備や緊急訓練の実施により、万が一事故が発生した場合には、事故処理をサポートする要員を速やかに現場に派遣できる体制を整備しています。

  1. ※8 イエローカード:危険有害性物質の品名、該当法規、危険有害性、事故発生時の対応処置、緊急通報、緊急連絡先、災害拡大防止措置の方法などを簡潔に記載したカード。

過積載防止の取り組み

貨物自動車の過積載は、運行上危険なだけでなく、路面や道路構造物へのダメージ、さらには騒音・振動の原因となります。東レ(株)では、過積載の発生防止に全力で取り組んでいます。

輸出入でのコンプライアンス・セキュリティ対策

グローバルオペレーションの拡大に伴い、輸出入における法令遵守および安全施策の一環として、東レインターナショナル(株)の米国法人ではC-TPAT※9を取得しています。
また、物流パートナーのコンプライアンスおよびセキュリティ対策の強化、ならびに輸出入の効率化を実現するため、起用する物流パートナーに対しても、国内外でAEO※10などの取得を促しています。

  1. ※9 C-TPAT : Customs-Trade Partnership Against Terrorismの略で、2004年11月に米国税関国境警備局によって導入された自主参加型のプログラム。米国の輸入に携わる分野の民間事業者との国際的な連携により、グローバルサプライチェーンを通じたセキュリティの確保、強化を目的としている。
  2. ※10 AEO : Authorized Economic Operatorの略で、2006年12月にEUで導入された、貨物のセキュリティ面のコンプライアンスに優れた輸出入者などに税関手続きに関する優遇措置を与える制度。日本でも2007年に関税法が改正され、優良事業者に対する税関手続きの優遇措置および措置を受けるための資格制度が制定された。

「CSRロードマップ 2025」におけるCSRガイドライン9「持続可能なサプライチェーンの構築」の主な取り組みはこちらをご覧ください。