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新しい価値を創造する人材の確保と育成
「人を基本とする経営」の深化
- 「人を基本とする経営」とは
「人を基本とする経営」は、2020年5月に発表された長期経営ビジョン“TORAY VISION 2030”に合わせて体系化された当社の経営思想「東レ理念」において、企業理念を実践するための土台となる企業文化として、改めて位置づけられました。
すなわち、「人を基本とする経営」は、新しい価値を生み出すプロフェッショナル人材の育成と、この「プロ人材」が東レグループというフィールドで成長し、活き活きと働くことができる環境づくりへの取り組みです。
これは、東レが創業初期から長年にわたり培ってきた、人材育成を経営の根幹におく基本戦略であり、企業価値の最大化と、その先にある社会貢献の実現を目指した取り組みです。 - 「『人を基本とする経営』の深化」とは
「『人を基本とする経営』の深化」とは、不確実性の高まった経営環境、価値観の多様化やキャリア自律意識の高まりなどの人的側面の変化に対応し、「人を基本とする経営」をアップデートするものです。
当社が「新しい価値」を創出し続けるために必要な人材戦略上の変革ポイント(現状:As-Is/目指す姿:To Be ギャップ)を、①多様な人材・価値観の包摂、②変化に適合する人材・組織づくり、③「東レ理念」への共感・働きがいのあるキャリア形成(エンゲージメント)と設定し、改めて企業価値の最大化と従業員の幸福度向上を追求していくための組織風土改革に取り組んでいます。


人材戦略と深化の方向性
人材戦略 | 深化の方向性 |
---|---|
多様な人材・価値観の包摂 ダイバーシティ |
|
変化に適合する人材・組織づくり 人材ポートフォリオ |
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東レ理念への共感・働きがいのあるキャリア形成 エンゲージメント |
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従業員サーベイの実施
東レグループでは、国内外の関係会社社員を含め、会社風土や職場環境、人事・処遇制度に対する従業員の受け止めの現状を把握し、今後の改善につなげることを目的に、年に一度「従業員サーベイ」を実施しています。
2023年度には、従業員サーベイの内容を刷新し、従業員の「期待」と「実感」の両面から組織状態を把握する方式に変更しました。これに伴い、対象者を東レ(株)の管理・専門職、Gコース※1社員、および国内関係会社の基幹人材層に限定し、先行実施を行いました。
また、各職場が組織風土変革の主体であるという考えのもと、調査結果を即時に確認できるシステムへと変更し、一部の指標は「人を基本とする経営の深化」の進捗状況を確認するKPIとしても活用しています。
従業員サーベイの結果は社内イントラネットで開示され、各職場での話し込みの状況や改善の好事例などを全社で共有・展開することで、各職場が自分ごとと捉えて組織風土変革に向けた活動に取り組めるよう、支援を進めています。
2024年度の実施結果(東レ(株))
人材戦略 | 従業員サーベイ (KPI設問) |
目標 (実感値) |
2024年度 結果 |
2024年度結果のうち、前回実施対象者 | |
---|---|---|---|---|---|
2023年度 | 2024年度 | ||||
多様な人材・価値観の包摂 ダイバーシティ |
多様な価値観を受け入れる文化がある | 7.0pt以上 | 5.9pt | 6.2pt | 6.4pt |
変化に適合する人材・組織づくり 人材ポートフォリオ |
変化を拒むような圧力がなく組織改善が行われている | 7.0pt以上 | 5.6pt | 5.5pt | 5.8pt |
東レ理念への共感・働きがいのあるキャリア形成 エンゲージメント |
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EXスコア®※2 | 前年度比向上 | 66.1 | 64.8 | 66.7 |
---|
- ※1 Gコース:将来の東レグループ経営幹部層もしくは高度専門職を目指すコース。
- ※2 EXスコア®:組織状態を示す指標。各個人の期待値と実感値、そのギャップを測定し、期待・実感ともに高く、ギャップが小さい場合にスコアは最大化される。調査委託先である(株)HRBrainの登録商標。

多様な人材の確保
東レグループでは、性別・国籍・新卒/キャリア採用を問わず、高い志を持ち、グローバルに活躍できる優秀な人材の確保に取り組んでいます。
東レ(株)では、グローバル化の推進のため、1998年より国籍を問わない採用活動を開始し、2024年度までに正社員として119名の外国籍社員を採用しています。日本への留学生を中心とした外国籍社員や、海外の大学を卒業した日本人留学生を積極的に採用し、それぞれが優れた能力や個性を生かして活躍しています。
また、キャリア採用にも積極的に取り組んでおり、入社後にはキャリア採用者向け研修を実施するなど、育成フォローアップにも取り組んでいます。
2020~2024年度の採用実績(東レ(株)および国内関係会社)
実績 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | |
---|---|---|---|---|---|---|
新卒 | 男性 | 287 | 218 | 205 | 267 | 361 |
女性 | 76 | 80 | 45 | 86 | 103 | |
合計 | 363 | 298 | 250 | 353 | 464 | |
キャリア採用 | 男性 | 113 | 148 | 200 | 256 | 278 |
女性 | 28 | 55 | 60 | 95 | 95 | |
合計 | 141 | 203 | 260 | 351 | 373 |
東レ(株)の主な人事制度
目標管理制度 | 年度ごとに各人の目標を設定し、期末に上司・本人とで達成状況を振り返る。 |
---|---|
人事評価制度 | 職務・職責や能力・成果など貢献度に応じた公正な人事評価を実施。 また、倫理・コンプライアンスなどに関する取り組みを個人の評価および報酬と紐づけるため、業績評価における評価基準に、「安全・CSR・品質保証・コンプライアンス」の評価項目を設けている。 |
個別面談制度 | 年2回上司との個別面談を実施。評価の納得性向上や個人の育成に努めている。 |
自己申告制度(管理・専門職、Gコース対象) | 本人の異動希望、職務経歴などを毎年1回調査し、個別の人事異動につなげている。 |
キャリア・アセスメント制度(Gコース対象) | 業務発表と人事面接による複眼審査を定期的に実施。将来の育成方向を見極める。 |
社内公募制度 | 社員の主体的なキャリア形成を支援し、最適配置の実現を図るため毎年実施している。 |
- ※ 目標管理/人事評価/個別面談の各制度は、管理・専門職・Gコース・Sコース従業員の100%が対象。
Gコース : 将来の東レグループ経営幹部層もしくは高度専門職を目指すコース。
Sコース : 将来の職場における管理・監督層または特定業務分野のエキスパートを目指すコース。
なお、人事評価制度の「成果」については、CSRに関する課題への取り組みも含む。
人事情報システムを活用した基幹人材のキャリア形成の取組み(「キャリアシート」の実施状況)(社員数・%)
- ■報告対象範囲
- 東レグループ
- ■目標
- 2024年度 / 対前年比対象拡大
実績(2024年度)
対前年比99%
東レ(株)では、社員本人の成長を促すための人材育成ツールとして「キャリアシート」を導入しています。「キャリアシート」では、社員自身がこれまでの業務経験や、所属する分野で求められるスキルの到達レベルを振り返るとともに、上司と部下間の面談を通じてキャリアに関する話し込みを行っています。
2020年度は、事務系Gコース社員を対象に先行して実施し、2021年度以降は技術系Gコース社員にも対象を拡大しました。2022年3月時点で、対象者全員への展開を完了しています。
さらに、2022年度以降は、東レ(株)および一部関係会社での導入を進め、2025年4月には、主要な国内関係会社で新たに導入しました。


人材育成を支える体系的・計画的な研修制度
東レ(株)では、体系的な研修制度を整備し、あらゆる階層・分野の社員に対して、マネジメント力の強化、営業力・生産技術力や専門能力の向上、グローバル化対応力の強化などを目的としたさまざまな研修を計画的に実施しています。これらの研修を通じて、次世代の経営を担いうる経営後継者の育成と、第一線の強い現場力を担う基幹人材層の拡大・底上げを図っています。
階層別のマネジメント研修では、長年にわたりリーダーシップ開発の強化に取り組んでおり、近年では、受講者自身がリーダーシップの発揮度を自覚し、改善につなげることを目的に、360度評価を講義に導入しています。また、「当社の理念・歴史教育」においても、経営思想への理解を一層深めることを目的に、上位階層には自分ごと化を促す内容構成とし、段階的に学ぶ仕組みを構築しています。
研修体系の再整備も継続的に進めており、経営後継人材の育成を狙いとした「経営幹部育成研修」の新設や、組織マネジメント力の強化に向けた「部長研修」「課長マネジメント力強化研修」を導入しました。併せて、技術系・営業系の分野別専門研修においても、DX推進を担う人材の育成を目的として、複数の「DX研修」を立ち上げました。
2024年度の東レ(株)社員一人当たりの教育投資額は158.4千円(前年度146.3千円)となりました。なお、多くの研修が内製化されていることから、2023年度より社内研修に関係する費用も含めて算出しています。
加えて、世代を問わず、あらゆる人が自分の能力やスキルを定期的にアップデートしていくため、チャレンジ講座(サブスクリプション型eラーニング)の対象者拡大など自己啓発プログラムの充実化を図っています。
研修に加え、さまざまな人事制度も導入しており、新しいことに果敢にチャレンジする人がより活躍できる、活性化された組織風土づくりを推進しています。

2024年度全社研修開催・受講状況(東レ(株))
研修区分 | 受講人数 | ひとり当たりの研修受講時間(時間) | ||
---|---|---|---|---|
男性 | 女性 | 計 | ||
①マネジメント系研修 | 1,006 | 156 | 1,162 | 44.7 |
②技術系研修 | 708 | 107 | 815 | 30.0 |
③営業・管理系研修 | 204 | 53 | 257 | 23.7 |
④グローバル系研修 | 113 | 17 | 130 | 46.0 |
計 | 2,031 | 333 | 2,364 | 37.4 |
- ※ ひとり当たりの研修受講時間(時間)は、東レ総合研修センターにおける集合教育の受講時間。通信課題学習や留学などの時間は含まない。
東レグループの次世代経営リーダーの育成
東レは、将来の経営後継を期待できる優秀な課長層20名を選抜した「東レ経営スクール」を1991年に開設しました。経営後継人材を計画的に育成する仕組みは、当時では珍しく先進的な取り組みであり、以降継続的に実施されています。2024年度時点で、女性39 名を含む累計640名が修了しており、修了生の多くが国内外関係会社の経営を担う人材として活躍しています。現在までに、192名が 東レおよび国内外関係会社の経営トップを担っています。
さらに、2006年に開設した「東レグループ経営スクール」は、国内関係会社ならびに東レ合繊クラスター各社の経営後継人材育成機関として、今日に至るまで継続的に運営しています。
また、2021年には次世代の東レグループ経営後継候補となる優秀な部長層を対象に「経営幹部育成研修」を開設し、経営後継人材の計画的な育成に向けた研修体系のさらなる充実を図っています。
次世代経営リーダーの育成施策
制度 | 対象者 | 目的 | 開設年 | 2024年度受講者数 | 2024年度までの受講者数(累計) |
---|---|---|---|---|---|
経営幹部育成研修 | 東レ(株)部長層 | 東レ(株)および東レグループ各社の経営リーダーの育成 | 2021年 | 11 | 45 |
東レ経営スクール(TKS)※3 | 東レ(株)課長層 | 東レ(株)および東レグループ各社の次世代経営リーダーの育成 | 1991年 | 20 | 640 |
東レグループ経営スクール(TGKS) | 国内関係会社部長層 | 国内関係会社を中心とする経営後継者の育成 | 2006年 | 23 | 371 |
東レグループエグゼクティブセミナー(TGES) | 海外関係会社役員層 | 海外関係会社の経営を担うローカル基幹人材の育成 | 2004年 | 開催なし | 113 |
次世代経営リーダーの育成プログラムの総受講者数 | 延べ1,169人 |
- ※3 2025年7月時点で、東レ(株)の執行役員28名のうち、TKS受講者は17名。また、TKS開設当初の1991年度の東レ(株)単体の売上高は5,992億円であり、2024年度には6,517億円にまで拡大している。
東レグループの現場力向上を担う現場リーダーを育成する「東レ専修学校」
東レグループの現場力向上を担う高い志を持ち、自ら考え行動する人材の育成を目的に、1994年9月に若手社員や国内関係会社の社員が受講可能な研修の場として「東レ専修学校」を開校しました。29期までに累計844名の卒業生を輩出しています。
専修学校では、数学や英語などの一般科目に加え、高分子化学、工務基礎、ロボット工学などの専門科目や、より実践的なグループワーク形式の課題解決演習、化学実験なども行っています。
また、社内のDX人材育成ニーズの急速な高まりを受け、専修学校でも全社DX人材認定制度と連動した科目「情報Ⅰ」を新設しました。アルゴリズムやプログラミング教育、協働ロボットを活用した教育を新たに導入するなど、現場ニーズに即した教育を提供しています。
さらに、2022年10月には、近い将来の掛長候補者を対象とした「現場力強化スクール(GKS)」を新たに立ち上げ、第2期までに32名のGKS生を輩出しました。GKSでは、リーダーシップ、チームビルディング、フォロワーシップ、働きかけ力などのソフトスキルを、自部署の課題解決を通じて実践的に習得し、社会人基礎力の向上とともに、新たな時代を生き抜く現場リーダーの育成を目指しています。
海外ナショナルスタッフ基幹人材の計画的な確保、育成、登用
東レグループでは、国・地域・文化・風土・会社の違いを越えて、共通した考え方に基づいたHR(Human Resources : 人材)マネジメントを実現するため、「東レグローバルHRマネジメント(G-HRM)基本方針」を、取締役会決議を経て定めています。
経営課題のひとつとして、海外関係会社での経営基幹人材の育成強化を掲げており、各社で雇用した人材(ナショナルスタッフ)を経営層に積極的に登用しています。2024年度には、海外の主要な関係会社のうち24社において、ナショナルスタッフが社長に就任しています。
また、東レ(株)本社においても中核ポストや経営層への登用を進めており、2024年度には1名の海外基幹人材が東レ(株)の執行役員として、さらに4名が理事(職務内容および責任の程度が「役員」に相当する職位)として、東レグループの経営に参画しています。
育成・登用にあたっては、中長期的な視点で後継計画および育成計画を検討し、計画的な人材配置により重要な経営課題に取り組ませることを目的として、「人材中期計画」を策定しています。
この計画では、グループ全体の基幹ポストに対する後継候補者の過不足を検証するとともに、海外ナショナルスタッフを含めた次世代経営リーダーの個別育成計画を策定し、事業戦略の実現に向けた人材戦略を推進しています。加えて、各国内や国際間のローテーションを通じたキャリア形成にも取り組み、計画的な人材育成を進めています。
人材育成は、OJTとOff-JTの両輪で実施しています。Off-JTでは、各社での研修に加え、経営理念や方針の理解を深めるための階層別日本研修プログラムによる研修を実施し、個人の長期育成計画と連動させています。
また、各国・地域では、東レ(株)本社も企画に参画し、各国・地域の事情やニーズに応じたカリキュラムを編成したマネジメント研修を定期的に実施しています。
これらの取り組みの成果として、海外の主要な関係会社における工場長や部門長以上の重要ポジションでは、欧米で約60%、アジアで約45%を海外ナショナルスタッフが占めるまでになり、現在では多様な人材が東レグループのグローバル経営を支えています。
2024年度海外各社基幹人材向けグループ共通研修実績
日本開催研修
研修名 | 対象層 | 受講人数 |
---|---|---|
東レグループエグゼクティブセミナー | 海外関係会社役員層 | (隔年開催のため2024年度はなし) |
海外幹部研修 | 海外関係会社部長層 | 33 (うち日本語話者ナショナルスタッフ:14人) |
東レトレーニー研修 | 海外関係会社課長層 | 18 |
研修受講人数合計 | 51 |
現地開催研修
研修名 | 対象層 | 受講人数 |
---|---|---|
米国マネジメント研修 | 部長・課長層 | 37 |
欧州マネジメント研修 | 部長・課長層 | 54 |
インドネシアマネジメント研修 | 部長・課長層 | 27 |
中国マネジメント研修 | 部長・課長層 | 63 |
韓国マネジメント研修 | 部長・課長層 | 20 |
インドマネジメント研修 | 課長層 | 20 |
研修受講人数合計 | 221 |
- ※ 現地で管理運営している研修であり、東レ(株)の全社研修体系図には含まれていない。
日本語話者ナショナルスタッフ向け海外幹部研修(TGSMS-J)の開催(東レ(株))
海外幹部研修(TGSMS)は、東レグループ海外各社の幹部社員(主に部長層)を対象に、東レの経営方針・戦略および東レ式マネジメントへの理解を深め、現地会社を牽引するリーダーの育成を目的として1996年に開講した研修です。研修は英語で行われ、これまでに延べ350人以上のナショナルスタッフが受講しています。
2024年度には、英語ではなく日本語での受講が可能なナショナルスタッフの要望に応え、日本語版海外幹部研修(TGSMS-J)を初めて企画・実施しました。各国・地域13社から14人が受講し、東レおよび東レ式マネジメントを理解し、企業文化への理解を深めるとともに、企業文化に即した形で自社組織強化のためのアクションプランを作成しました。研修後には、各自が職場での取り組みをオンラインのフォローアップセッションで振り返りました。
なお、TGSMS-Jの企画・運営は、トレーニー制度を利用して日本で実務研修を行った中国関係会社の人事労務課長(海外ナショナルスタッフ)が担当しました。
「CSRロードマップ 2025」におけるCSRガイドライン8「人権推進と人材育成」の主な取り組みはこちらをご覧ください。