CSR活動報告(各CSRガイドラインの活動報告) - 持続可能なサプライチェーンの構築

東レグループの物流活動

社外との連携

物流基本方針説明会の開催

物流基本方針説明会(2023年度開催時)物流基本方針説明会(2023年度開催時)

東レ(株)は、物流に関わる環境負荷軽減と品質向上に継続的に取り組むために、毎年、物流会社向けに「東レ物流基本方針説明会」を開催し、東レの物流施策への理解推進とパフォーマンス向上を図っています。2023年度はオンラインと会場を併用して開催し、物流会社71社に参加いただきました。

「ホワイト物流」推進運動への参加と物流環境改善の取り組み

東レ(株)は、国民生活や産業活動に必要な物流機能を安定的に確保するとともに、経済の成長に寄与することを目的とした「ホワイト物流」推進運動※1に参加し、以下の自主行動宣言に沿って、取引先や物流事業者との相互理解と協力のもと、物流環境の改善に積極的に取り組んでいます。

  1. ※1 「ホワイト物流」推進運動:深刻化が続くトラック運転者不足に対して、国土交通省、経済産業省、農林水産省の3省が連携し、荷主企業と物流事業者が参画する取り組み。トラック輸送の生産性の向上・物流の効率化、女性や60代以上の運転者なども働きやすい、より「ホワイト」な労働環境の実現を目指す。
取り組み項目 取り組み内容
物流の改善提案と協力 トラック運転者の拘束時間増につながる附帯作業などの削減について真摯に対応します。
パレット等の活用 荷役時間削減のため、リフト荷役が可能な荷姿(パレット等)の拡大を図ります。
リードタイムの延長 輸送距離に応じた十分なリードタイムを確保します。
法令遵守状況の考慮 契約する物流事業者を選定する際には、関係法令の遵守状況を最優先事項として考慮します。
働き方改革等に取り組む物流事業者の積極的活用 働き方改革、輸送の安全性向上、物流品質改善に取り組む物流事業者を積極的に活用します。
異常気象時等の運行の中止・中断等 異常気象、地震等が発生した場合は、トラック運転者の安全を最優先事項として考慮します。

「フィジカルインターネット実現会議・化学品ワーキンググループ」による「物流の2024年問題」の対応について

日本の物流業界は、小口貨物を中心とする物流が増加する一方で、ドライバーや船員の高齢化、人手不足を背景に、輸送力不足の状況が続いています。さらにいわゆる「物流の2024年問題」も加わり、このままでは2030年に物流の輸送力は34%不足するといわれており、化学業界にとって極めて重要な課題のひとつとなっています。また、化学品物流は貨物の物性・梱包形態・重量などの特殊性により、輸送方法・条件も多岐にわたるため、個社単位では効果的な施策を打つことが難しい環境にあります。
これらの課題解決に向け東レ(株)は、三菱ケミカルグループ、三井化学(株)、東ソー(株)の4社を事務局として、経済産業省・国土交通省が主導する「フィジカルインターネット実現会議」内に、「化学品ワーキンググループ」を2023年7月に設置しました。
「化学品ワーキンググループ」には、現在、荷主事業者、物流事業者を中心とする79企業(2024年7月時点)、日本化学工業協会、石油化学工業協会、経済産業省・国土交通省の関連各部署などが参加しており、2024年3月29日に自主行動計画を発表しました。詳細はこちらからご確認ください。

構内物流改革による荷役作業の改善

東レ(株)三島工場のフィルム倉庫では、トラックが入場してから積み込みを開始するまでに待機時間が発生することが課題となっていました。この課題に対し、「ホワイト物流」の取り組みの一環として、ドライバーがウェブサイト上で入場前に積み込み作業の混雑状況を確認し、適切なタイミングで積み込み予約ができるシステムを2021年度に導入したことで待機時間を削減しています。
また、2022年度にはこれまで紙で出力していた出荷関連帳票を、タブレット端末を活用し電子化したことで、帳票の受け渡しなどが不要となり、作業員やドライバーの負担を軽減しています。さらに、ペーパーレス化にも寄与しています。

取り組み項目 効果
・トラックの平均待機時間削減 導入前56分/車
導入後15分/車(73%削減)
・出荷関連帳票の電子化 導入前120枚/日
導入後0枚/日

なお、東レ(株)の他の工場でも同様の取り組みを進めており、岐阜工場では2022年度から2023年度にかけて積み込み予約システムと帳票ペーパーレス化を導入し、名古屋事業場・岡崎工場・千葉工場では積み込み予約システムを導入しました。今後も荷主として物流効率化に貢献すべく構内物流改革を推進していきます。

スマートパレットの活用による物流の生産性向上

東レ(株)は、ユーピーアール(株)が開発したアクティブRFIDタグ搭載スマートパレットの利用に業界で初めて取り組んでいます。通常、パレットは紛失や流出を防ぐため、輸送や保管過程で別のパレットに交換、その都度、積載製品を載せ替えしなければなりません。一方、スマートパレットは搭載されたアクティブRFIDタグで離れた場所からパレットの入出在庫を管理することが可能となるため、パレットの交換が不要になります。このスマートパレットを活用することで、東レ製品を生産から保管、運送、顧客で使用されるまで同一のパレットを利用することにより、トラック運転者や倉庫担当者の荷役作業の解消や積み下ろし時間を短縮し、労働環境の改善と物流生産性の向上を図りました。さらに、空パレットの回収に当社の荷資材回収体制を活用することで、回収に係るCO2排出量も削減しています。

物流に関わる環境負荷低減への取り組み

物流におけるCO2排出量原単位の前年対比削減率

■報告対象範囲
東レグループ(特定荷主:東レ、TAF)
■目標値
2023年度 / 1.0%

実績値(2023年度)

11.5

東レグループは、輸送距離の短縮、環境負荷の少ない船舶や鉄道での輸送への切り替え(モーダルシフト)、輸送効率の向上などの取り組みを積極的に実施することで、物流におけるCO2排出量の削減に努めています。
東レグループ(特定荷主※2)での2023年度の物流におけるCO2排出量※3の合計は、25.4千トンで、輸送量の減少などを主因に前年度比で2.4千トン(8.7%)減少しました。
東レグループのCO2排出量原単位※4は、特に東レ(株)において分母となる売上高が増加したため、減少しました。その結果、2023年度の東レグループCO2排出量原単位増減率は、2014年度を基準(=100)として、70.6となり前年度(2022年度)比11.5%減少しました。
東レ(株)での2023年度の物流におけるCO2排出量は21.9千トンで、まとめ輸送や積載率の向上、モーダルシフトなどで114トンを削減しました。加えて、主に樹脂、フィルム製品の輸送量が減少したため、前年比2.1千トン(8.9%)の減少となりました。
東レ(株)でのCO2排出量原単位については、原単位の分母となる売上高が増加した一方で、CO2排出量は減少したため、単年では前年度(2022年度)比13.6%減少しました。直近5年間でも年平均6.2%減少しており、年平均1%以上低減する義務を確実に果たすことができています。
東レグループは今後も環境物流の推進による物流におけるCO2排出量の削減に取り組んでいきます。

  1. ※2 特定荷主:年間の貨物輸送量が合計3,000万トンキロ以上の荷主。東レグループで特定荷主に指定されているのは東レ(株)、東レフィルム加工(株)の2社。
  2. ※3 物流におけるCO2排出量:「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(改正省エネ法)」で定める“貨物輸送事業者に委託する貨物の輸送に関するCO2排出量”。
  3. ※4 CO2排出量原単位:物流におけるCO2排出量÷以下の物流に密接に関連する数値
    東レ(株)=売上高
    東レフィルム加工(株)(TAF)=出荷量
    特定荷主は、CO2排出量原単位を中長期的にみて年平均1%以上低減する努力をするよう義務づけられている。
物流におけるCO2排出量およびCO2排出量原単位の推移(東レグループ特定荷主)
物流におけるCO2排出量およびCO2排出量原単位の推移(東レグループ特定荷主)
  1. グラフの修正について
    2019年度から2022年度にかけてTAFのCO2排出量およびCO2排出量原単位の修正を行ったため、当該期間のグラフの各種数値も遡って修正しています。
  2. 東レG原単位増減率=特定荷主各社の原単位増減率×各社のCO2排出量/全体のCO2排出量の合計
  3. 各社の原単位増減率=CO2排出量/物流に密接に関連する数値の増減率(2014年度=100)

モーダルシフトの推進によるCO2削減量(東レ(株))

取り組み内容 CO2削減量(千トン)
まとめ輸送、積載率の向上など 0.070
在庫拠点見直し、最寄港揚げなど 0.036
モーダルシフト 0.008
合計 0.114

梱包荷資材の回収と再使用拡大

東レグループは、お客様が製品を使った後に残る荷資材を、グローバル規模で回収・再使用する体制を構築しています。
東レ(株)における2023年度の荷資材回収金額は5.9億円で、前年度比0.6億円(9.2%)減少となりました。
繊維・フィルムでの出荷量の減少に伴い回収量も減少しました。また、回収センターでの一時在庫分など、回収途上にある荷資材在庫の情報などを社内共有し、新品購入量の削減に努めました。

荷資材回収の仕組み(東レ(株))
荷資材回収の仕組み(東レ(株))
荷資材回収金額の推移(東レ(株))
荷資材回収金額の推移(東レ(株))

モーダルシフトの推進

東レ(株)は、環境物流の推進を「物流基本方針(2022年3月改定)」に定め、物流における環境への配慮とコストダウンによる競争力強化の両立を目指し、トラックから鉄道・船舶輸送への切り替え(モーダルシフト)を積極的に推進してきました。加えて、昨今のドライバー不足によるトラック輸送の脆弱化への対策としても、モーダルシフトは有効です。
2023年(1-12月)のモーダルシフト比率は、トラック輸送から鉄道輸送への切り替えを積極的に検討し、利用拡大を図ったことで前年比2.9ポイント増加し30.3%となりました。
今後も製品・原料などのあらゆる輸送において、モーダルシフトの可能性を追求するとともに、関係先との連携をさらに深め、流通過程における環境負荷低減に十分に配慮した環境物流を推進していきます。

モーダルシフト比率の推移(東レ(株))
モーダルシフト比率の推移(東レ(株))

エコレールマーク、エコシップマークの取得

東レ(株)は、国土交通省と(公社)鉄道貨物協会から、環境にやさしい鉄道貨物輸送に積極的に取り組んでいる企業として「エコレールマーク取組企業」に認定されており、繊維製品「東レ テトロン」とPBT樹脂製品「トレコン」で「エコレールマーク商品」の商品認定を受けています。さらに2017年度に、鉄道輸送が困難なフィルム製品において「エコシップマーク」を取得しました。これは、船舶輸送への切り替えを推進し、環境負荷の少ない海上輸送を一定以上の割合で利用する事業者が認定される制度です。

エコレールマーク、エコシップマークの取得

自然災害リスクへの対応

主要社外在庫拠点の内、自然災害リスクを評価し、重大なリスクへの対策が完了した拠点の比率(拠点数・%)

■報告対象範囲
東レ(株)
■目標値
2023年度 60%以上

実績値(2023年度)

59%

東レ(株)では、近年、頻発する台風や豪雨などの自然災害による被害を食い止める、または最小限に抑えるため、国内の社外倉庫拠点における自然災害リスクを継続的に調査・把握し、社外倉庫と共同で対策を講じています。
主要社外倉庫68拠点のうち、国や自治体発行のハザードマップなどの立地環境や、倉庫建屋の構造などから自然災害リスクを把握し、リスクが高いと判断した拠点について現地調査を含む評価を行い、調査結果を踏まえて、社外倉庫と対策を協議し改善を進めています。具体的には、気象庁が発表する洪水浸水危険度情報をもとにした防災行動マニュアルの作成、ウォーターゲートの設置や床面の嵩上げなどを実施しています。
2021年度から2023年度にかけて、主要在庫拠点68拠点のうち47拠点についてサーベイが完了し、そのうち28拠点はリスク無し、19拠点はリスク有りと評価しました。リスク有りと評価した19拠点のうち12拠点については、対策を完了しています。このため、68拠点中40拠点(59%)において、リスク無しまたは対策完了となりました。2024年度も、さらに現地調査と協議を進め、リスク低減を図っていきます。

自然災害リスクへの対応
  • (例)ウォーターゲートの設置(例)ウォーターゲートの設置
  • (例)床面のかさ上げ(例)床面のかさ上げ

物流安全・品質への取り組み

東レ(株)では「輸送保管品質向上プロジェクト」を推進しており、物流パートナーへの「事故分析表」や「物流品質向上レポート」の発行、現場ラウンドや品質会議の開催など、物流パートナーと一体となって物流安全・品質向上・トラブル削減を進めています。さらに年1回、品質向上に大きく貢献した物流パートナーを表彰※5することで、輸送や保管時における製品の破損、遅配・誤配などのトラブル防止に努めています。

  1. ※5 2023年度表彰パートナー(50音順)
    伊予商運(株)/楠原輸送(株)/四国名鉄運輸(株)/澁澤倉庫(株)/ダイセー倉庫運輸(株)/長浜冷蔵(株)/(株)富士ロジテックホールディングス

物流トラブル発生件数の推移

昨今、物流業界の人手不足により、輸送途上での製品破損などの事故が増加傾向にあります。
東レ(株)においても、小口貨物などを扱う路線輸送での製品破損事故や誤配などが増加傾向にあるため、事故件数の多い物流パートナーを中心に、改善策を協議し、現地訪問、教育活動などを実施して物流品質の向上に努めました。その結果、2023年度の事故件数は589件となり、前年度比5%減少しました。引き続き、物流パートナー各社と一体となって、物流品質向上に努めていきます。

物流トラブル発生件数の推移

物流における法令遵守や安全に関する取り組み

物流における安全保障貿易管理の取り組み

東レ(株)では、当社製品の安全保障貿易管理の徹底のため、リスト規制品を寄託する社外倉庫拠点に対して安全保障貿易管理についての講習を継続的に行っています。2023年度は、6社7拠点に対し、安全保障貿易管理の説明のほか、過去のヒヤリハット事例を踏まえたリスト規制品の取り扱いに関する注意点などを説明し、適切に管理・取り扱いいただくことを、改めて要請しました。

物流パートナーへの第三者認証取得の推奨

東レ(株)では、流通過程における法令遵守、品質向上、環境保全などの観点から、物流パートナーに対し、ISO9001、ISO14001をはじめ、グリーン経営認証※6、Gマーク制度※7などの取得を推奨し、物流パートナーと協働でCSRへの取り組みを推進しています。

  1. ※6 グリーン経営認証:グリーン経営(環境負荷の少ない事業運営)推進マニュアルに基づいて、環境改善に向けた取り組みを一定のレベル以上行っている事業者に対して、公益財団法人交通エコロジー・モビリティ財団が審査の上、認証・登録するもの
  2. ※7 Gマーク制度:国土交通省が推奨する、法令遵守、安全性に対する積極的な取り組みなどを全日本トラック協会に設置された安全性評価委員会が、事業所ごとに評価し、基準をクリアした事業所を安全性優良事業所として認定する制度

イエローカードによる緊急時対応

輸送車両の乗務員は、事故発生時に被害の拡大を防ぐための応急処置手順を記載した「イエローカード※8」を携行しています。緊急連絡体制の整備や緊急訓練を実施し、万が一事故が発生した場合には、事故処理をサポートする要員を速やかに現場に派遣する体制を整備しています。

  1. ※8 イエローカード:危険有害性物質の品名、該当法規、危険有害性、事故発生時の対応処置、緊急通報、緊急連絡先、災害拡大防止措置の方法などを簡潔に記載したカード

過積載防止の取り組み

貨物自動車の過積載は、運行上危険なだけでなく、路面や道路構造物へのダメージ、騒音・振動の原因となります。東レ(株)は、この過積載の発生防止に全力で取り組んでいます。

輸出入でのコンプライアンス・セキュリティ対策

グローバルオペレーションの拡大に伴う輸出入面での法令遵守・安全施策として、東レインターナショナル(株)米国法人はC-TPAT※9を取得しています。物流パートナーのコンプライアンス・セキュリティ対策強化や輸出入の効率化を実現するため、起用する物流パートナーにも国内外でAEO※10などの取得を促しています。

  1. ※9 C-TPAT : Customs-Trade Partnership Against Terrorismの略で、2004年11月に米国税関国境警備局によって導入された自主参加型のプログラム。米国の輸入に携わる分野の民間事業者との国際的な連携により、グローバルサプライチェーンを通じたセキュリティの確保、強化を目的としています。
  2. ※10 AEO : Authorized Economic Operatorの略。2006年12月にEUで導入された、貨物のセキュリティ面のコンプライアンスに優れた輸出入者などに税関手続きに関する優遇措置を与える制度。日本でも2007年に関税法が改正され、優良事業者に対する税関手続きの優遇措置および措置を受けるための資格制度が制定されました。

「運転者職場環境良好度認証制度」(通称:働きやすい職場認証制度)の2つ星を取得(東洋運輸(株)(TLS社))

「働きやすい職場認証制度」登録証書「働きやすい職場認証制度」登録証書

TLS社は2022年2月に「働きやすい職場認証制度」の1つ星を取得し、2023年には全ての運送業を行う営業所で2つ星を取得しました。
この制度は、国土交通省が自動車運送事業の運転者不足に対応するため総合的取り組みの一環で創設されたもので、厚生労働省との連携の下、認証を受けた事業所への就職を促進することを目的としています。また、認証事業所は、「働きやすい職場認証制度」のホームページで公表されることで、取引先からの信頼感も向上します。
取得にはトラック乗務員の労働時間・休日、心身の健康、安心・安全、多様な人材確保・育成などの項目の基準点数をクリアする必要があります。
TLS社は職場環境の改善に努め、さらに働きやすい職場を目指し3つ星の取得に取り組んでいます。

「CSRロードマップ 2025」におけるCSRガイドライン9「持続可能なサプライチェーンの構築」の主な取り組みはこちらをご覧ください。