CSR活動報告(各CSRガイドラインの活動報告) - 人権推進と人材育成
新しい価値を創造する人材の確保と育成
「人を基本とする経営」の深化
- 「人を基本とする経営」とは
「人を基本とする経営」は、2020年5月の長期経営ビジョン“TORAY VISION 2030”の発表に合わせて体系化された当社経営思想「東レ理念」において、企業理念を実践するための土台となる企業文化として改めて位置づけられました。
すなわち、「人を基本とする経営」は、「新しい価値を生み出す、プロフェッショナル人材の育成」と「この“プロ人材”が、東レグループというフィールドで成長し、活き活きと働くことができる環境づくり」への取り組みです。
これは東レが創業初期から長年にわたり培ってきた人材育成を経営の根幹におく基本戦略であり、企業価値の最大化とその先にある社会貢献の実現を目指した取り組みです。 - 「『人を基本とする経営』の深化」とは
「『人を基本とする経営』の深化」とは、不確実性の高まった経営環境、価値観の多様化やキャリア自律意識の高まりなどの人的側面の変化に対応し、「人を基本とする経営」をアップデートするものです。
「多様な人材・価値観の包摂」、「変化に適合する人材・組織づくり」、「東レ理念への共感・働きがいのあるキャリア形成(エンゲージメント)」にフォーカスし、「企業価値の最大化」と「従業員の幸福度」を追求していくための人材戦略に取り組んでいきます。
多様な人材の確保
東レグループでは、性別や国籍、新卒/キャリア採用を問わず、高い「志」をもってグローバルに活躍できる優秀な人材の確保に取り組んでいます。
東レ(株)では、グローバル化を推進していく上で、1998年から国籍を問わない採用活動を行っており、2023年度までに正社員として118名の外国籍社員の採用を行っています。日本への留学生を中心とした外国籍社員や、海外の大学を卒業した日本人留学生を積極的に採用し、それぞれが秀でた能力や個性を生かして活躍しています。また、キャリア採用にも積極的に取り組んでおり、入社後もキャリア採用者向け研修を実施するなど、育成フォローアップに取り組んでいます。
2019~2023年度の採用実績(東レ(株))
実績 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | |
---|---|---|---|---|---|---|
新卒 | 男性 | 244 | 176 | 123 | 110 | 172 |
女性 | 44 | 36 | 38 | 20 | 40 | |
合計 | 288 | 212 | 161 | 130 | 212 | |
キャリア採用 | 男性 | 37 | 9 | 13 | 53 | 121 |
女性 | 8 | 2 | 6 | 7 | 20 | |
合計 | 45 | 11 | 19 | 60 | 141 |
ベトナムにおける人材確保の取り組み
(Toray Industries (H.K.) Vietnam Company Limited(THKVN社))
昨今、ベトナムの繊維業界では、繊維専門家の高齢化と減少により、人材の確保が難しくなっています。このため、THKVN社では、繊維の専門知識を備えた大学卒業生を採用するために、ハノイ工科大学、ハノイ工業大学、ハノイ繊維産業大学などのベトナムのトップ大学との連携を強化しています。奨学金の授与やインターンシップの受け入れを行っています。
人材育成を支える体系的・計画的な研修制度
東レ(株)では体系的な研修制度を整備し、あらゆる階層・分野の社員に対して、マネジメント力の強化、営業力・生産技術力や専門能力の向上、グローバル化対応力の強化などを目的としたさまざまな研修を計画的に実施し、次世代の経営を担いうる経営後継者の育成と、第一線の「強い現場力」を担う基幹人材層の拡大・底上げを図っています。
近年は特に、人材開発に資する研修体系の再整備を進めており、経営後継人材の育成を狙いとした「経営幹部育成研修」の新設、組織マネジメント力の強化に向けた「部長研修」「課長マネジメント力強化研修」の新設を行いました。併せて技術系・営業系の分野別専門研修において、DX推進を担う人材の育成に向けて複数の「DX研修」を立ち上げました。2023年度の東レ(株)社員ひとり当たりの教育投資額は146.3千円(前年度132.0千円))となりました。(多くの研修が内製化されているため、2023年度から社内研修に関係する費用も含めて算出。)
また、世代を問わず、あらゆる人が自分の能力・スキルを定期的にアップデートしていくため、チャレンジ講座(サブスクリプション型eラーニング)の対象者拡大など自己啓発プログラムの充実化を図り、研修だけでなく、さまざまな人事制度を採用しており、新しいことに果敢にチャレンジする人が、より活躍できる活性化された組織風土づくりを推進しています。
2023年度全社研修開催・受講状況(東レ(株))
研修区分 | 受講人数 | ひとり当たりの 研修受講時間(時間)※1 |
||
---|---|---|---|---|
男性 | 女性 | 計 | ||
マネジメント系研修 | 1,002 | 168 | 1,170 | 38.8 |
技術系研修 | 726 | 86 | 812 | 29.5 |
営業・管理系研修 | 186 | 50 | 236 | 24.9 |
グローバル系研修 | 70 | 23 | 93 | 53.1 |
計 | 1,984 | 327 | 2,311 | 34.7 |
- ※1 東レ総合研修センターにおける集合教育の受講時間。通信課題学習や留学などの時間は含まない
東レグループの現場力向上を担う現場リーダーを育成する「東レ専修学校」
東レグループの現場力向上を担う高い志を持ち、自ら考え行動する人材の育成を目的に、若手社員や国内関係会社の社員が受講可能な研修の場として「東レ専修学校」を1994年9月に開校し、28期までに831名の卒業生を輩出しました。数学や英語などの一般科目のほか、高分子化学や工務基礎、ロボット工学などの専門科目や、より実践的なグループワーク形式の課題解決演習、化学実験なども行っています。また、社内のDX人材育成ニーズの急速な高まりを受け、専修学校でも全社DX人材認定制度と連動した科目「情報Ⅰ」を新設。アルゴリズム、プログラミング教育、協働ロボットを活用した教育を新たに導入するなど現場ニーズに即した教育を提供しています。さらに、2022年10月から、近い将来の掛長候補者を対象とした「現場力強化スクール(GKS)」を新たに立ち上げ、第1期GKS生16名を輩出しました。リーダーシップ、チームビルディング、フォロワーシップ、働きかけ力などのソフトスキルを、自部署課題解決の実践を通じて習得させ、社会人基礎力の向上とともに、新たな時代を生き抜く現場リーダーを育成していきます。
主な人事制度(東レ(株))
目標管理制度※2 | 年度ごとに各人の目標を設定し、期末に上司・本人とで達成状況を振り返る。 |
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人事評価制度※2 | 職務・職責や能力・成果※3など貢献度に応じた公正な人事評価を実施。 また、倫理・コンプライアンスなどに関する取り組みを個人の評価および報酬と紐づけるため、業績評価における評価基準に、「安全・CSR・品質保証・コンプライアンス」の評価項目を設けている。 |
個別面談制度※2 | 年2回上司との個別面談を実施。評価の納得性向上や個人の育成に努めている。 |
自己申告制度(管理・専門職、Gコース対象) | 本人の異動希望、職務経歴などを毎年1回調査し、個別の人事異動につなげている。 |
キャリア・アセスメント制度(Gコース対象) | 業務発表と人事面接による複眼審査を定期的に実施。将来の育成方向を見極める。 |
社内公募制度 | 社員の主体的なキャリア形成を支援し、最適配置の実現を図るため毎年実施している。 |
- ※2 管理・専門職・Gコース・Sコース従業員の100%が対象
Gコース : 将来の東レG経営幹部層もしくは高度専門職を目指すコース
Sコース : 将来の職場における管理・監督層または特定業務分野のエキスパートを目指すコース - ※3 CSRに関する課題への取り組みも含む
人事情報システムを活用した基幹人材のキャリア形成の取組み(「キャリアシート」の実施状況)(社員数・%)
- ■報告対象範囲
- 東レグループ
- ■目標値
- 2023年度 / 対前年比対象拡大
実績値(2023年度)
対前年比101%
東レ(株)では、本人の成長を促すための人材育成ツールとして「キャリアシート」を導入しています。「キャリアシート」では、社員自身がこれまでの業務経験や、所属する分野で求められるスキルの到達レベルを振り返るとともに、上司・部下間での面談を通じてキャリアに関する話し込みを行っています。
2020年度は事務系Gコース社員を対象に先行実施しましたが、2021年度以降、対象を技術系Gコース社員に拡大し、2022年3月時点で対象者全員に展開しました。なお、2022年度以降は、東レおよび一部関係会社にてキャリアシートの実施対象をさらに拡大しています。
東レグループの次世代経営リーダーの育成
東レグループでは、次世代の経営を担いうる後継候補者を計画的に育成するために、次世代経営リーダーを育成する研修を実施し、すでに多くの修了生が経営リーダーとして活躍しています。2021年度には、経営後継人材の育成を狙いとした「経営幹部育成研修」を新設し、継続開催しています。
次世代経営リーダーの育成施策
制度 | 対象者 | 目的 | 開設年 | 2023年度受講者数 | 2023年度までの受講者数(累計) |
---|---|---|---|---|---|
経営幹部育成研修 | 東レ(株)部長層 | 東レ(株)および東レグループ各社の経営リーダーの育成 | 2021年 | 12 | 34 |
東レ経営スクール(TKS)※4 | 東レ(株)課長層 | 東レ(株)および東レグループ各社の次世代経営リーダーの育成 | 1991年 | 20 | 620 |
東レグループ経営スクール(TGKS) | 国内関係会社部長層 | 国内関係会社を中心とする経営後継者の育成 | 2006年 | 20 | 348 |
海外エグゼクティブセミナー(海外版TKS) | 海外関係会社役員層 | 海外関係会社の経営を担うローカル基幹人材の育成 | 2004年 | 開催なし | 98 |
次世代経営リーダーの育成プログラムの総受講者数 | 延べ1,100人 |
- ※4 2024年7月時点で、東レ(株)の執行役員28名のうち、TKS受講者は15名。
東レグループでは、国・地域・文化・風土・会社の違いを越え、東レグループが共通した考え方でHR(Human Resources : 人材)マネジメントができるように、「東レグローバルHRマネジメント(G-HRM)基本方針」を取締役会決議を経て定めています。
東レグローバルHRマネジメント(G-HRM)基本方針2021年12月改定
東レグループが企業理念“わたしたちは新しい価値の創造を通じて社会に貢献します”を“Innovation(革新と創造)”の実践によって具現化し、さらなる飛躍と発展を遂げ、すべてのステークホルダーにとって高い存在価値のある企業グループであり続けるためには、人材こそが最も重要な経営資源であり、高い「志」を持った人材の確保と育成に注力していかねばなりません。
東レグループは今後ともグローバル事業拡大を一層推進していきますが、そのなかにあって国・地域・文化・風土・会社の違いを超え、全東レグループが共通した考え方でHRマネジメントができるように、G-HRM基本方針を以下のとおり定めます。
各社はこの基本方針に沿って、HRマネジメントの具体的な仕組みを段階的に構築・整備し推進していくことが求められ、同時に国・地域・文化・風土・会社の個別事情に根ざした各社固有のローカルHRマネジメントの利点も重視し、両者を適切に融合しつつ進めることが肝要です。
- 基幹人材の安定的確保と長期人材育成
- (1)中長期的な視点を踏まえ、基幹人材を一定規模安定的に採用する
- (2)個々のキャリア形成を重視し、上司と部下が育成状況やキャリアの話し合いを充実させる仕組みを活用して、OJT(On-the-Job Training)を基本にOff-JT(研修)および自己啓発を通じた長期人材育成を図る
- (3)業務遂行に当たっては、目標による管理と人事評価を通じたフォローアップにより育成を図る
- グローバル競争に打ち勝つ人材の選抜と育成
- (1)東レ理念に共感する多様で優秀な人材をグローバルに確保・育成する
- (2)選抜された人材に対して高度な研修機会とグローバルなキャリア機会を提供する
- (3)グループ経営の一翼を担える人材を各社トップマネジメント層へ登用するとともに、東レ本社の中核ポスト並びに経営層への登用、選抜を行う
- 適材適所の追求と公正性・納得性・透明性の向上
- (1)能力と実績を重視し、人と組織にとって最適な職位登用を行う
- (2)例月給与・賞与等の賃金を決定する際には、職責・役割、職務遂行能力、目標による管理に基づく評価等を勘案し、公正性・納得性・透明性をもった制度運用を行う
- (3)チャレンジを重視するとともに、チームへの貢献にも配慮した人事管理・処遇施策を展開する
- 企業体質強化のための多面的な施策の継続実行
- (1)要員管理と労働コスト管理を会社全体としてメリハリを利かせながら継続して行う
- (2)フラットで効率的な組織構造と適正な管理職層規模を常に維持する
- (3)多様な働き方を適切にマネジメントすることで強靱な組織を形成する
海外ナショナルスタッフ基幹人材の計画的な確保、育成、登用
東レグループは、経営課題のひとつに海外関係会社での経営基幹人材の育成強化を掲げ、各社で雇用した人材(ナショナルスタッフ)を経営層に積極的に登用しています。また、東レ(株)本社の中核ポスト・経営層への登用も進めており、2023年度は2名の海外基幹人材が東レ(株)の執行役員として、5名の海外基幹人材が理事(職務内容および責任の程度が「役員」に相当する職位)として東レグループの経営に参画しています。
育成・登用にあたっては、中長期的な視点で後継計画および育成計画を検討し、計画的な人材配置により重要な経営課題にあたらせることを目的として、「人材中期計画」を策定しています。東レグループ全体の基幹ポストについて後継候補者の過不足を検証するとともに、海外ナショナルスタッフを含めた次世代経営リーダーの個別育成計画を策定することで、事業戦略を実現するための人材戦略を推進しています。これらのほか、各国内や国際間のローテーションを通じたキャリア形成などを図り、計画的な人材育成を行っています。
また、人材育成は、OJTとOff-JTの両輪で行っています。Off-JTでは各社での研修に加え、経営理念や方針の理解を深めるための階層別日本研修プログラムによる研修を実施し、個人の長期育成計画と連動させています。また各国・地域では、東レ(株)本社も企画に参画し、各国・地域の事情やニーズに応じたカリキュラムを編成したマネジメント研修を定期的に実施しています。
2023年度海外各社基幹人材向けグループ共通研修実績
日本開催研修
研修名 | 対象層 | 受講人数 |
---|---|---|
東レグループエグゼクティブセミナー | 役員層 | 15 |
海外幹部研修 | 部長層 | 10 |
東レトレーニー研修 | 課長層 | 22 |
研修受講人数合計 | 47 |
現地開催研修
研修名 | 対象層 | 受講人数 |
---|---|---|
米国マネジメント研修 | 部長・課長層 | 47 |
欧州マネジメント研修 | 部長・課長層 | 44 |
インドネシアマネジメント研修 | 部長・課長層 | 23 |
中国マネジメント研修 | 部長・課長層 | 69 |
韓国マネジメント研修 | 部長・課長層 | 19 |
インドマネジメント研修 | 課長層 | 19 |
研修受講人数合計 | 221 |
- ※ 現地で管理運営している研修であり、東レ(株)の全社研修体系図には含まれておりません。
東レグループエグゼクティブセミナー(TGES)の開催(東レ(株))
TGESは、東レグループ海外各社の役員層を対象に、東レ経営陣との討議/会話を通じて東レ理念、長期経営ビジョン、中期経営課題および東レグループ経営者としての使命・責任の理解を深め、東レグループの組織力を向上させることを目的とした研修です。2004年の開講以来、原則として隔年に開催していましたが、コロナ禍を経て、2023年度は4年振り8回目の開催となり、欧米、アジアの15社から15名が受講しました。
受講生は社長、経営企画室長の講話および質疑応答を通じて、東レグループの経営者として求められる意識、姿勢、基本的考え方の理解を深めました。社外講師のセッションでは、異文化理解を踏まえたリーダーシップのあり方および自身の経営に対する考え方や自社の企業文化を振り返った上で、東レの企業文化に即した形で自社組織を強化していく方法について学びました。
研修を対面で実施したこともあり、受講生同士が積極的にコミュニケーションを取り、人脈形成を行う上でも有意義な時間となりました。
「CSRロードマップ 2025」におけるCSRガイドライン8「人権推進と人材育成」の主な取り組みはこちらをご覧ください。